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小牧特産モモ守れ! 食害対策、暗中模索

鳥の被害を受けたモモの木を無念そうに見る鈴木さん=小牧市上末で

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タカが羽を広げたような形で鳥を驚かせて追い払う器具=小牧市高根3で

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 収穫期を迎えた小牧市の特産品モモに、鳥による食害が目立ち、生産者を悩ませている。大切な果実を鳥に奪われないよう工夫を凝らすが、効果は長続きしない。市も対策に乗り出すが決め手はなく、生産者の暗中模索が続く。

 被害は年々広がっているが、モモについての詳細な数値はまだない。市農政課が市内の生産者2000戸に実施したアンケートでは、鳥による作物全般の被害面積は、2017年度の1万3300平方メートルから18年度は1万4400平方メートルと1年で8・3%増えた。被害はモモなどの果樹が中心で、ほとんどはカラスによる食害だ。

 JA尾張中央(本店・小牧市高根二)の営農技術指導員によると、モモの産地の西側に位置する小牧市上末とその周辺でここ数年、カラスの被害を訴える農家が増えた。カラスのねぐらとなる山に餌が減ったことが原因だと考えられる。

 同市上末の生産者、鈴木孝一さん(86)も被害を嘆く一人。鈴木さんによると、3、4年前から被害が目立ち始めた。鈴木さんは、畑の木の上端に細く見えにくい糸を張り巡らして、糸に当たるのを嫌がるカラスが飛来しないようにしている。それでも全ては防ぎきれず、「上空から木に近づきづらいと悟ると、人のいないときに地上を歩いて果樹園の中に入ってくる」と渋い表情だ。

市がJA尾張中央に貸し出した電子防鳥機=小牧市役所で

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 先日、近所の生産仲間の畑で一本丸ごと被害を受けた木があった。カラスに食べられて穴の開いた果実が幾つも袋ごと地面に落ちているのを見た鈴木さんは「ひどいことをやっとるで」と、しばらく動けなかった。

 1ヘクタール余と大規模にモモ栽培を手掛ける小牧市高根三、伊藤初美さん(66)は、カラスだけでなくヒヨドリや近年増えた野生のハクビシンの被害もあると指摘する。ハクビシンはネコの仲間で、タヌキやアライグマに似ている。動きは素早く、果物を好んで食べる。

 伊藤さんの畑では毎年、鳥獣による被害が10万円ほどに上るという。ヒヨドリは袋の隙間から実を突き、ハクビシンは木に登り実をもぎとって食べる。伊藤さんは鳥を威嚇するため、タカに似せた器具を畑に取り付けているが、ハクビシンのような哺乳類には新たな対策が必要となっている。

 市は7月に入り、鳥類が嫌がる音を出す電子防鳥機1台をJA尾張中央に貸し出した。希望する生産者に無償で使ってもらう。市農政課の担当者は「鳥は移動が素早く、被害の把握が難しい。市鳥獣被害防止対策協議会でも何とかできないか検討している」と話す。

 生産者の鈴木さんは「個人ではもう限界。市や県と協力して良い施策ができれば」と特産モモを守るために連携した対策を願う。

 (藤原啓嗣)

 【土平編集委員のコメント】今日紹介したのは、愛知県春日井市や小牧市などを対象にした近郊版の記事です。長野県の山間地などではサルやシカによる食害がよく記事になりますが、小牧市でというのは、やや意外でした。「人のいないときに地上を歩いて果樹園の中に入ってくる」カラスにも驚きますが、さらに驚くのはハクビシンによる被害。対策に工夫を凝らしても効果は長続きしないようで、生産者の「個人ではもう限界」との叫びは悲痛です。

 

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