大分で2人の逸材が飛躍を待つ
伊志嶺監督も惚れ込む極端な個性

自らの力で未来を切り開くしかない

初の甲子園出場の切符を掴み取り、その先にプロという目標も見据える翁長
初の甲子園出場の切符を掴み取り、その先にプロという目標も見据える翁長【撮影:加来慶祐】

 ともに沖縄県内の軟式野球部出身の翁長と東門だが、その実績と性格はまるで対照的だ。


 石垣中2年秋に沖縄県で優勝し3年春に全国の舞台を経験した翁長に対して、金武中出身の東門にはこれといった実績もない。また、強烈なポジティブ思考の翁長に対して、物事を慎重に考えすぎるあまりネガティブ思考に陥りやすいのが東門だという。


 翁長は自分が決めたことに関しては絶対にブレない。「将来は必ずプロに行くんだ」という意思にもブレがない。たとえどんなに厳しい言葉で伊志嶺監督から叱責を受けても「大丈夫です。どうにかなります」と、常に前向きな言葉を返してくる。翁長の小学生時代から身近で見てきた伊志嶺監督によると「彼のポジティブさは“なんくるないさー”とも違うんだ。自分の中で何をどうすればこうなる、という形ができている。それが彼の自信を支えている」ということらしい。


 一方、伊志嶺監督が「物事をマイナス思考で考えることに関しては天下一品」という東門は、自身に注がれる多くの視線や期待に気づいていないような節がある。


 伊志嶺監督は「肩も足もある。身体能力も高い。守備範囲も広い。外野守備なら大分県じゃナンバーワン」と太鼓判を押すが、当の本人は「まだまだ自分は一番ではありません。肩にも自信がないし、打つ方だってすぐ考えこんじゃうし、先頭打者なのに最初の打席で手が出ずに見逃し三振することもあるし……」と煮え切らない。


 ただ、5割6分以上の高打率を残した5月の17連戦中、東門のバットは“打ち出の小槌”状態で、振れば長打が当たり前。本塁打が2本、ランニング本塁打が1本、三塁打が3本、二塁打が5本。東門が憧れる糸井を彷彿とさせるスイングの強さで、右へ左へ豪打を打ち分ける姿は圧巻そのもの。打者として高校生レベルを超えた感も漂いはじめたが、本人は依然として慎重な姿勢を崩そうとはしない。


「東門も翁長も、もう夏しかないから。一番目立つところでどれだけのパフォーマンスを発揮できるか。彼らにはいつも言っているんです。『この夏はお前たちの野球人生を決める大会になるんだよ。もちろんサポートはするけど、ここで何かを掴もうとするなら、自分の力で掴みに行くしかないよ。その覚悟でやれ』と」(伊志嶺監督)


 これに力強くうなずく翁長と、少々遠慮気味な態度を見せる東門。ただ、両者が演じるパフォーマンスレベルは、春先までの彼ら自身を大きく凌いでいることは確かだ。ライバルはセンバツ4強の明豊と、年間シード筆頭の大分と見てまず間違いない。そしてふたりが口を揃える「沖縄以上の暑さ」だ。


 翁長と東門がセンバツに出場したライバルを駆逐し、両極端な個性で日本文理大附を初の甲子園に導くことができた時、ふたりの未来は大きく開ける。


(企画構成:株式会社スリーライト)

加来慶祐

1976年大分県竹田市生まれ。東京での出版社勤務で雑誌編集などを経験した後、フリーランスライターとして独立。2006年から故郷の大分県竹田市に在住し、九州・沖縄を主なフィールドに取材・執筆を続けているスポーツライター。高校野球やドラフト関連を中心とするアマチュア野球、プロ野球を主分野としており、甲子園大会やWBC日本代表や各年代の侍ジャパン、国体、インターハイなどの取材経験がある。2016年に自著「先駆ける者〜九州・沖縄の高校野球 次代を担う8人の指導者〜」(日刊スポーツ出版社)を出版した。

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