【完結】鈴木さんに惚れました 作:あんころもっちもち
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☆モモンガ視点
「その・・・指輪の効果かと」
おずおすと、俺の指輪を示しながら口にしたアルベドの言葉に ハッとした。
ユグドラシルの最終日、終わるその時まで装備していた指輪の事をすっかり失念していたのだ。
「あぁ、そうか。この指輪か」
「その指輪は、モモンガ様の想い人からの贈り物ですか?」
「そうだな・・・」
「あの、無礼を承知でお願い申し上げたい事がございます」
「何だ?」
「その指輪『 全ての無効化スキルを無効』という効果は、今の非常事態において とても危険だと愚考致しました。・・・どうか、外しては貰えませんか?」
確かに この指輪の効果は危険だ。『全ての無効化スキルを無効 』の効果範囲が分からない。
アンデッドの基本特殊能力の中での無効化するものは・・・
『クリティカルヒット無効』『精神作用無効 』『飲食不要』『毒・病気・睡眠・麻痺・即死無効』『酸素不要』『能力値ダメージ無効』『エナジードレイン無効』だ。
スキルでは・・・
『 上位物理無効化Ⅲ(だいたいレベル60以下の物理攻撃は全て無効化できる) 』
『 上位魔法無効化Ⅲ(一定以下の魔法攻撃は全て無効化できる) 』
『 冷気・酸・電気攻撃無効化 』
ぐらいだろうか??
これ、全てが無くなるとなるとかなり不味い気がする。プレイヤークラスの敵と戦闘になった時、ほぼ100%負けるだろう。ここは、外した方がいいのか?いや、加藤さんの贈り物だしな・・・
俺が悩んでいるのを見たからか、アルベドが言葉を続けた。
「モモンガ様、紐に通して首からぶら下げたりするのは 難しいでしょうか??」
「あぁ、なる程!その手があったな」
手放したくないが、装備し続けるのは不味い。首からぶら下げるだけなら“装備した”事にはならないだろう。
指にはめた蜘蛛の指輪を引き抜こうと、ぐっと何度か力を入れて、違和感に気付き、冷や汗が流れた。
「・・・・・・抜けない」
「え」
「ど、ど、どうしよう。指輪が抜けない」
「も、モモンガ様!失礼します」
アルベドが俺の指に手を当てて力を込めて引っ張った。
「い、痛い痛い!!??」
「も、申し上げございません・・・くそ、抜けないなんて なんという執念なの」
アルベドは、可愛らしい見た目をしていても、バリバリの前衛職。はぁ〜力強いな。
それにしても困った。呪いのアイテムだったのか?ユグドラシルにいた時は、取り外し可能だったんだけどな・・・
「そうだわ!ペストーニャを呼んで解呪させましょう」
「あぁ、そうだな。俺も解呪出来そうなアイテムを探してみるよ」
バタバタと走り去るアルベドを見送って、俺はコック達に食事の礼を言った後、アイテムを探す為 自室へ転移した。
ーーーーーーーーーー
色々と試してみた結果・・・やはり無理だった。
解呪の魔法もアイテムも、どれだけ試してもダメ。蜘蛛の指輪は、うんとも動かなかった。
「これだけ試して駄目だと、後はこれしかないが・・・」
超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》これを消費経験値ゼロで叶えることが出来る“シューティングスター/流れ星の指輪”。
消費した経験値に応じて願いを叶える魔法だ。ユグドラシル時代は選択肢が幾つか提示されその中から選ぶという形式だったが、この世界ではどうなっているんだろうか。
しかし、上手く行ったとしても、これを使ってしまえば 指輪がどうなるか分からない。最悪、消滅してしまう可能性だってある・・・どれだけ危険な指輪だとしても、消えてしまうのは嫌だった。
「これは、使えないな」
“願いを叶える”か・・・。
それは、加藤さんを呼び戻すことも可能なのだろうか。いや、だが、異世界で死んだ加藤さんを呼び出したとして、果たしてそれは本当に“加藤さん”なのか?
俺の頭の中の加藤さんを 復元するだけではないのか。・・・それは彼女を侮辱している事になるのだろうな。この世界では、どうなのか分からないが、異世界での死者を蘇らせるなど、出来っこないのかもしれない。
「モモンガ様、いかがなさいますか?」
どこか悔しそうにしているアルベドを 見てから俺は首を振った。
「もう、諦めるよ。・・・加藤さんとの思い出の指輪だしな。お前達には迷惑をかけるとは思うが」
「そんな事ありませんわ。モモンガ様にお仕え出来る事こそ私達の喜びです」
「ありがとな、アルベド」
「モモンガ様のお食事 睡眠 お風呂そして、夜のお供まで・・・ぐふっぐふふふふ」
「あ、アルベド??」
ニヤニヤと残念さ剥き出しで笑うアルベドに、後に控えていたペストーニャがドン引きしていた。俺も これは怖ええよ。
「よ、夜のお供はちょっと・・・」
後ずさりながら お断りの言葉を告げると、アルベドが目の色を変えてズズズッとこちらへ近寄ってきた。
「モモンガ様、む、無効化の効果があるという事は アンデッドでも性欲があるという事ではございませんか?」
「あのだな、そういった事を女の子が口にしちゃダメだと思いマス」
「お、女の子だなんて!モモンガ様、これはとっても重要なじゅーーような事ですのよ?お世継ぎを残す為にも」
「いや、アルベド?ちょっ、ちょっと、待ってくれ〜〜!!いやあ"ぁーーー!??」
アルベドに押し倒され 襲われてシマイマシタ。
怖い、女の人って怖い。ペストーニャが助けてくれたものの、かなりひん剥かれてしまった。何か大事なものを失った気がする。
結論から言えば、俺の息子は居なかった。骸骨だからね、仕方ないね。サヨナラ息子よ、一度も使ってあげられなくてゴメン。
但し、性欲は健在だった。絶世の美女に襲われて、もう 息がハァハァしてしまうぐらいには、めちゃくちゃ興奮した。犬の顔面をしたペストーニャが入ってきて冷静になれなかったら、本当にヤバかった。
だが しかし、俺の息子は・・・ぐすん。
蜘蛛の指輪「簡単に逃げられると思うなよ、小僧!」(ドヤ顔)
※モモンガ様、『 精神安定化 』が無効になっているのには気付いておりませぬ。元人間だと中々気付けないと思うんだ