Raspberry Pi財団、Webサイトを「Raspberry Pi 4クラスタ」で運用中

2019年7月2日

超小型シングルボードコンピュータのRaspberry Pi(ラズベリーパイ)は、名刺ほどの大きさの基板上にARMベースのプロセッサ、メモリ、イーサネットインターフェイス、ディスプレイポート、Wifiなどを備えています。

1台あたり数千円という低価格で入手可能で、あとはストレージとしてSDカードを挿入し、キーボードとモニタ、電源をつなげばすぐに利用できる手軽さから、デバイスへの組み込みや趣味としての利用など広く使われています。

先月発表された「Raspberry Pi 4 Model B」では4コアを搭載した1.5GHzのARM v8 64ビットプロセッサに最大4GBメモリ、ギガビットイーサネット、USB 3ポートなどを搭載。さらに高性能化が進みました。

Raspberry Pi財団のWebサイトはRaspberry Pi 4クラスタで出来ている

そして高性能化したRaspberry Pi 4は、Raspberry Piの開発元であるRaspberry Pi財団のWebサイトを支えることができるようになったようです。

Raspberry Pi財団のサポーターの1社でホスティングサービスを提供しているMythic Beasts Ltdは、Raspberry Pi財団のWebサイトがRaspberry Pi 4をサーバとして用い、そのクラスタで構築されていることを明らかにしました。

Raspberry Pi 4サーバクラスタのコンピューティングリソースが「72コア、72GBメモリ」ということは、4コア4ギガバイトメモリのRaspberry Pi 4を18台つなげていると見られます。

そして「that consumes less than 100W in 1/2 U of rack space that retails for under $1000. Server manufacturers should start getting scared.」(これが100W以下、2分の1Uラックしか使わず、1000ドル以下で買える。サーバベンダはこれを恐れるべきだ)と続けています。

figRaspberry Pi財団のWebサイト

Raspberry Pi財団のWebサイトのトラフィックがどのくらいの規模なのか想像するしかありませんが、Raspberry Pi 4を発表したばかりで注目度も高まっているでしょうからそれなりに大きなものではないでしょうか。ホスティングサービスを提供する同社としては、それにRaspberry Pi 4クラスタで対応できたことから「サーバベンダはこれを恐れるべきだ」と考えたのかもしれません。

ちなみに、Webサイト分析ツールのWappalyzerでRaspberry Pi財団のWebサイトを分析してみると、静的生成ツールのGatsbyとWordpressが使われており、CDNとしてCloudFlareが使われているようです。

同社は2016年にRaspberry Pi 3が登場したときにも、Raspberry Pi 3クラスタでRaspberry Pi財団のホスティングを行い、このときはトラフィックの5%をRaspberry Pi 3クラスタで処理したとのこと。

Raspberry Piクラスタの可能性は広がる

日本国内の一部のソフトウェアエンジニアの間では、複数台のRaspberri Pi 3をネットワークで接続してクラスタ化し、Kubernetesをインストールして試してみる、ということも行われているようですし、Publickeyでも昨年、Raspberry Piのクラスタを利用してUIテストを並列処理し高速化する、という記事を公開しています。

これらはいずれもKubernetesの勉強のためであったり実験的なものであったりしますが、より高性能化したRaspberry Pi 4の登場により、今後Raspberry Piクラスタの実用的な活用範囲が広がっていくのではないでしょうか。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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