【完結】鈴木さんに惚れました 作:あんころもっちもち
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☆デミウルゴス視点
『 ユグドラシル』の消滅。アインズ・ウール・ゴウン、このナザリック地下大墳墓の消滅。
そして・・・愛する人を失ったモモンガ様の“現状”を、アルベドから聞かされた時の絶望感は耐え切れないものだった。
私達は愚かにも 何一つ気付くことなく朽ちる所だったのだ。
「私達は、甘え過ぎていたのたもしれませんね」
「甘え・・・でありんすか」
シャルティアが 戸惑いながらも返事をしてきた。自分自身への怒りや恐怖を押し殺しながら何とか言葉を紡いだ。
「“至高のお方々のご命令だけを聞いていれば良いあの方々に間違いなどないのだから”・・・私達は、私は、そうやって依存してました」
「至高ノ41人ガ望ゾマレル姿コソ、我等ノ、アルベキ姿ダ」
コキュートスのその言葉は、今までの愚かな自身を表している様で 思わず声を荒らげてしまった。
「その結果が、このザマですか!!!!」
シンと静まり返る玉座の間。ハッとコキュートスを見れば、驚きに目を見開き 固まってしまっていた。
あぁ、八つ当たりをしている場合ではないのに・・・。友に すまないと謝れば、大丈夫だと返事をしてくれた。私は深呼吸してから言葉を続けた。
「・・・近頃は、お隠れになったと思われていた方々が ナザリックを訪れていましたね」
「えーと、やまいこ様、ぬーぼー様、音改様、ガーネット様、ブルー・プラネット様と、ぶくぶく茶釜様、スーラータン様、ぷにっと萌え様」
「そして、ヘロヘロ様。もしかして 転移と何か関係が?」
アウラとマーレの返事に頷きながら、私は この“予測”に対して、バクバクする心臓を押さえ込み、必死に冷静を装った。
「関係は大いにあるでしょうね。何故、ユグドラシルと共に消滅する筈だったナザリック地下大墳墓が、この地にやってきたのか」
「そんな、まさか・・・」
「モモンガ様を除く、至高の41人。あのお方々なら ナザリックを転移させることも可能でしょう」
「ど、どうゆうことでありんすか?!ペロロンチーノ様は!?ナザリック内には誰もおりんせんでした!!」
狼狽えるシャルティアを横目に、必死に考えを巡らせていた脳は、最悪な予測を打ち出した。
「ユグドラシルと共に消滅した・・・」
呟きのような私の声に、反応したのはマーレだった。怒気を含んだ、まるで悲鳴のような大声をあげた。
「うっ嘘だぁ!!!!!!!」
涙で目元を潤ませ、震える手に ねじくれた黒い木の杖を握りしめ、私を睨みつけてくる。
「そんなっそんな事ありえない!!!!ぶくぶく茶釜様が死んだなんて、そんな訳ない!!!」
親愛するお方の非常事態に誰だって冷静に対応出来るわけがない。・・・こんな事を口走ってしまうとは私も相当まいっている様だ。
いよいよ攻撃を放とうとしたマーレを止めたのは、コキュートスだった。
「待テ、マーレ。デミウルゴス ノ話ハ、アクデモ可能性ノ話ダ」
私も頭を下げ、マーレへと謝罪をした。
「申し訳ない、私もかなり混乱していたようです。至高のお方々には“リアル”の世界もあるのですから、そちらへ行ったのかもしれません。」
マーレは、ごめんなさいと謝ったあと ボロボロと泣き出してしまった。泣き声だけが響く中で、シャルティアの消え入りそうな声は、よく響いた。
「なんで、一緒にいてくれないんでありんすか」
それは、ナザリックに住まう者 皆の心の内のようで胸が軋むように痛んだ。
勿論、至高のお方々が ナザリックに来る事を拒んだ可能性はある。・・・しかし、
「“来られなかった”のではないでしょうか?もしや、コチラへ来られるプレイヤーはお1人だけなのかも・・・」
私の言葉にアルベド、セバスが 続けて発言した。
「そうね、少なくとも モモンガ様はギルドメンバーと一緒には居られない事を嘆いていらっしゃったわ。」
「モモンガ様を救う為、至高のお方々が モモンガ様に何かしら嘘をついている可能性があります。モモンガ様はお優しい方ですから自分一人だけ助かるのを良しとはされないでしょう」
もし、この予測が正しければ。私達は、至高のお方々から モモンガ様を託されたのだ。・・・だが しかし、モモンガ様が あんなにも追い詰められるほどに 、余りにも現実は無情過ぎた。
「そんな、そんなのって・・・」
アウラの声が口から漏れた。モモンガ様にとって、仲間を犠牲に得た新転地など苦痛でしかないだろう。
それに・・・“あの”モモンガ様が、そこまで愛されたという女性も只者ではない筈。そんなお方が亡くなったというのも、もしかしなくても 異変に気が付けなかった我らの不甲斐なさ故か。
静まり返った場を仕切るようにアルベドが手を叩いた。いつまでも立ち止まっている訳にはいかないのだ。私もアルベドの言葉に便乗した。
「とにかく今は、やるべき事があるはずよ。安全の確保、周辺の情報収集」
「あとは、モモンガ様のお心のケアですね。・・・心の内を打ち明けられたのが、アルベド、セバスそして、プレアデスですか。モモンガ様が落ち着くまでは貴方達にお任せした方がいいかもしれませんね」
「ええ、そうね。セバス、外に脅威となりそうな者はいなかったのよね」
「はい、半径5km以内にはいませんでした」
セバスの返答にアルベドが頷いて、指示を出した。
「そう、プレアデスは半数ナザリックへ戻しましょう。シャルティアだけを残して 他の階層守護者は 情報収集へ行って頂戴。」
「ふぇ!?な、何でわたしだけ留守番なんでありんすか!」
理解が追いついていないのか 何処か不満そうなシャルティアにアルベドがため息をつきながら説明した。
「脅威になるものがいないのであって、“侵入者”がいない訳では無いのよ、シャルティア。貴方が直接相手しなければならないほどの者はいないだろうけれど、責任者として残って頂戴。」
「うぅ、わかりんした・・・」
指示を受け、その場を去っていく皆を見送りながら 私はセバスを見据えた。
「セバス、モモンガ様は“例の指輪”の効果で弱体化しています。・・・頼みましたよ」
「ええ、もちろんですよ デミウルゴス。」
気に入らない奴だが、そういう所の信用はしているんだ。しっかりと頼みましたよ。
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「どういうこと、ですか・・・セバス」
村から離れた草原で、監視対象であるマジックキャスターの集団に対峙するのは 兵士らしき集団と、セバスだった。
・・・本当に人間に対して 無駄な慈悲をかけたがる奴だ。
貴様はモモンガ様と共にいるのではなかったのかと 舌打ちをしつつ 、私はモモンガ様へ現状の報告を行うのだった。
デミウルゴス「転移したのは至高の41人のおかげだ!!」
ギルメン「え?」