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F35墜落事故は本当にパイロットが原因なのか

105機の追加購入に1兆2000億円。トランプとロッキードへの遠慮が見え隠れ

佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長

拡大トランプ米大統領(右)との首脳会談で、握手を交わす安倍晋三首相=2019年4月26日、ワシントンのホワイトハウス

ロッキードからの高い買い物

 F35は民主党の野田政権時代に42機購入することを決定したが、安倍政権はさらに105機を買い増し、合計147機を導入することにしている。この閣議了解が2018年12月。これにより航空自衛隊の現有F15戦闘機のうち99機をF35と入れ替える。

 ところが、今年3月、米国防総省は2020年度から24年度までの間に、日本の航空自衛隊が退役を決めたF15を80機購入すると発表した。日本にはF35を売り込んでおきながら自らは以前のF15購入を決めるというとんでもない動きだ。

 F35は米空軍、海軍、海兵隊合わせて2000機以上配備する予定なので、F15の80機購入は問題にするほどの数ではないと見る見方もあるが、専門家は「予定は単なる予定。これからF15に切り替えていく動きが出てくるのではないか。日本への売り込みは、ロッキードの製造ラインを動かしていくための方便ではないか」と皮肉に見ている。

 F35については米国でも評判は芳しくないようだ。F16戦闘機を設計したピエール・スプレイ氏は、F35に関するインタビューを受けて「生まれつきどうしようもない飛行機だ、構想そのものがバカなんだ」と取り付く島もない。

――なら、なぜこんなもの作ったんですか?
金じゃよ。金をつかうこと、それがこの飛行機のミッションだ。米議会からロッキードに金を送る。それがこの飛行機の真のミッションなのさ。

 ロッキードと言えば、日本ではすぐに1976年のロッキード事件が思い出される。表向きは民間航空機L1011トライスターが問題になったが、実は軍需用の対潜哨戒機P3Cが、日本に対するロッキードの売り込みの本命だった。P3CからF35へ、ロッキードからの高い買い物は相変わらず続いている。


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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

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