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【社会】

<参院選ルポ>オスプレイ配備 秘密主義 木更津市民「判断材料を」

陸上自衛隊木更津駐屯地(奥)に隣接して作られた青いトラックの市営の陸上競技場=3日、千葉県木更津市で、本社ヘリ「あさづる」から

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 かつての「軍都」をほうふつとさせる光景だった。先月二十三日、千葉県木更津市で初めての陸上競技場の完成を祝うオープニングイベントでのことだ。

 あいさつに立った渡辺芳邦市長は「防衛省の皆さまにお力添えをいただいた」と謝辞を述べた。

 競技場ができたのは陸上自衛隊木更津駐屯地に隣接する北側。四百メートルトラック八レーン、スタンドベンチ六百三十席などを備えた競技場建設で、市は総事業費六億円の約三分の二を防衛省の補助金で工面していた。駐屯地周辺の「民生安定」名目の補助金だ。

 式典には、防衛省北関東防衛局の職員らも列席。国防族議員として知られる地元の衆院千葉12区選出の浜田靖一元防衛相(自民)も「防衛省北関東防衛局の努力で立派な陸上競技場ができた」と手放しでたたえた。拍手に包まれた会場の上を、駐屯地のヘリが爆音を響かせて飛んでいった。

 JR木更津駅から車で約五分と市中心部にも近い木更津駐屯地では、陸自の垂直離着陸輸送機オスプレイの暫定配備計画が進む。

 長らく共存してきた自衛隊に信頼を寄せ、オスプレイ受け入れもいとわない市民も少なくない。イベントを見守った市内の男性会社員(27)は、暫定配備について「生まれる前から自衛隊基地はあるので、特に反対する気持ちはない。情報公開は必要ですけど」と淡々とした様子。

 防衛省は二〇二一年度までにオスプレイ十七機を納入予定。木更津への暫定配備が実現すれば、駐屯地の離着陸回数は一日平均十五回、年間四千五百回増える見込みだ。騒音対策について、防衛省は「市と相談して対応する」と述べるだけで、具体策は示していない。木更津以外に検討した配備先も公にしておらず、「木更津ありき」で話を進めている印象はぬぐえない。

 駐屯地周辺の住民を対象にした説明会は報道陣をシャットアウト。終了後に住民に尋ねると、「気掛かりなのは暫定配備の期間」という声が少なくない。防衛省から明確な回答がないため、「恒久配備につながる」と語気を強める出席者もいたという。

 出席した漁協関係者は防衛省の説明に「言葉遊びのレベル。田舎者だから適当にあしらっておけという態度がありあり」と嘆き、配備が長期間になると予想する。

 自衛隊に理解があるといわれる木更津でも、防衛省の「秘密主義」に波紋が広がっている。オスプレイの暫定配備を取り上げた六月中旬の市議会一般質問には、危機感を持った市民らが連日、傍聴に訪れた。駐屯地の南東約一・五キロに住む主婦渡辺豊子さん(73)は「ここは風が強く、墜落したらと考えると、とても不安だ」と語る。

 有権者不在で議論が進んでいないか。今回の参院選で、首都圏上空を飛ぶオスプレイの運用は争点になるのか。

 住民団体「オスプレイ来るな いらない住民の会」事務局長の野中晃さんは「国政に関わることなのだから、与野党で堂々と議論してほしい。防衛省は市民に判断材料を示すべきだ」と注文をつける。 (山田雄一郎)

<木更津市とオスプレイ> 2017年1月、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属の1機が定期整備拠点の陸自木更津駐屯地に初めて飛来。試験飛行を終え、今年3月に沖縄へ戻る。現在、米軍のオスプレイ2機が整備中。防衛省は陸自が納入するオスプレイ17機を佐賀空港(佐賀市)に配備する予定だったが、地元漁協との調整がつかず、今年5月、木更津市に暫定配備の計画を伝達した。

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