漆黒の英雄譚   作:焼きプリンにキャラメル水
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※注意※

まず初めにこの作品を読んで頂き感謝致します。

『大幅修正・追加を終了するまで文章を全体的に変更しない』と言っていました。まだ大幅修正などは終わってません。なので文章は変更されていません。
まだ終わってなくてすみません。

ですがどうしても書きたい内容がありましたので本日更新させて頂きました。
ちなみに書きたい内容はまだ少し先の話です。
どうか今後ともどうかよろしくお願いします。

焼きプリンにキャラメル水

※※※※


モモンとアインズ・ウール・ゴウン

エ・ランテルにある一つの家。『漆黒』のホームとなっている場所がある。

少し前まではエ・ランテルで一番の薬師であるリイジー=バレアレが所有し切り盛りしていた店だった。だが『墓地騒動』の時に彼女の孫であるンフィーレアがこれに巻き込まれてしまった際、リイジーが『漆黒』にンフィーレアの救助を依頼。彼らは『墓地騒動』の黒幕たちを倒し、ンフィーレアを救助することに成功した。その際に報酬としてバレアレ家が差し出したのがこの家だ。現在は最低限の模様替えだけをして生活している。

 

 

 

そこの一階の広間にテーブルを挟んで二人の男女が椅子に座っていた。アダマンタイト級冒険者チーム『漆黒』の二人だ。

 

一人は黒髪黒目の男だった。容姿は伝説の戦いを経たかの如く落ち着いており、そこから滲み出る雰囲気は歴戦の戦士を連想させる。鍛え抜かれた肉体は引き締まっており、その筋肉は骨の如く硬質化していた。だが肉体に反して市民たちからは親しみやすく尚且つ優しい顔立ちをしている。女同様に黒髪黒目であるが、この男の場合は誰もに安心を与える慈悲深さに満ちていた。それらの容姿や雰囲気は全てを包み込む夜空の如く温かく包み込む印象を与える。彼が『漆黒の英雄』と呼ばれるに相応しい容姿をしているのは間違いない。

 

もう一人は女性であった。十代後半から二十代ぐらいの年齢で、切れ味鋭い剣の刃を連想させる切れ長の瞳は黒曜石のような輝きを放ち、豊かかつ濡れたような漆黒の髪は後ろ手(現代で言うポニーテール)にしている。きめ細かい色白の肌は天からの贈り物である雪を連想させる。淑女と呼ぶに相応しい雰囲気を持つ。エ・ランテル含む周辺諸国では見ない容姿である黒髪黒目はまるで夜空の如く、彼女のその美貌はまるで美の神が造形したかの如く整い、夜空に浮かぶ月の如く輝いていた。

 

男が『夜空』であるなら、女は『月』である。

 

この二人の正体はモモンとナーベである。

 

 

 

 

 

「・・・・ということなんだ。どう思う?ナーベ」

 

モモンは普段とは違い全身鎧をまだ着用していない。今は食事の為にテーブルに置かれたパンを片手に持っている。決して小さくはないパンだが、戦士である彼が持つとパンが小さく見えてしまう。

 

 

 

「・・・・モモンさんが預言書(エメラルドタブレット)の中に・・」

 

そう言ってナーベはテーブルに置かれたグラスに入った冷水を飲み干した。衝撃な内容に対して頭を目覚めさせる必要があったからだ。だが飲んでも身体に変化はない。どうやら睡魔はとっくに消失しており、今自分の身体に残るのは先程モモンが語った内容に対して受けた衝撃なのだろう。

 

 

 

「あぁ。信じられないかもしれないが・・・」

 

モモン自身も正直半信半疑だ。自分で体感したことにも関わらずどこか『夢の中』みたいな感じだ。だがナーベに『信じてくれ』とは言わない。それは誰よりもナーベを信頼しているし、誰よりも自分のことを信頼してくれているのはナーベだと理解しているからだ。

 

 

 

「信じますよ。ただ私の頭じゃ分からないことが多すぎますので・・」

 

預言書(エメラルドタブレット)に関してナーベはモモンと同等の知識しか持ち合わせていない。そのためその内容を理解するには過去に読んだことある書物から自分の知っている内容を思い出すことしか出来なかった。そして自身の頭の中にある情報とモモンの語った内容が繋がるようなものは何一つなかった。

 

 

 

「なぁ。ナーベ、やはりアインズ殿に聞くしかないと思うか?」

 

「・・間違いなく、アインズ殿に話すべきことですね。ただ・・・」

 

ナーベは次の内容を語るのを僅かに躊躇った。理由はモモンが今さっきの聞き方をした理由と同じだ。

 

「あぁ。今や彼は魔導国を建国し異国の王だ。対して私たちは王国の・・・エ・ランテルのアダマンタイト級冒険者だ。そう簡単に会いに行ってもいいものだろうか?」

 

モモンの考えは至極全うかつ最もな正論である。

何故なら魔導国の王になったアインズ、リ・エスティーゼ王国という一国の街エ・ランテルに在住するアダマンタイト級冒険者のモモン、お互いの立場は今までとは違い責任が大きすぎる。

一国の王となったアインズは言うまでもない。それに対してモモンは今やエ・ランテルにおいて最高位冒険者であるアダマンタイト級冒険者である。現在モモンたちを除くとエ・ランテルの最高位はミスリル級である。このこともあり責任ある立場になった(後にモモンは『責任ある立場になってしまった』と語る)。更にモモンとナーベにとって因縁の敵である吸血鬼ホニョペニョコが起こしたことも大きい。あの一件でモモンはこの街で一番強い者と認識されたのである。それゆえ街の人々はモモンがいるというだけで安心感を得られるほどであった。そんな状況の為、モモンはアインズに会いに行くのを躊躇ってていた。彼はアインズの都合だけでなく、エ・ランテルの人々の都合をも考えていた。それゆえ彼は助けを求める意味でナーベに問いかけた。

 

「この件に関しては問題ないかと。ただ一国の王に会いに行ったと知られればあまりいい思いはされないかもしれませんね」

 

ナーベはモモンの考えを肯定する。誰よりも優しいと知っているナーベだからこそ躊躇うことなく肯定した。その上で自分の考えを述べたのだ。ハッキリ明言はしていないがナーベはモモンに『バレなければ大丈夫』と伝えたのだ。

 

「・・そうなると隠れて行くしかないか・・」

 

「まぁ・・そうなるでしょう。でしたらどうしますか?<伝言(メッセージ)>を使って会いに行くことをお伝えしますか?」

 

「あぁ。頼む」

 

ナーベはモモンからの答えを聞くと右のこめかみに指を当てて魔法を唱えた。

 

「分かりました。<伝言(メッセージ)>」

 

 

 

 

 

<ナーベです。アインズ殿。お忙しい中失礼します。今お時間は大丈夫でしょうか?>

 

<あぁ。構わないぞ。どうした?ナーベ>

 

 

<実は預言書(エメラルドタブレット)についてお尋ねしたいことがあるのですが、今からそちらにお伺いしてよろしいでしょうか?>

 

<今から30分程なら時間は取れるが・・今君たちはどこにいる?>

 

 

<エ・ランテルの自宅にいます>

 

<ふむ・・・仕方ない。私がそちらへ行こう>

 

 

<えっ!?しかしアインズ様は今や・・!?>

 

<友人に会いに行くのに立場など関係あるのか?少なくとも私には関係はないな>

 

 

<ですが、いいのですか!??一国の王であるアインズ殿の貴重な時間を>

 

<構わない。今から君たちがこちらへ来る時間に比べたら、私がそちらへ行く方が確実に早い。余計なすれ違いなどが起きる訳もなくお互い時間を無駄にせずに済む>

 

わざわざアインズ殿が『確実に早い』と言う程だ。何か別次元に早い移動手段を持っているのだろう。そうナーベは思った。

 

 

<・・感謝致します>

 

<気にするな。それでは一旦伝言(メッセージ)を切らせてもらうぞ。モモンにもよろしく言っておいてくれ>

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

・・・・

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

ナーベはモモンにアインズが来ることを伝えた。その後二人はアインズを迎える為に掃除用具を片手にしアインズを迎える準備をしようとした時であった。

 

家の中に大きな闇が広がった。その闇は全てを飲み込むかの如く口を開いていった。

 

 

 

「なっ!?」

 

モモンたちは警戒する。突如現れた未知なる闇に対して警戒したのだ。モモンはテーブルの横に立てかけていた二本の大剣を手に取ると構える。ナーベは闇に向かっていつでも攻撃魔法を詠唱できるように右手をかざした。

 

 

 

「急に来て驚かせてしまったそうだな」

 

そう言って現れたのはアインズであった。モモンとナーベはすぐに警戒を解いた。その様子を見ていたアインズは仮面などを装着していないので表情が変わっている様に思えた。

 

 

 

「えぇ。まさか転移魔法を使いこなせるなんて・・<転移(テレポーテーション)>ではないですよね?」

 

まさかアインズがそんなにすぐに来るとは思っていなかったのだ。だからモモンがそう尋ねたのも仕方ないといえる。

 

 

 

「あぁ。この魔法は転移系の魔法の最上位とでも言っておこう」

 

「そう・・ですか」(まぁ・・第11位階魔法を使いこなせる可能性が高いアインズ殿ならばそういった転移魔法を使いこなせてもおかしくはないだろう)

 

 

 

「いえ気になさらないで下さい。むしろこちらにいらしてくれて感謝致します。大したおもてなしは出来なくて申し訳ありません」

 

「それこそ気にするな。預言書(エメラルドタブレット)の件は私にとっても大事なことだ」

 

「えぇ・・では早速・・」モモンがそう言って話をしようとした時であった。

 

「少し待て!」そう言ってモモンを手で制したのはアインズであった。

 

「アインズ殿?どうかなされましたか?」

 

「念のために魔法による結界を張っておこう」そう言ってアインズは何やら魔法を唱えた。

 

「これでいい・・・では話を聞かせてくれ」

 

 

 

・・・・

 

 

・・・・

 

 

・・・・

 

 

 

「・・・成程・・預言書(エメラルドタブレット)の中に入った・・か」

 

「アインズ殿、このことについてどう思いますか?」

 

現在テーブルを挟んで座るはモモンとナーベ、それに向かう形で座るアインズだ。

 

「幾つか気になる単語がある。『ヴァルキュリア』と呼ばれる女。彼女の胸に突き刺さった『古びた槍』、何故か彼女が持っていた『預言書(エメラルドタブレット)』、それと『老練な声』の存在、『預言者』などだな」

 

「ヴァルキュリアは彼女の名前、そこまでは良いんですが他のことは全く分かりません」そう言ったのはナーベだ。

 

「・・まず最初の言っておくと『古びた槍』の正体は・・いや推測でものを言うべきではないな。なので『古びた槍』については現時点では何とも言えない。彼女が預言書(エメラルドタブレット)を持っていた理由も分からない。だが預言書(エメラルドタブレット)の中で彼女が預言書(エメラルドタブレット)を持っていたことを考えるのであれば・・・それを贈ったと自ら告げた『老練な声』の持ち主は彼女の敵ではないだろう。それが意味する所は彼女の胸に『古びた槍』を突き立てたのはその者ではない可能性が高い。だが最も気になるのは『預言者』という単語だ・・・」

 

それはモモンも気になったことだ。一枚目の預言書(エメラルドタブレット)に記載されていた単語だ。『預言者』は確か・・・・

 

 

 

「モモン、『預言者』というのはもしかすると・・モモン、お前かもしれない。その老練な声の持ち主に『預言者』と言われたのだろう?」

 

「えぇ・・・しかし・・」モモンは困惑した。いきなりそんなことを言われても理解できない。何やらとんでもない存在であろう預言者が自分だと言われて思考を停止してしまう。

 

「今はそこまで気にしても仕方るまい。お前が『預言者』というのはあくまで可能性だ」そう言われてモモンは胸を撫でおろした。自分が『預言者』と言われてもしっくりこない。むしろ『預言者』と呼ばれるに相応しいのはアインズの方だ。魔法を『詠唱』する存在の方が『預言者』という単語のイメージに合う。無論アインズ・ウール・ゴウンというアンデッドを知る上でモモン自身が判断したのが最大の理由である。

 

「『預言者』、確か一枚目の預言書(エメラルドタブレット)には『預言者』に対する記載があったな。それが見たい。悪いが見せてくれるか?」

 

「えぇ。お願いします」そう言ってモモンはテーブルに置かれた預言書(エメラルドタブレット)をアインズに手渡した。

 

 

 

  預言を繋ぐ者、「預言者」

  世界が変わる時、「預言者」は現れる。

  過去と未来を繋ぎ、永遠を造る者

  究極の扉を開ける世界の主

  始原にして終末の存在、

  それが「預言者」である。

 

 

 

「やはり記載されているな・・・」それに刻まれた一部の記載を読んだアインズはモモンに目を向けた。

 

「アインズ殿、『預言者』とは一体どのような存在なのでしょうか?」

 

「『過去と未来を繋ぐ』とある。預言書(エメラルドタブレット)にモモンが触れて見たのが600年前の歴史だったな?」

 

「えぇ。六大神が破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)を封印しました」

 

「過去と未来を繋ぎ、永遠を造る者・・・か。やはりモモンが『預言者』としか思えないな」

 

「・・・・」(本当にそうなのか?)

 

「モモンさんが『預言者』であるなら『過去と未来を繋ぎ』の部分はは説明がつきますね」

 

「どういうことだ?ナーベ」

 

「モモンさんは預言書(エメラルド・タブレット)を通して600年前の歴史・・過去を見ました。600年前の過去からすれば私たちがいる現在は600年後と言えます。これが『過去と未来を繋ぎ』という点なのではないでしょうか」

 

「だとすれば『永遠を造る者』の意味は?」

 

「そこはまだ何も分かりませんね」

 

「『預言者』についてはこれ以上の情報は無いだろう。それよりも『老練な声』は誰だ?心当たりはあるか?」

 

「分かりません。過去の記憶を見た時にも聞いたことがない声だったので。ですが『老練な声』の持ち主は何故か私に<ツアーを探せ>と言ってきました」

 

「『ツアー』。その名が人名なのか場所の名前なのか、あるいは何かアイテムの名前か・・・何にせよ『ツアー』と呼ばれる何かを探すしか無いだろう」

 

「そうなりますか・・・・だとしたら地道に聞き込みでもしていくしかなさそうですね」

 

「あぁ。そうだな。国の上層部や君たちと同じアダマンタイト級冒険者などであれば『ツアー』についての情報は知らなくても、それに繋がる情報を持っているかも知れない・・・・その可能性に賭けるしかないだろうな」

 

「・・・『ツアー』、一体どこに行けば見つかるのか・・」

 

「<探せ>と言われたのであれば、その『ツアー』とやらは隠れている、あるいは隠されているか・・可能性は高いだろうな」

 

「・・・まずは『ツアー』に関する情報集めですね」

 

「あぁ。・・・伝言(メッセージ)か。<どうした?エントマ・・・・何?・・・分かった。そちらへ向かう>」アインズのその様子にモモンは眉を顰めた。カルネ村に何か起きたのだろうか?

 

「どうかされましたか?」

 

「すまないがカルネ村に戻らねばならない。この話の続きはまた今度だ」

 

「忙しい中申し訳ありません」

 

「気にするな。今回の一件は私にとっても大事なことだ」

 

そう言ってアインズは再び闇を作り出し、その中に消えていった。

 

 

 

「アインズ殿のおかげで分かったことは一つ。『ツアー』か・・・・一体どこに行けば見つかるやら・・」

 

(これは今まで受けてきた依頼よりもずっと難しい内容ですね)

 

モモンとナーベはお互いに顔を合わせると溜息を吐いた。

 

 

 

 

 


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