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♪~(出囃子)よっ 待ってました!
(拍手)志ん生 待ってました!
(志ん生)え~ 今晩から「いだてん」第二部の幕開けです。
よっ!(拍手)
って聞いたんですが 何でも 前回の残残りもんがあるそうで…。
(孝蔵)<大正12年未曽有の大地震 関東大震災の直後この人が声を上げました>
(治五郎)人々が希望に向かうための最たる力であると信じ第8回 パリ国際オリンピックへの参加を決意する。
<パリオリンピックの予選を断行したのです>
こんな時にオリンピックですか?
こんな時だからこそスポーツが人々に力を与えるんです!
<既に現役を引退した金栗四三。予選当日は伴走者として母校の士気をあおります>
(四三)どぎゃんすっか~!(八島)先生… 先に… 行って下さい。
バッカも~ん!伴走が先行ってどぎゃんすっか!
はよ来んか! おい ついてこい!
…って言いながら背中で ゴールテープを切っちゃった。
(歓声)
(野口)1着 金栗四三!
2時間36分!(歓声)
おめでとう~!いやいやいや…。
胴上げは… ご勘弁!
(孝蔵)<金栗四三 34歳まさかの3度目のオリンピック出場です>
ほぼ本当のお話です。以上が 前回の残りでした。
ところで皆さんこの男をお忘れじゃないですか?
河童のまーちゃん。
(内田)結果は 両名とも予選敗退。(非難する声)
世界の競泳界は 今クロール 一色であります!
(志ん生)<オリンピックで日本古来の泳ぎが クロールに惨敗。悔しさいっぱいの まーちゃん>
(政治)チクショー! なにがクロールだ~!
うわ~!
<そう叫んで浜名湖に身を投げた田畑政治君。深く深く沈んで 一向に浮かんでこない。そうこうするうち4年の月日が流れまして…>
プハ~ッ!
<すっかり大人になっちゃった>
やっぱり 時代はクロールじゃんね~!
まーちゃん そりゃクロールじゃねえ…。片抜手一重伸だに~!
えっ? 俺が クロールって言ったらこれがクロールだ バカ野郎め!
何だ? お前ら。クロールは こうだぎゃ~。
下手くそ!
♪~
<まーちゃんこと 田畑政治。後に オリンピックを東京に呼ぶ男>
東京!(岩田)東京!
東京!
というわけで 第二部は河童編です。
(五りん)よっ 第二部! よっ 第二部!(拍手)
♪~
「よ~うっ!」(太鼓の音)
♪~
♪~
♪~
♪~
♪~
♪~
「よ~うっ!」(拍子木の音)
(孝蔵)<関東大震災の翌年 大正13年>
<東京・日本橋>
スッスッ ハッハッ スッスッ ハッハッ。
うわっ!
な… 何だよ!すんまっせん!
<韋駄天が パリオリンピックへ向けて猛練習を始めた頃東京帝大 今の東大を卒業したまーちゃんは朝日新聞社の面接を受けます>
うわ~!(尾高)何してんだよ…。
いや… おっ ハト!
♪~
おい 学生 学生…。
<記者といえば 今でこそ「エリートでござい」って顔してますが昔は 「ブン屋に家は貸すな嫁にやるな」って言われてたぐらい荒くれ者も多かった>
さあ 社長 日本泳法とクロールの一騎打ちどっちが勝ったと思います?
ねっ 社長 社長!(緒方竹虎)うん… 田畑君…。
クロールは 茨木中の高石勝男対する 我が一高の松澤一鶴は片抜手一重伸だ。さあさあ 社長 どっちだ!?
(村山龍平)あっ クロールかね?そう! 違~う!
僅差で松澤が勝ったんです~。
でも私はねこれからの水泳界を あれするのはクロールだと直感しましたね。その日は ほら 波が高かったでしょう。
高石君のバタ足がね何度も空振りしたんですな~。
これが静水プールだったらもし バタ石君の高足が あれしてたらクロールに勝てた? 勝てないよ~!
あの~ 田畑君ね その話 長くなるかね?
(緒方)いえ もう十分長いです。
いや 参ったな… 好きなスポーツは何か聞いただけなんだけど。
水泳です。だろうね。
じゃあ 希望する部署は運動部かね?
政治部です。えっ?政治がやりたくて来ました。
(村山)あ~名前も「政治」と書いて「まさじ」だしね。
あっ! アッハハハハ…!
そ… そんなに面白いかね?
そのクロールの使い手 高石の勝っちゃんがパリの代表選手に選ばれた。
しかし 練習ができない。なぜだと思います? さあ はい!
プールかね?違う! そう プール!
温水プールが東京にはない。ほかの競技は 一年中練習できるのに水泳は夏しか泳げないんです!そんなんで世界で勝てる?
勝てないよ~!
(せきこみ)よし… よし 落ち着こう。
(笑い声)(緒方)水 飲みたまえ。
息継ぎするの忘れてました。 ハハハ…。
とにかく プールを… ねっ?日本に 一年中泳げる温水プール。
(緒方)よし… よしよし… よし分かった。よしよし…。
なんとも せわしない主人公で金栗さんとは だいぶ違いますが頑張って ついてきて下さいまし。(笑い声)
えっ? えっ ちょっと…。(ざわめき)
行っちゃうの?(五りん)ちょっと 師匠!えっ おしまい? ええっ!?(拍手)
ふう…。一つ 聞いていいかね?
何ですか? もう時間過ぎてますけど。ハハハ…。
君の友達や仲間が いい選手なのはよく分かった。
さすが頭いい。
…で 君は何なの?
何なんでしょう?(緒方)こっちが聞いてるんだよ。
(村山)君自身は泳がんのかね?
医者に止められましてね…病気したんです。
慢性盲腸炎と大腸カタルを併発しておるに。
あ~ 痛い…。(うら)じゃ 泳ぎは?
ううん! やめさせにゃあいかんら。
(庄吉)何ででぇ!?丈夫んなるために始めたんだに。
(うら)諦めるしかねえら。 田畑の家は代々男らが体の弱い家系だで。
でも よかったと思ってます。
泳ぎは好きだが 人並みで 続けていても選手としては大成せんでしたからね。
あっ これ 実家です。 ハハハ。
(緒方)えっ これ 全部 君のご実家?すいません 金持ちなんです。
ハハハ… 逆だったっつって!
いや こりゃ 立派なもんだ。
…で あの~ もう一度 聞くがね希望は政治部でいいのだね?
はい。 でも 水泳は続けますよ。
日本を世界レベルにするまでは。
世界?いずれ 世界一になります。
はあ~ 台風のような男だったな~。
フッ… 頭に口が追いついてないといったふうでしたな。
そして 字も汚い。
記者には不向きでしょう。
あっ…。
えっ 気になります?
う~ん… まあ顔がいいから採ってやるか ハハハハ…。
ですかね~?
え~社長の鶴の一声で合格となりましてまーちゃんは朝日新聞政治部の記者になり そして立憲政友会の担当となりました。
うん? 顔? えっ いいですか?
とっつぁん坊やでしょう。
初版 上がりました!
(五りん)<当時の政友会総裁は内閣総理大臣 大蔵大臣を歴任した大物高橋是清>
連立内閣か…。はい。
鍵を握ってんのは是清だ。政治部は 24時間 張り付くように。
(一同)はい!
うん? はっ…。
何だ このオリンピックの記事は!
あれ? 田畑?
やい 運動部! どういう了見でこんな記事 書くのかね!?
何だ? 君。 どこのどいつだ?
政治部の田畑だ!
(河野)貴様が浜名の河童記者か。
校閲部の河野だ。何が気に食わん?
これだよ!岸の写真が真ん中にあるのも陸上の連中ばかりが大きく扱われとるのも気に食わん!
「河童記者」も気に食わん。
当然だろう!陸上の方が水泳より上なんだから。
何だと!?(尾高)河野は金栗四三の弟子でね箱根駅伝のランナーだったんだ。
早稲田ん河野!都の西北の意地ば見せんか!
ハッハッハ… 俺に言わせりゃ あれだよストックホルムから3大会も出てだなメダルに手も届かん陸上なんてのは恥さらしだ! やめた方がいい。何だと!?
おい… 田畑 行くぞ。
パリは勝てる!大ベテランの金栗四三先生はじめ…。
金栗!? このおっさん まだ走ってんの?
断れよ みっともない!
30半ばのおっさんが 今更勝てる?勝てないよ~!
(河野)先生を侮辱するな。
三度目の正直…これが最後のレースと覚悟ばして意気込んで臨んだばってん…意気込んで臨んだばってん…やはり 酷暑には勝てず 32km地点で意識ば失うてしまいました。
♪~
ばってん 敗れて悔いなし。
幸せな選手人生でした。
(拍手)
よくやった 韋駄天!ありがとうございます。
え~ 明治45年 ストックホルム途中棄権。
大正9年 アントワープ 16位!
よっ!(拍手)
大正13年 パリ 棄権!
ミスターマラソン 金栗四三選手にいま一度 大きな拍手を!
(拍手)
おい… 何だ? 今の おい!
大きな声で読み上げた割には大した記録じゃないよ。
(河野)うるさい! 黙って聞け!
ありがとうございました!(拍手)いい いい…。
(選手たち)ありがとうございました!(拍手)
(野口)続いて 水泳。は~い! はい 待ってました! 静粛に!
え~ 時間の都合で結果のみとする。(水泳選手たち)はあ!?
何だと!? おい 体協 もう我慢ならん。
おい…。田畑! 貴様 いい加減にせんか!
体協の陸上びいきは目に余るものがある。
出場選手8名? 多すぎるじゃんね!
しかも 何? 長距離走は全員棄権?おい!
何? 何してたの?のんきにパリ観光かね?
水泳だって6人行ってるだろう!
結果を出したじゃんね!ここにいる高石は5位。
野田はリレーで4位。 どうだ?
もっと行ってりゃもっと入賞できた!
テニスだって勝てたぞ!レスリングも!
こっちだって一生懸命やってんだよ!
全て私の責任です! 全て私の責任です!
野口君!
世論の反対を押し切って参加したパリの惨敗弁解の余地なし!
責任を持って私 野口は 体協主事を辞任します!
あんたじゃ 話にならん。 トップを出せ!
嘉納治五郎名誉会長の引責辞任を求める!
彼は何者だね?(岸)田畑とかいう新聞記者らしいです。
あれがトップにおる限り日本はあれだ 何だ… 勝てん!
何だと貴様!
老害め。 なにが「逆らわずして勝つ」だ。逆らってでも勝て バカ野郎め。
あっつ!(治五郎)ハハハハ!
彼は口が韋駄天だねえ。
そこ 何がおかしい! おい!
(どよめき)
<これは驚いた。 韋駄天は嘉納先生に だっこしてもらいましたが河童のまーちゃんは会ったその日に ぶん投げられた>
やい ジジイ! 嘉納治五郎に伝えろ。水泳は体協から独立する。
援助も受けん代わりに指図も受けんとな!
こちらが嘉納先生ばい こんバカもんが!
何? えっ…わ… 割と大きいんですね。
あっ…。
よかろう。 好きにしたまえ。
はい。
そういうことなんでよろしくお願いします!
まあ… え~ 落語に出てくる粗忽者の類いだと思えばまあ この主人公… 許せなくもない…。
まあ 八つぁん 熊さん…。
カクさん 出来たぞ!早いんだよな~ 出てくるのが。
まだ途中!
見ろ。 看板と当座の資金だ。(一同)お~!
今日から ここが水連の本部だから。
(野田一雄)水連って何の略ですか?うん? あっ あれだよ ほら…水泳の… 水泳だろ? …で 何?
何 何…?(高石勝男)何?連盟!
(松澤一鶴)大日本水上競技連盟だね!
違う! そう! …書こうか?
あっ まーちゃん…。
<松澤一鶴 通称 カクさん。日本泳法の達人でここ 東京帝大水泳部のコーチ>
連盟…。名前なんていいんだよ!
嘉納治五郎に ぶん投げられた男だぞ俺は。 おかげで箔が付いた。
水連は立派な競技団体だ。
これからは選手選考も自分たちでやる。(3人)お~!
<新聞記者の仕事もそっちのけで水連に入り浸るまーちゃん>
ロン!何!? 何… えっ?
(高石)リューファー カン トンホンイーソー。あっ…。
<しかし 夏以外は 選手も皆もんもんとした日々を過ごします>
野田 この動き 平泳ぎの訓練になるぞ。
そうですか…。
ツモは クロール…。
そんなことしてる場合か? くそ。次の大会 どこだっけ?
あれ あれだ あの…。アムステルダム。
違う! そう! だから プール!
一刻も早く 温水プールをあれせんと勝っちゃん あれだぞ世界に勝てんぞ 勝っちゃん…。
200点お釣り早くして。投げるから。早く。
(松澤)アメリカは大学に温水プールがあるそうですな。
(野田)いいですよね~。冬は ハワイに遠征に行くんでしょ?
どうした? 溝に挟まっちゃった?(高石)何だ? これ。
何か ある…。何?
収納ですかね?えっ? ホホッ…。
開けてみるか。(松澤)やめて下さい そんな!
大学の施設ですよ! ちょっと…。野田 野田… ほら いけ。
いくぞ せ~の! よいしょ!
臭っ!おお…。
はしごがありますよ。うん?はしごがある。
行け 野田。ちょっと 野田!気を付けろよ。
うわっ 臭っ!
クモの巣が…。
船だ…。えっ?船がありますよ!
えっ!?(野田)おお…。
船だ!おいおい…。
おい ちょっと… うわっ。
ちょっと まーちゃん?まーちゃん ちょっと…。
<そこは帝国大学工学部の船舶実験用の水槽で当時の学生はタンクと呼んでいたようです>
見つけちゃったな カクさん。えっ?
何mあるかな?えっ まーちゃん まさか…。
20mは取れるじゃんね~。えっ!? ちょっと まーちゃん…。臭っ! ああっ! くっさいな~。
(野口)「陸連發足 體協から獨立」。
水泳は水連が 陸上は陸連が選手を選考するとなると我が体協の存在意義って何なんでしょうね?
統括団体ってことになるだろうね。
統括団体…。
<当時 体協は銀座にある岸会長の弁護士事務所に間借りしておりました>
卓球台でも置きましょうか?何だね? 唐突に。
(野口)あまりにも人が来ないんで。
出てこんか。もうすぐ 細田が帰ってきます。あいつが新しい情報を持ってこない限りは…。
(細田)特ダネ 特ダネ 特ダネ…!
待て。
(細田)普通選挙法の原文を借… 借りてきました!
(どよめき)
12時までに戻す約束で借りてきたんです。
<普通選挙法の成立は当時の国民の一大関心事でした>
よし とにかく 手分けして書き写そう。(一同)はい!
おい 政治部 号外出すぞ。
<法案の中身をどこよりも早くスクープしようと新聞各社は しのぎを削ったのです>
(河野)書きました!
か… 書きました!
おい… おいおいこの第五条書いたの 誰だ?
田畑です。だろうな。 1文字目から読めん。
えっ?(緒方)これ 何だ?
「文」ですか? いやいや…「又」? いや…「夫」か? いや 書き直します。
いや 書かんでいい。おい これ 誰か代わってやれ。
田畑が… 田畑が書きます。
書くな! 書くな。 頼むから書かんでくれ。河野が!
今日は時間がない。 すまん。
(緒方)田畑!はい。
<この世紀のスクープに まーちゃんは一切 関係なかったのです>
号外だ!
<仕事は大してできないが どういうわけか上司にかわいがられた河童のまーちゃん>
あっ!(緒方)おいおい おいおい。すいません。
すいません。(緒方)すいません ママ。
頼むぞ 田畑。
新聞の未来は君たち若者に懸かってるんだからな。
…って言ってる編集局長が何で こんな場末の どぶ臭え店でウイスキーなめてんですか?ママも 何か しょっぺえ女だし。
(緒方)おい…。こういうところを変えてかないと若者は ついてきませんよ。(マリー)緒方さんは ここがいいの。
金欠ですか? おごりましょうか?
(ラジオのチャイム)(ラジオ)「午後2時 ご容体」。
(マリー)特ダネでしょ? 験 担いでんのよね。えっ?
(ラジオ)「お脈拍144…」。
緒方さんはね たまたま入ったこの店で三浦梧楼先生にお会いしたのよ。
えっ 三浦…?うん。
誰ですか?枢密院の大物よ!
あそこの席でね。
(三浦梧楼)外交の要は満州だよ 君。
問題は その舵を誰が取るのかということではないでしょうか?
ここだけの話だがね…。
(緒方)若造だったが 臆することなく日本の将来を論じ合ったよ。
翌年 明治天皇の崩御に際して新聞各社は 次の元号が何に決まるのか取材合戦を始めた。私は 一か八かね三浦先生の自宅で張ってたんだ。すると 先生が車に乗せてくれてね。
(三浦)「明治」の次は「大正」だよ。
えっ… どうして私に?
君は日本橋のバーで話したことを一切 新聞に書かなかった。だから 見込みがあると思ったからさ。
はい 号外 見てって~。改元です。 改元の号外で~す。
♪~
あっ!ハハハ…。
えっ… ワオ。
こいつはいいことを聞いたぞってんでまーちゃん 年の暮れに一か八か 日本橋の どぶ臭えバーローズに行ってみた。
「こんばんは こんばんは!」。
はい こんばんは~。
おにいさん もう閉店だよ。
いや そこをなんとかお願いしますよ!私は三浦って人に用があるんです。
その方とおしゃべりをしてね… いや記事には書かないよ。 そうすると…。
「お前さん なかなか見込みがあるね」ってんで…。
「『大正』の次は」…。「何とかだよ」って。
こっそり教えてくれるって寸法だ!
やい 出てこい 三浦!
何言ってんの。 三浦先生はとっくに鬼籍に入られたのよ。
お亡くなりになったの。
えっ? じゃあ 「大正」の次の元号は誰に聞けば…?
そこに書いてあるよ。どれ? どれ?
さっき 日日新報の記者が電話 借りに来てさ新しい元号が… まあ どうとか言いながらそこのコースターに走り書きしてったわ。
♪~
「光文」!?
よっし もらった!
「『大正』の次は『光文』だ」ってんで駆け出そうとした まーちゃんの腕をママが ぐいっとつかんで…。
手相 見てあげる。結構です。 急いでます。
いいから座って。私の占い すっごく当たるんだから。
えっ?ほら。ねえ ママ 急いでよ。 ねっ?
よそに抜かれちゃうから 早くして。あら?
何?あらあら…。
どうした?
えっ?
まあ…。何?
とっても… いい手相。
うそ言っちゃいけない。泣いてるじゃない。
行きなよ 早く! 特ダネなんだろ!?
いやいや… 気になるよ! 言ってくれよ!泣いてるじゃない。 ねえ。
出世は約束されてる。多少の不幸は覚悟するよ。
何?
30で死ぬと出ています。
あっ…。
何で知ってんの?えっ? 何を?
待て待て 待て待て… 待って。
えっ 30? 何で?
田畑家が 代々 男が早死にする家系だって言った? 言ってないよ~!
遺伝じゃ しょうがないよ。
私の責任は軽くなったよ~。
じいさんが 55 親父が 43で 俺 30!?
(ラジオ)「ただいま宮内省から発表がありました。放送部長から申し上げます」。
「天皇陛下 今12月25日 午前1時25分葉山御用邸において 崩御あらせらる。陛下は 6,000万国民が…」。
30… 30って…。
あと2年しかないじゃんね~。
♪~
あ~ 痛い…。(うら)じゃ 泳ぎは?
ううん やめさせにゃあいかんら!
♪~
どうなってんだよ…。わっ! 痛っ…。
えっ? 何 何? どうしたの?
号外! 日日が号外出すらしい。
あっ! あっ… しまった。(緒方)おい おい おい政府筋からの情報 まだか?こんだけそろって 誰もつかまえられんのか。すいません!
おい 政治部。号外どころか朝刊も間に合わんぞ これ。
あの…。何だ? お前 何か知ってんのか?
あれ?
あれ? いや… あっ…。
(志ん生)「え~っと 何だっけな?え~っと… 漢字が2つだよな。うん 2つ。 『余命』余命 違うな これな。 『寿命』…。あのババアが 30で死ぬとか変なこと言うから おめえこっちは おめえ 忘れちゃったよ。落ち着け。落ち着いて 漢字2つ。『浜松』… あっ 土地になっちゃったな。何かねえかな? え~っと…。あっ 『光』って字がいた。 こう こう…こうもん… 肛門元年」。
ハハッ。「何だ 変だな これ」。
おい どうした? 田畑。何か知ってるなら 早く言え。
「一か八か 言ってみるか」。
(せきばらい)こう…。
「光文」です! 「光る文」と書いて「光文」!
危ねえ…。日日の号外です。新橋の駅前に売ってました。
「光文」か… 朝刊 今なら間に合うぞ。刷れ 刷れ 刷れ 刷れ!
おい 待て待て 待て待て 待て。これ 間違いだったら どうするんだよ。
出遅れたら いい笑いものです。(緒方)いや~ どのみち 1着は逃した。
うちは正確さで勝負する。
裏が取れるまで元号に関する記事は出さん。
はい。
(志ん生)<緒方の この判断は 吉と出ました。新元号は「昭和」>
昭和? 昭和…。
<「光文」は誤報だったんです。この元号騒動にもまーちゃんは一切関係ありませんでした>
(ラジオ)「しかし あれですな お殿様は何で…」。
<え~ 昭和を迎え 震災復興は進んでも私ら庶民の暮らしは一向によくなりません>
「火焔太鼓と申して世に2つというような名器…」。
(おりん)あら 落語?
「儲かったな」。「へい。 あ~ ありがとざんした」。
おとうちゃ~んラジオで落語しゃべってるよ。
(孝蔵)うるっせえな 聞こえてるよ!
「えっ? うちのカカア 一分で…」。
おとうちゃん どうやったらラジオに出られるんだろうね?
「ここを言うんだよ」。
「俺だ。 今 帰ってきた。あの太鼓な 300両300両で売れたんだ あの太鼓がよ!」。
「ふ~ん。 本当に売れたの?じゃあ ここに出せ。 見せろ。 …やい!」。
「脅かすな この野郎。この金 見やがって てめえ座り小便して バカになってひでえ目に遭わせんぞ コンチクショー。いいか? これが小判で 50両だ」。
「まあ あんた!」。あれ? あんた 朝太か?
「これで100両だ 100両 150両だ」。
ハハッ 何だ 志ん馬ってえから気付かなかった。
へえ~ 真打になったの?よく なれたもんだねえ。
「火焔太鼓」なんかやっちゃって。「200両だ!」。
おい… 俺だよ 俺。何だい!?
勝鬨亭のお茶子のまーちゃん。河童のまーちゃん。
何言ってんだ この野郎。座って下さい。
「これで 250両 残りの50両で 300両だ!」。
(政治 孝蔵)「水ちょうだ~い!」。(笑い声)
「ざまあ見やがれ この野郎!」。「俺もね そこで水飲んだの」。
あっ! 300両で思い出した。
あんた… あんた 財布盗ったろ 弁天橋で。ええ?
東京に帰れるな。
おい 返せ バカ野郎め!お客さん 座って!
「当たり前だ この野郎。半鐘買って たたいちゃわ」。
「半鐘はいけないよ おじゃんになるから」。
おっ!(拍手)
って おじゃんにされて たまるかよ!財布泥棒!
ちょっと お客さん!待て 財布泥棒! 財布泥棒!
待て! 朝太!座って!
待て 財布泥棒!(笑い声)
あっ!(可児)2-2。
卓球台置いたら 可児が来たよ。
…で 協賛金 集まりました?
融資の件で 貴族院議員の嘉納が来たと言えば分かる!
嘉納先生 アムスは選手60人連れていくって言ってましたよ。えっ!?
オリンピックの件ならもうお話しすることはないと…。
オリンピックの件でなければ誰が こんなとこ来るか!
(孝蔵)<1年後に迫ったアムステルダムオリンピックの招待状が届いたのです>
おい みんな… みんな~! おい…。
IOCから招待状が届い…。
どうした? 何やってんの?
・急げよ。えっ?
(水が流れる音)
何? 何これ…。
な… 何~?まーちゃん!
何?
どうしたの これ!
どうしたも こうしたもまーちゃんが造れって言うから。
言った? 言ってないよ~!
遅いですよもう出来ちゃったんだから~!
出来ちゃったんだから!
かっこいい! 勝っちゃん! アハハハ!
いけいけ~ みんな! 勝っちゃん いけ!いけいけ 勝っちゃん! 泳げ!
お~い!冷たっ! えっ? ちょっと待って。
冷たっ。
カクさん これ 夏以外は どうするんだ?
よく見て下さいよ まーちゃん。
医学部病棟のスチーム引き込んでますから冬は温水プール… 熱い! なります。
つまり 一年中 練習できますよ!
アハハハハ! おっ!
(歓声)
カクさん!はい。
君って男は…。
でかした!アハハ!
ありがとう!
イエ~イ!
よ~し お前たち全員オリンピックに連れてくぞ~!
(歓声)
泳げ 泳げ~!
かけ かけ かけ! かけ!
♪~
よいしょ~ よいしょ~ よいしょ~!
あ~ いたいた いたいた。 岸さん 岸さん水連のエントリー 12人でお願いします。
ねえ 岸さん 岸さん。
分かった 分かった。 ちょっと待て。
どうしても 12…。どうしても 12人でお願いします!
ちょっと待て!水連が12人なら陸連は15人!
これは譲れん!何? だったら水連は18 いや 20人だ!
もう~ 勝手にやってくれ。
勝手にやるために陸連を作ったんだ!そうですよ!
だったら金も 自分で集めてきたらどうだ。 えっ?
渡航費 国から ぶんどってきたら20人でも30人でも連れていくさ。
(野口)そうだ!
上等だ バカ野郎め!
貴様…!
おい 河野 どうした?あっ 出てます。 陸連に用事で。
℡
田畑は?はい 政治部。水連です。
緒方さん?あいつら…。
運動部にすっ飛ばすぞ もう。
緒方さん お電話。
はい もしもし。
あんたんとこの若い者が来とるんだがね…。
ハハ… せわしないのですか?暑苦しいのですか?
熱っ! あっつ… あっつ…。
せわしない。
あ~ じゃあ 田畑ですね。
℡かわいがってあげて下さい。失礼ですけど どちら様で?
高橋是清だ。
えっ?あっ… いや これはこれは 是清先生。
℡おっしゃるとおりつまみ出して下さい。
分かった。
(受話器を置く音)
(ため息)
これは極論だがね初心にかえったら どうだろう?
初心に?
それは個人負担という意味ですか?
うん。 金栗君や三島君のように誰の援助も受けずに自腹で参加した方がかえって身軽でいいんじゃないか?
ハハッ お話になりませんな。
私は賛成です。初心にかえる 大いに結構!
ちょっと あんた 黙っててくれ!
明治 大正 昭和… 時代をまたいで僕らは いつも金がない! ハハハ。
毎度 おなじみの光景で結構ですな!
じゃあ いっそ やめるか?えっ?
オリンピック出るの やめよう。 なっ?どうせ勝てない。
勝てなきゃ 文句言われんのは体協だ。
もう やっとれん!
(ドアをたたく音)
震災不況の折 オリンピックなどと浮かれている場合ではないだと!?
冗談じゃない!浮かれたことなど 一度もないよ!
常に真剣 必死だよ。ケツに火をともすような思いで…。
ケツじゃない! 爪です。
もう火だるまだよ! もう やめたやめた!
なにが 平和の祭典だ。(ドアをたたく音)
・ごめんください!開いてるよ! 誰だ!?
「俺だ! 今 帰ってきた!ハァ… あの太鼓がよ 300両。300両で売れたんだ あの太鼓がよ」。
「ふ~ん。 本当に売れたの? …やい!」。
「脅かすな この野郎。この金 見やがって てめえ座り小便して バカになってひでえ目に遭わしてやがる この野郎」。
この金 見て座り小便して バカになんなよ。
何を言ってるんだ?
国から 水連に補助金が出たんですよ。何?
ただ ちょっと頂き過ぎちゃったんでお裾分けに来ました。
フッ そんなバカな… ハハハハ。
はい。(岸)うわっ!
はい。おっ…。
水連と陸連で 6 4でどうです?
「いいかい?50両ずつ見せてやるからな。これが小判で 50両だ!」。
はい 5,000円。ああ…。
はい 1万円。
1万5,000。
2万。み み み… 水くれ。
俺も そこで水飲んだ フフッ。水ちょうだ~い!
「水ちょうだ~い!」。
「ざまあ見やがれ コンチクショー。俺も そこで水飲んだんだ」。
「まあ お前さん 何だね…」。2万5,000。
「太鼓 儲かったね」。3万円。
「当たり前だ。 太鼓 儲かった」。4万円!
「これから お前さん 何だよ…」。5万円!
「音の出るもんに限るよ」。「当たり前だい」。
半鐘は いけないよ。おじゃんになっちゃいますからね。
いや… 早いって!
はい! 締めて6万円。オリンピックの特別予算です。
貴様… こんな大金 どこで?
そんなの話してる暇ないですよ。私 30で死ぬんだから。
答えろ 豆タンク!
若者のために使うって言ったらくれました。
誰が?
高橋是清。
♪~
盛り上がってきたぞ~!アムステルダムオリンピック!
<水泳 大活躍! そして日本初の女子オリンピック選手 人見絹枝>
(絹枝)私 このままじゃ日本に帰れません。
(トクヨ)変えるべきよ 女子スポーツの未来を。
<走るために生まれてきた女の一生>
田畑が幼少期を過ごした浜松市。
しゃべりの韋駄天を知る人がいました。
田畑の通った中学校で毎年行われていた過酷な伝統行事6時間かけて泳ぐ 浜名湖大遠泳です。
この浜名湖で鍛えた名選手たちが続々と世界へと羽ばたいていきました。
浜松で行われる大会に出場した松田丈志さん。
とびうお杯っていう小学生の全国大会があるんですね。ジュニアスイマーの登竜門の大会になってるので浜松っていうのは 水泳の盛んな場所っていう意識は 今でもありますけどね。日本の水泳界の先輩たちを振り返ると何か すごく優秀な人たちがいっぱいいたんだなってつくづく思うんです。古橋名誉会長… その もう一個先に田畑さんたちの時代があるんで何か すごい歴史がつながってあるんだなって思いましたね。
しゃべりの韋駄天が日本水泳界の道を切り開いていきます。