竿のメトラ
 何十万もの群衆が見守る中、今、全裸のメトラは男たちの手で高く差し上げられた。そしてメトラの体は、神聖な山車の竿の槍先にと近づいていった。メトラの瑕一つ無い白い肌は、心なしかわずかに上気しているようにも感じられた。今、メトラの心は幸福に打ち震えていた。
 メトラは美しい少女だった。顔立ちはもちろん美しかったが、大人になりきっていない可愛らしさを残し、しかも目には知性の光と意志の力があった。黒く艶やかな長い髪は、体の動きに合わせて流れるように揺れ動いた。その若々しい裸身は輝かんばかりであり、手足はすらりと伸び、胸の膨らみは大きすぎず、小さすぎず、17歳と言う年齢に相応しく、全く弛みのない形の良いものだった。少女らしいすべすべした白い腹。適度にしぼられた腰のくびれ。背から尻への滑らかな曲線。下腹部の本来は秘められた茂みさえ、さわやかに感じられた。今、この美しい少女が神に捧げられるのだ。
 男たちは、いよいよメトラの肛門に、竿の先の金の槍をあてがった。メトラは自分の敏感な部分に、冷たい槍先が触れるのを感じた。思わずビクンとメトラの体が脈打った。その瞬間、メトラの脳裏に走馬灯のように思い出が駆け巡った。

 私が初めて「竿の少女」になりたいと思ったのは、十三年前、そう、歳の離れた姉、クリオ姉様が「竿の少女」になったとき。あの頃の私は「竿の少女」の本当の意味さえ知らなかった。でも私は、姉様が神様の所へ行くと聞かされて、また姉様の誇らしげな顔を見て、一緒に行きたいとダダをこねた。姉様は優しく、今はだめだけど、がんばればいつかきっと私も「竿の少女」になれると言ってくれた。
 やがて私も「竿の少女」の本当の意味を知った。山車の竿に刺し貫かれて、命も亡骸さえも全て神に捧げるのだと。祭の終りに群衆の中に投げ込まれたクリオ姉様は、今家には骨の一片さえ残っていない。でも私の気持ちは変わらなかった。
 それから私は「竿の少女」に選ばれるための努力をしてきた。ありがたい事に両親は私に人並み以上の容姿を与えてくれた。そしてそれをさらに磨く努力をした。もちろん容姿だけではだめなのだ。知性、人格、健康、どれ一つ欠けても「竿の少女」に相応しい少女にはなれない。大変ではあったが、つらくはなかった。私には目標があったから。
 両親も私を暖かく見守ってくれた。一つだけ心苦しいのが、両親の事。姉様に続いて私まで先に逝ってしまうなんて。でも姉様が逝った後、すぐに弟ができた。ひょっとしたら私たちの代わりに神様がお遣しくださったのかも。弟ももう12歳、お父様お母様の事をしっかり頼むわね。
 こうしてずっと「竿の少女」を目指してきたのだけれど、本当に、なにがなんでも絶対に「竿の少女」にならなくてはと思ったのは、三年前、そう、あの可愛いエディアと約束してから。ああ、エディア、私を本当の姉のように慕ってくれた。素直で優しくて、とっても強い子。今ここで私が「竿の少女」になれるのも、全てエディアのおかげ。
 あのとき私は帝都の祭の生贄に選ばれてしまった。目の前が真っ暗になった。こんなことで「竿の少女」の望みを断たれ、異教の神の生贄になるなんて。一晩泣いて、なんとか心を落ち着かせて、翌日学校に行ったら、エディアが現れ、とんでもない事を言い出した。自分が身代わりになって帝都に行くというのだ。私は驚いて必死で思い直すように言ったけれど、もうすでに遅かった。生贄決定の報告は自治政府に送られたあとだった。
 ああ、エディア、たった13歳で、家族もいない遠い帝都で、見た事もない異教の神に捧げられて、首を吊られて死んでしまうなんて、なんてかわいそうなエディア。本当ならそれは私の最期の姿だったはず。
 エディアが帝都に旅立った日、エディアは私に必ず「竿の少女」になってと言った。私も必ずなると約束した。それがエディアとの永遠の別れだった。その後、エディアの最期の様子を聞き、最後の手紙を読んで、私はますます誓いを新たにした。なにをしても返せないエディアの恩に少しでも報いるため、私はなにがなんでも「竿の少女」になってみせると。そして今日この日が来た。
 エディアの御両親から分けていただいたエディアの骨の一かけらは、ペンダントにしていつも肌身離さず付けていた。このペンダントは、なによりも私を励ましてくれたし、お守りだった。今回「竿の少女」になるにあたって、神官様方も私とエディアの話をよく御存知で、特例として全裸の上にこのペンダントだけは付ける事をお許しくださった。さぁ、エディア、一緒に逝こう。あなたも「竿の少女」よ。一緒に神様の許へ行きましょう。

 次の瞬間、男たちはメトラの体を力いっぱい引き下ろした。槍先がメトラの肛門に食い込む。鮮血が飛び散り、すぐに竿はメトラの直腸を食い破り体内に侵入した。メトラは歯を食い縛り呻き声すら漏らさない。竿はメトラの腸も胃も引き裂いて体内を上っていく。メトラの体はだんだんと竿を下がっていく。メトラの体がビクンビクンと震える。やがてメトラの口からブバッと血が吹き出し、喉が大きく膨れたかと思うと、竿の先が口から飛び出した。今年も「竿の少女」が見事にできあがった。
 竿に貫かれ、ピクピク震えながら、メトラの意識は至福に包まれていた。
 さようなら、みんな。私は神様の許へ行きます。私はとても幸せでした。みんな、ありがとう。
 そのとき、メトラはかたわらに確かにエディアが、あの可愛い笑顔そのままに、16歳に成長したエディアがいたような気がした。

(おわり)
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