奴隷市場
 ここバジェス帝国の首都ヨホイアの大バザールでは、ありとあらゆる物が売られている。衣類、食品、雑貨、家具、宝石貴金属、骨董品、そして人間まで。人間の売り場、すなわち奴隷市場は、バザールの一角にかなりの広さを占めている。そこでは屈強な労働奴隷、賭け事に使われる奴隷拳闘士、小間使いの女奴隷、性奴隷、そして食用奴隷まで、様々な奴隷が売り買いされている。最初から食用を目的とする奴隷売買は、表向き禁止されているが、それは建前だけのようだ。今日は、秘めたる人気商品である、食用奴隷の売買の様子を報告しよう。

 食用奴隷の市場は、奴隷市場の一番奥まった所、公式には存在しない場所にある。とはいってもいわば公然の秘密、だれもがその存在は知っている。当局も見て見ぬ振りというのが実態だろう。今日もそこは大勢の客で賑わっている。
 食用奴隷として売られるのは、主に十六七歳の少女である。この年頃が一番美味しいらしい。専門業者に赤ん坊の時から飼育された者もいれば、借金のかたに売られてきた者もいる。噂では、どこからかかどわかされてきた者もいるという。もちろん品質は様々だ。最初から食用に飼育された奴隷が高品質なのはいうまでもないが、そのかわり値段も非常に高価なものとなる。財布と相談という所だろう。市場で売られている食用奴隷の値段はピンからキリまである。ただしあまりに安いものは、病気などのおそれもあり、あまりお勧めできない。

 一般の食用奴隷は、市場の通路の両側に全裸で並べて売られている。通路の壁には何本も横木が渡され、奴隷の両手はそれぞれ高い位置で縛られ、両足はやや開いた形で、足首のところで固定されている。中には、叫ぶのであろうか猿轡を咬まされている者や、ずっともがき続けている者もいるが、多くの者は、すっかりあきらめているのか、大人しくしている。昔からの習慣で、右乳首に値札が付けられている。
 客は、奴隷の肌の色艶や肉の付き具合を確かめ、病気はないか、値段につりあうだけの品かを、吟味する。心得た客は、奴隷商人に断って、奴隷の舌や裏瞼を調べたりもする。奴隷の秘所を押し広げ処女かどうかを調べる者までいる。奴隷は何をされても逆らう事は許されない。
 もちろん、その場で値引き交渉をするのは自由だ。客と商人の激しい駆け引きが繰り広げられる。取引が成立すると、奴隷は壁から解放される。ある者は生きたまま連れて帰られ、ある者はその場で首の骨を折ってシメられ運び去られる。奴隷をシメるのは屈強な男性奴隷の仕事だ。なかには涙を流して命乞いする奴隷もいるが、男性奴隷はためらう事もなく淡々と少女のか細い首を折っていく。すこし手間賃をはずむと、屋内の作業場で解体処理もしてくれる。手馴れた職人が、生きた少女を、あっという間に料理しやすい肉の塊に変えてくれる。さらに手間を惜しむなら、奴隷市場の一角には、買った奴隷をその場で料理してくれる店まである。

 食用奴隷市場の広場では、とくに上物の食用奴隷が競りにかけられている。飼育業者がとくに念入りに育てた高級品、肌や髪や目の色が違う外国産の珍品、そして客の加虐心を刺激する素人娘。借金のかたに売られた、あるいはだまされて連れてこられた娘たちは、己が身に降りかかった恐ろしい運命に耐え切れず、ある者は泣き叫び、ある者は心神喪失している。そのような様子が、好きな者にはたまらないのだ。今日もたくさんの客が来ている。
 次々と裸の奴隷が舞台に引き出される。競り人が、面白おかしく商品を紹介する。客たちからは下卑た笑い声があがる。そして競りが始まり、奴隷は競り落とした客の物となる。その先の運命は一般の食用奴隷となんら変わらない。
 今また一人の少女が舞台上に引き出された。まだ14歳ぐらいだろうか。やはり全裸で後ろ手に縛られ猿轡を咬まされている。競り人が叫ぶ。「今朝都に着いたばかりの娘だ!田舎娘だがなかなかの別嬪だ!遠い田舎からお客さんたちに食べてもらうためにわざわざ来てくれたなんて、なんていい娘なんだろう!」その時、助手が少女の猿轡をはずした。少女が叫ぶ。「違います!私だまされたんです!都に連れて行ってくれるというから、うっ!」また口がふさがれた。客たちからはドッと笑い声があがる。「どうです。活きがいいでしょう。ピチピチですよ。」競り人が続ける。「胸も腰も小さいぞ!」「毛だって生えかけだ!」客から声がかかる。また笑い声があがる。競り人が答える。「確かに少々成長が足りませんが、これはこれでいいとおっしゃるお客様がいるはずです。こんな年端も行かぬ娘を生きたまま料理するという高尚な趣味をお持ちの方が。」猿轡を咬まされた少女は、競り人の恐ろしい言葉に、ただ震えるしかない。「この細い首を掻き切って生き血を絞るもよし、すべすべした腹を割いてはらわたを引きずり出すもよし、かわいい尻から串刺しにして丸焼きにするもよし、どうでもお客様のお好きな様にだ!」少女は、もはや呻き声を出す事もできず、ただ涙目で首を左右に振るばかりだ。やがて競りが始まった。かなりの良い値がついたようだ。予想通り、少女は生きたまま連れて行かれた。今夜あたりどこかの金持ちの宴席に上るのだろう。おそらくその宴の始めの時にも、少女はまだ生きていることだろう。

 一方、売れ残ってしまって安売りされる奴隷もいる。それを狙ってやってくる客も多い。奴隷たちも、もう何日も壁に掛けられたり、檻に入れられたりしていたため、すっかり体力と気力を失い、大人しいものだ。鮮度的には少々問題かもしれないが、それでも客にとって、在庫処分で大幅に値段が下がった食用奴隷は、お買い得だ。こちらも大盛況である。
 さらにお買い得品としては、ときたま食用奴隷の解体即売が行われる。今日は運よく解体即売が行われるようだ。奴隷市場の片隅の空き地に、簡単な調理台が設置されている。大きな包丁を持った解体職人兼売り子が、大げさな身振りで客を呼んでいる。まだ解体は始まっていないようだ。後ろには三人の奴隷少女が裸で並んでいる。諦めきっているのか、随分大人しくしている。ある程度客が集まると、解体が始まった。
 「一番、来い!」職人が大きな声をあげた。すると右端の少女が進み出た。よほど仕込まれているのか、指示もないのに、身を屈めて調理台の上に首を差し出す。職人は「先ずは首だ!」と叫び、包丁を高々と振り上げる。少女は首を伸ばしてジッとしている。職人が力いっぱい包丁を振り下ろす。少女の首はたやすく切断され、切り口からは鮮血が噴き出す。残る少女たちは、騒ぎもせず、ただ目を丸くして転がる首を見つめている。
 職人は少女の首を拾い上げると、少女の頭の叩き売りを始めた。このように切り取った部位は、片っ端から叩き売られるのだ。
 続いて二人の助手が、頭を失った少女の体を、両脇から抱えるようにして立て起こした。職人は、客によく見えるように、少女の体を立たせたまま、その腹を切り裂いた。はらわたがこぼれ落ちる。そのはらわたも、すぐさま売られてしまった。さらに少女の手足も切り売りされ、胴体も適当な大きさの肉の塊にされて売られ、最後に残った骨までが売りつくされた。あとには血溜り以外何も残らなかった。職人は叫ぶ。「二番、来い!」

 夜遅くまで、奴隷市場の喧騒は続く。今日は何人の食用奴隷たちが売られるのだろうか。彼女たちの血肉が、この帝国の、密かな活力源となっているというのは、間違いない真実だろう。それがバジェス帝国という国なのだ。

(おわり)
秋祭り
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