F35墜落事故は本当にパイロットが原因なのか
105機の追加購入に1兆2000億円。トランプとロッキードへの遠慮が見え隠れ
佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長

F35A=2019年4月10日、航空自衛隊三沢基地 「ある特定の操作法」
2018年6月、米国会計検査院(GAO)はF35に966件もの未解決の欠陥があり、そのうち111件が「安全性や他の重要な性能を危険にさらしうる欠陥」と位置づけている。
これだけ多くの欠陥がGAOによって指摘されていることも驚きだが、さらにこの6月12日、米国のオンライン軍事専門誌ディフェンス・ニュースが内部文書を入手し、「13の最も重大な欠陥」があると報じた。超音速飛行は短時間だけ可能、制限時間を超えるとステルス機能を失い、機体の損傷などもあることなどが指摘されているが、その6番目に掲げられた項目は今回の自衛隊事故を考える上で座視できない欠陥だろう。直訳するとこうなる。
ある特定の操縦法の後、F35BやF35Cのパイロットは常に完全に機体の上下左右のコントロールをできるわけではない
ここでなぜF35Aが含まれていないのかは不明だが、主語のパイロット以下の原文を示すとこうだ。
Pilots are not always able to completely control the aircraft’s pitch,roll and yaw.
pitch,roll and yaw というのは簡単に言えば上下左右のこと。飛行機に即して言えば、進行方向に対してまっすぐな直線がX軸としてのroll、水平方向がY軸としてのpitch、垂直方向がZ軸としてのyawだ。
つまり、ある特定の操縦法の後ではパイロットは、進行方向、水平方向、垂直方向すべての機体のコントロールに支障が生じてしまうと言っているのだ。パイロットにとってこれほど大変なことはないだろう。
「ある特定の操縦法」とは何だろうか。
一般的には戦闘機同士の対決、俗に言うドッグファイトのことを指すようだが、細見3等空佐が直前に訓練していたのは、まさに2機対2機に分かれての「対戦闘機戦闘訓練」(航空自衛隊発表)だった。しかも、その直後に左旋回して急降下している。