G20大阪サミット議長国記者会見
【安倍総理冒頭発言】
大阪の地に世界中からリーダーをお迎えし、我が国が初めて議長国を務めるG20(金融・世界経済に関する首脳会合)サミットを開催できたことを大変うれしく思います。
世界は結束できる、そう信じて、精一杯、議長役を務めてまいりました。様々な課題について一気に解決策を見いだすことは難しい。それでも、本年のサミットは多くの分野でG20諸国の強い意思を世界に発信することができたと思っています。どの国にとってもウィン・ウィン、そして未来に向けて持続可能な成長軌道をつくる。その思いはその一点でありました。私の思いはその一点でありました。
今、世界経済には、貿易をめぐる緊張から、依然として下振れのリスクがあります。こうした状況に注意しながら、更なる行動をとり、G20は力強い経済成長をけん引していく決意で一致しました。
グローバル化が進む中で、急速な変化への不安や不満が、国と国の間に対立をも生み出しています。戦後の自由貿易体制の揺らぎへの懸念に対し、私たちに必要なことは、これからの世界経済を導く原則をしっかりと打ち立てることであります。自由、公正、無差別、開かれた市場、公平な競争条件、こうした自由貿易の基本的原則を、今回のG20では、明確に確認することができました。
他方で、WTO(世界貿易機関)の改革は避けられません。グローバル化、デジタル化といった近年の動きに、WTOは必ずしも対応できていない現実があります。ビッグデータ、AI、第4次産業革命が急速に進む時代にあって、付加価値の源泉であるデータについて、新たなルールづくりが必要であり、今回のサミットの重要なテーマでありました。
今回、トランプ大統領、習近平国家主席、ユンカー欧州委員長を始め、多くの首脳たちと共に、データ・フリー・フロー・ウィズ・トラストの考え方の下に、新しいルールづくりを目指す、大阪トラックの開始を宣言いたしました。プライバシーやセキュリティを保護しながら、国境を越えたデータの自由な流通を確保するための国際的なルールづくりを、スピード感をもって進めてまいります。これは、WTO改革の流れにも新風を吹き込むに違いありません。
世界経済の8割を占めるG20は、持続的な成長のために、大きな責任を有しています。地球環境問題は一部の国々の取組だけでは対応することが困難な課題であり、世界が共に取り組んでいかなければなりません。一昨年のハンブルク、昨年のブエノスアイレスでのG20サミットにおける努力の上に、環境と成長の好循環の実現に向けて世界が共に行動していくことが重要である。今回、こうした認識でG20として一致できた意義は大きいと考えています。
海洋プラスチックごみも、一部の国だけでは解決できない課題です。そうした中で、G20が結束して、新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを共有できたことは、この問題の解決に向けた大きな一歩であると考えています。その実現に向けた具体的実施の枠組みでも合意しました。
我が国は、これまでの技術や経験をフル活用し、途上国の廃棄物管理や人材育成支援を行い、世界の取組に日本らしい貢献をしてまいります。国際社会の様々な課題に首脳たちが直接話し合うことで解決策を見いだすことができる、国と国の間の問題もその解決に向けて歩みを進めていくことができる。
このサミットの機会をいかして、私も20名を超えるリーダーと会談を行います。本日もこの後、ロシアのプーチン大統領と首脳会談を行う予定です。EU(欧州連合)との首脳会談では、東北の安全な農産物、水産物について、規制緩和への大きな動きがありました。被災地の復興に協力してくださる多くの国々に、改めて感謝申し上げます。
世界の大きな関心である米中貿易摩擦について、一昨日、習近平国家主席と、昨日はトランプ大統領とそれぞれ話をしました。私からは、世界第1位、第2位の経済大国が建設的な議論を通じて、安定した経済関係を構築していくことが極めて重要であると申し上げました。こうした貿易摩擦や地域情勢について、このG20の機会をいかして、首脳同士が直接会って、胸襟を開いて話すことで歩み寄っていける。日本としてできる限りの役割を果たしていく考えです。
グローバル化は、経済の成長を後押しする一方、そこから生じる格差の拡大にもG20はしっかりと向き合い、成長の果実を社会の隅々にまで浸透させなければなりません。教育の充実は、持続可能な経済成長への最大の鍵です。全ての女の子が、少なくとも12年間の質の高い教育にアクセスできる、そうした世界を目指していく。その決意をG20の首脳たちと確認しました。日本はこれからも途上国における女子教育の拡大に役割を果たしていく考えです。2020年までの3年間で少なくとも400万人に上る途上国の女性たちに、質の高い教育、人材教育の機会を提供していきます。
世界では対立ばかりが強調されがちな中にあって、共通点や一致点を見いだしていく。日本ならではのアプローチで、この大阪サミットでは、世界の様々な課題に対し、G20が一致団結して力強いメッセージを出す。そして、具体的な行動へと移していく大きなきっかけにすることができました。
最後となりましたが、今回のサミット開催に当たり多大な御協力を頂きました御地元の皆様、人情の町・大阪らしい温かいおもてなしで迎えていただいたことを、心から感謝申し上げます。
私からは以上であります。