メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

無料

福島の甲状腺検査は即刻中止すべきだ(上)

無症状の甲状腺がんを掘り起こす「検査の害」

菊池誠

甲状腺検査は受診者には利益がない

拡大甲状腺の超音波画像診断装置
 もちろん、被曝影響がまったくゼロであることは証明できないが、あるとしてもそれ以外の甲状腺がんに隠れてしまう程度だと言い切ってかまわない。これらの知見をもとに検討委員会は被曝影響が見られないと結論づけている。すると、「無症状者を高精度エコーで検査したからたくさんのがんが発見された」が論理的な帰結でなくてはならない。つまり、検討委員会は、多くのがんが発見されたのは検査のせいだと事実上認めているのである。

 それにもかかわらず、上述した甲状腺検査評価部会後の記者会見の席で、鈴木元部会長は、「放射線の影響を受けやすい事故当時1歳から5歳だった子どもたちの中で甲状腺がんが増えていない、と結果が出るまでは検査をやめるという答えは出せないと個人的には考えている。今後も検討を続ける必要がある」と述べた(引用はNHKニュースのサイト〈注7〉より)。つまり、放射線影響の有無を知るためにさらに検査を続けるべきだと明言したわけだが、これは恐ろしい発言ではないだろうか。

 ここで、「人間を対象とする医学研究の倫理的原則」を定めたヘルシンキ宣言(注8)に目を通してみよう。その第8項には「医学研究の主な目的は新しい知識を得ることであるが、この目標は個々の被験者の権利および利益に優先することがあってはならない。」(日本医師会訳)とある。

 甲状腺検査は医学「研究」なのか、という疑問はあるだろう。たしかに福島県のウェブサイト(注9)には「福島県では、チェルノブイリに比べて放射性ヨウ素の被ばく線量が低く、放射線の影響は考えにくいとされていますが、子どもたちの甲状腺の状態を把握し、健康を長期に見守ることを目的に甲状腺検査を実施しています。」と書かれている。

 これを文字通りに受け取るなら、この甲状腺検査は被曝影響の有無を調べるためのものではなかったはずである。しかし、先に引用した鈴木元氏の発言からもわかるように、現実には被曝影響の有無を知ることが目的化してしまっていると言わざるを得ない。検討委員会で受診率の低下が問題視されるのも、それを物語っている。ヘルシンキ宣言の精神に則るなら、そのような検査は許されない。なにしろ甲状腺検査には受診者個人にとっての利益がなく、あとで説明する過剰診断に代表される害があるだけなのだから。


関連記事