ロサンゼルスを本拠とする世界最大(2018年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)が発行する事業用不動産専門誌『BZ空間誌』の特集「福岡ビジネス拠点ガイド」から一部抜粋し、企業進出が進む福岡市のポテンシャルをデータで探っていく。
「スタートアップ誘致」に積極的な福岡市
今、日本で最もポテンシャルの高い都市として注目を集める福岡市。国内外からの企業進出や市内創業の動きが加速し、政令指定都市中で人口増加率No.1、市税収入は過去最高を記録している。福岡市のビジネス立地の魅力を、大型再開発プロジェクトと併せてご紹介する。
■国家戦略特区 福岡市グローバル創業・雇用創出特区
~規制・制度改革を活用して、福岡市をスタートアップの拠点都市に~
国の経済活性化のために、地域限定で新たな規制・制度改革の提案が可能となる国家戦略特区。「グローバル創業・雇用創出特区」に指定された福岡市では、国内外からスタートアップを誘致し、市で創業する企業を育むため、様々なプロジェクトを展開している。
そのシンボルとなる事業の一つとして、市は閉校となった旧大名小学校を、2017年4月に官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next(FGN)」※1として再生。起業や第二創業を支援し、その成長をサポートする場として運営している。FGNでは、シェアオフィスやコワーキングスペースといったハード面とともに、創業に必要な機能をすべて集約し、ワンストップで利用できるようにソフト面も充実。コンシェルジュによる起業相談窓口を置くスタートアップカフェや、雇用労働相談センター、人材マッチングセンターの設置など、“特区としての規制・制度改革”に“福岡市の独自施策”を併せて、さらなるサポートを推進しており、これが福岡市の創業支援策の特長にもなっている。
※1 現在内外装工事等により一時閉鎖、5月31日リニューアル・オープン
こうした取り組みが奏功し、FGNはスタートアップのプラットフォームとして認知され、東京の投資家やベンチャーキャピタルも足繁く訪れるようになっており、これまでに約30社・80億円以上の資金調達が実現しています。現在、リニューアル・オープンに向けて入居企業募集中る。
~スタートアップカフェで出来ること~
また、外国人の創業活動を促進するため、在留資格(経営・管理)の取得要件を満たす見込みのある外国人の創業活動を特例的に認める「スタートアップビザ」の受付を、2015年12月に開始した。これは、在留資格(経営・管理)の要件(事務所開設、常勤2名以上の雇用もしくは資本金の額または出資の総額が500万円以上など)が整っていなくても、要件を満たす見込みについて福岡市の確認を受けると最大一年の在留資格が認められ、福岡市で創業活動ができる制度。国の規制改革(スタートアップビザ)に市の制度(スタートアップ賃料補助※2)を併せ、外国人がより創業しやすい環境を整えている。
※2 有望なビジネスプランを持つ外国人起業家へ、福岡市の「住居」「事業所」の補助を行う制度
福岡市では、国内外からスタートアップ人材や企業を呼び込むうえでハードルとなる規制の改革や法人減税などを実現し、これらを「福岡市スタートアップ・パッケージ」として発信していくことで、創業拠点都市づくりの日本における先駆的なロールモデルを構築している。
企業進出をサポートする行政サポート
■福岡市立地交付金制度
福岡市は、都市機能がコンパクトに集積していること、アジア主要都市へのアクセスがよいこと、ビジネスコストが低廉であること、また人口増加数(約15,000人/年)・人口増加率・若年層の人口比率が政令指定都市で第1位※、優秀な人材も豊富であることなどが評価され、全国の企業から進出先として注目を集めている。福岡の進取の気性と、近年の機運高まる空気感も、この勢いに拍車をかけているといえるだろう。
福岡市では、市が指定する産業分野・機能における企業の進出を促進するため、立地交付金制度を用意しています。この制度の後押しもあり、直近5年間(2013~2017年度)に福岡市に立地した企業数は282社、雇用者は10,000人を超えた。重点的に誘致を進めている分野・機能は、本社機能や外資系企業、知識創造型産業(IT関連、デジタルコンテンツ開発)等で、業界の成長に伴い福岡市への進出も増えている。
※平成27年国勢調査(総務省統計局)による
賃料の上昇が続く、福岡のオフィス市場
■福岡オフィスマーケットの現状と今後
2017年Q2以降、空室率は1%割れの状況が続いている。2018年Q2に2年ぶりの新規供給があったが、ほぼ満室稼働で竣工。新規開設や拡張を目的とする移転ニーズが旺盛のため、需給緩和にはつながらなかった。賃料は過去最高値の更新が続いており、2018年末時点の賃料の対前年伸び率は、2017年に続いて再び10%を超えた。2020年までに複数の新規供給の予定があるものの、新規開設や拡張ニーズの引き合いが多い。二次空室は発生しない見込みであり、需給がタイトな状況が続く見通しである。
2021年以降は、天神ビッグバンの第一弾として「(仮称)天神ビジネスセンター」の竣工が予定されている。テナントにとって待望の新規供給であるものの賃貸床面積が1万坪を超えるため、空室率は上昇するとみられる。しかし、上昇しても空室率が低位であることは変わらず、賃料上昇は続くだろう。
■2024天神未来創造 天神ビッグバン
国家戦略特区による航空法の高さ制限の特例承認をトリガーに、ビル容積率の緩和など市独自の施策を展開し、2024年までに30棟のビル建て替えを誘導するプロジェクト。耐震性の高い先進的なビルへの建て替えで、アジアの拠点都市としての役割・機能を高める。
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