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福島の甲状腺検査は即刻中止すべきだ(上)

無症状の甲状腺がんを掘り起こす「検査の害」

菊池誠

早期発見・早期治療は有効なのか

 思い出してみると、2011年に始まった「先行検査」は被曝影響と無関係な甲状腺がんを拾い上げることを目的のひとつとしていた。後知恵で言えば、これも相当におかしな話である。無症状のがんを発見すれば受診者にどんな利益があると想定されていたのだろうか。この時点ですでに被曝影響の有無を知る目的で検査が始められたのは明らかだったのではないだろうか。ヘルシンキ宣言の精神に則ればそもそもこの検査を始めてはならなかったのだと思う。しかし、百歩譲って、受診者に利益があると信じて始められた検査だったとしよう。では、甲状腺検査はいつなら見直せたのか。

 2013年2月の県民健康調査検討委員会、まだ一次検査すら13万人強しか行われていない時点で3人の甲状腺がん確定が報告(注10)されている。時期から考えて、これらのがんが被曝と無関係なのは明かだった。この時点で「異常に多い」「検査によってなにかまずいことが起きている」と判断できたのではないだろうか。少なくとも一時中止を決めるのが筋だったはずだ。それ以降、検討委員会も実施主体である福島県立医大もがんの発見数が増えていくのをただ座視していたように見える。これは不作為と言いきって構わないだろう。

 いや、早期発見につながるのだからいいじゃないかと考える向きも少なくないだろう。ところが、意外に思われるかもしれないが、甲状腺がんには早期発見・早期治療が有効という証拠はない。(続)

※「」は29日午後5時に「公開」します。

 


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