ほとんどの日本人が65歳を境に仕事から離れ、社会との接点が断ち切られてしまう。結果、心身ともに丈夫な状態であるにもかかわらず家にこもりがちな生活を続け、やがては要介護に陥るケースも多い。こうした中、“生涯現役”を支援する一般社団法人「MY STAGE PROJECT」が産声を上げた。設立記念シンポジウムの様子から、その狙いを探る。

2018年11月に設立した一般社団法人 MY STAGE PROJECTは、高齢者を取り巻く時代の趨勢をにらみ「65歳は、人生の定年ではない。100歳まで楽しい社会を作る」ことをミッションに掲げる。

2019年4月、設立記念シンポジウムで挨拶した理事長の三宅孝之氏は「特別に意識しなくても、日常的な社会参加によって健康生活を維持しやすいことが定量的なデータで裏付けられるようになってきた。このプロジェクトにより、高齢者の生活行動を変えて社会に参画できるような仕組みを考えたい」と語った。

MY STAGE PROJECT理事長の三宅孝之氏(写真:小口 正貴)

社会参加は明らかに介護予防につながる

その仕組みに、民間企業を巻き込んだ。各企業のリソースを持ち寄って「毎日楽しい」「毎日役に立つ」「毎日消費する」ような枠組みを構築し、高齢者の社会参加を促す。だが、単独の企業では限界がある。そこでMY STAGE PROJECTを一種のコンソーシアムとし、多業界の企業を集める窓口とする。

一方で社会貢献だけではなく、きちんとビジネスとして回すことも視野に入れている。そのために活用するのがソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)だ。SIBとは、社会課題の解決が必要な分野で民間資金によって行政の業務を代行し、その成果を第三者機関が評価した上で報酬を支払うスキームである。

SIBの概要(出所:経済産業省)

MY STAGE PROJCTでは、健康維持に直結する介護予防の向上を評価指標にする。「企業の社会貢献の結果をデータとして収集し、第三者機関に評価してもらう。自治体が介護費の削減につながったと判断すれば、成果に応じて対価を支払う。ビジネス面で見てもサステナブルかつ介護予防につながる世界観を作りたい」(三宅氏)。その上で、SIBはこれから日本でも普及していくだろうと結び、資金が循環する次世代の社会課題解決手法に期待を寄せた。