【大相撲】貴景勝休場 2場所で大関陥落 師匠が説得4時間…最後は折れた2019年7月5日 紙面から
右膝の負傷で夏場所を途中休場したかど番の大関貴景勝(22)=千賀ノ浦=が4日、名古屋場所休場を決めた。患部の回復を強調して出場に強い意欲を示してきたが、師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)の「先は長い」という説得に応じた。全休の方針で在位2場所でいったん大関の座を手放し、秋場所で2桁勝利が条件の復帰を目指すことになる。 連日の出場宣言から、急転直下の休場の決断だった。かど番脱出を目指す貴景勝と、22歳の将来性を守りたい千賀ノ浦親方。意見をぶつけ合い、最後は大関が「まだまだ先がある」という師匠の言葉を受け入た。 師弟にとって、長い長い一日だった。貴景勝は名古屋市北区の千賀ノ浦部屋での朝稽古で土俵に入らず、四股やてっぽうなどで調整。汗を流した後、まわし姿のまま千賀ノ浦親方に近づいた。「出ます。痛みもない」。場所前に関取衆と相撲を取らない、ぶっつけ本番の覚悟を決めていた。 大関昇進からわずか2場所、座して転落を待つわけにはいかないからこその直訴だった。師匠は首を縦に振らなかった。2人は宿舎へ。食事を挟んで直談判は4時間近くにも及んだが、結論は出なかった。 午後2時すぎに宿舎を出た大関は、出場が前提となる名古屋場所前夜祭の収録に参加した。それでも「力士人生の将来を考えたとき、万全に治した方が正しい」という師匠の言葉は、胸に響いていた。収録後、宿舎に直行。朝稽古後の話し合いから約8時間、「休場させていただきます。長引かせて申し訳ないです」と頭を下げた。 「あくまでもう一つ、最後の番付を目指したい。陥落は残念だけど5、6年後、この経験があったから今の自分があると言えるように、気持ちを入れ直してやるしかない」 ゴールは横綱。大関は通過点。帰り際、吹っ切れたような表情で言い切った貴景勝。昨年九州場所での初優勝も、春場所で右足首を痛めて初の休場を経験して体づくりを見直した事が、進化のきっかけになった。 昇進2場所での関脇転落は武双山以来2人目という屈辱を糧に、秋場所で、現行制度では夏場所の栃ノ心以来6人目で7例目となる2桁勝利での大関復帰を目指す。「今以上に頑張らないと先はない。押し相撲をもっともっと徹底したい」。また強くなって、土俵に戻ってくる。 (志村拓)
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