練習台 | |||
私は藤城良子、鶴亀大学1年生で、応援団チアガール部新入部員です。夢と希望にあふれる大学生になって、華のチアガールを目指すはずが、今日、私は死ぬ事になりました。実はうちの応援部は、テレビの人気番組「逝ってGO!」の首飛ばし競争の常連出場チームで、過去に三度も優勝し、最高記録も持っていました。ところが今回は、斬首に失敗して失格無記録となってしまいました。私たちも見ていましたが、手元が狂ってうまく斬れず、首半分胴体に繋がったまま事切れたチアガール部4年の先輩の、無惨で恨めしそうな顔が忘れられません。失敗した応援団の副団長さんも、その後切腹してしまいました。うちが持っていた過去の最高記録も、無名の女性ペアに更新されてしまいました。 団長さんも激怒して、次の首飛ばし競争では何が何でも優勝して、今回の雪辱を果たすのだといきまいています。普段斬首の練習は、藁束や人形を使ってやっているのですが、やはり本物の人間を斬らなければだめだ、ということになりました。そこでチアガール部長の命令で、三ヵ月後に予定されている次の競技の時まで、毎月4人ずつ、1年生部員が練習台になることになりました。先輩の命令には絶対逆らえないのが体育会系の宿命です。そしてくじ引きの結果、最初の4人の一人に、私が選ばれてしまいました。 ついに練習日が来ました。私たち練習台は、本番さながらに全裸になって首を切られる順番を待ちます。最初は菊枝ちゃんです。チアガール部員にしては物静かな娘です。次の斬首役に決まった新副団長さんが、位置に付き刀を構えます。エイッ!と刀を振り下ろしましたが、少し後頭部寄りを斬りつけてしまい、うまく首が切れませんでした。「バカヤロー!何をやっとるかー!」団長さんの怒号が飛びます。「しっかりしてよ!」本番での斬られ役に決まっているチアガール部の先輩も不機嫌です。菊枝ちゃんは首から血を噴き、絶叫しながら転げ回ります。団員がすばやくとどめを刺します。「次!」今度は由美ちゃんです。私と一番仲が良かった娘で、二人そろって練習台になるのも運命かなぁ、と笑っていました。「じゃ、先に逝くね。」そう言って由美ちゃんは位置に付きました。今度はうまくいったようです。由美ちゃんの首は、血の糸を引きながらポーンと前へ飛びました。でも距離が足りません。「手首の返しが甘い!」団長さんが怒鳴ります。 「次!」いよいよ私の番です。位置に付き深呼吸をしてから目を閉じ、首を差し出しました。背後に副団長さんが刀を振り上げる気配を感じます。次の瞬間、首筋に熱いような冷たいような衝撃を感じました。一瞬、首をなくした私の体がすごい勢いで遠くへ離れていくのを見たような気がしました。私の意識はそれっきりでした。 (おわり) | |||
逝ってGO!2 | |||
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