【スポーツ】[陸上]サニブラウン「何とも言えない」 10秒02で2年ぶりV2019年6月29日 紙面から
◇日本選手権▽世界選手権(ドーハ)代表選考会を兼ねる▽第103回▽第2日▽福岡市博多の森陸上競技場▽男女100メートルなど決勝10種目 男子100メートル決勝が行われ、9秒97の日本記録を持つサニブラウン・ハキーム(20)=米フロリダ大=が、10秒02(向かい風0.3メートル)の大会新記録で2年ぶり2度目の優勝を果たし、世界選手権代表に決まった。桐生祥秀(23)=日本生命=が10秒16で2位、小池祐貴(24)=住友電工=が10秒19で3位だった。女子100メートル決勝は御家瀬(みかせ)緑(18)=北海道・恵庭北高=が11秒67で初優勝し、29年ぶりの高校生女王に輝いた。やり投げの女子は日本記録保持者の北口榛花(21)=日大=が63メートル68の大会新で初制覇し、世界選手権代表に決まった。男子の800メートルはクレイ・アーロン竜波(17)=神奈川・相洋高=が1分46秒59で勝った。 雨にぬれた最速決定戦のトラック、真っ先に駆け抜けたのは日本記録保持者のサニブラウンだった。号砲の反応時間こそ8人中7位だったものの、188センチの長身を生かしたストライドで、桐生らライバルを寄せ付けない。10秒02の大会新で2年ぶり2度目の優勝、日本最速にして最強の座を手にした。 「(10秒02は)何とも言えないタイム。あと0秒03だったので、スタートをちゃんと出ればよかったかなと思う。でも、優勝できてよかった」。9秒台に届かなかった悔しさをにじませつつ、勝利の喜びをかみしめた。 史上初めて9秒台の自己記録を持つ選手がそろったレース。1万4100人の観衆が見つめる中、緊張とも焦りとも無縁、悠然とした立ち振る舞いは王者の貫禄十分だった。「ほとんど緊張しなくなっちゃった。自分がどんな走りをするのかというワクワクの方がある」とスタート前もリラックスした表情だった。スタートの出遅れも「こんなことを言ってはいけないが、うまくいかないのはいつものことなので焦らずちゃんと加速できたのはよかった」と他の選手を気にすることもなく、自身のレーンだけに集中。50メートル付近では勝ったという手応えを得た。 圧勝にも口をついて出たのはスプリント大国の米国でもまれ、世界レベルを身近に感じればこその課題だった。「アメリカでもっと速い選手と走っていて、ここで自分の強さを見せられなきゃ意味がない。スタートでしっかり行けないと世界のトップレベルでは全然通用しない。100メートルというのはそういうもの」。満足もおごりもない。ただただ、もっと速くを見据える。 20歳にして3度目となる世界選手権。「世界にはまだまだ化け物みたいな人が多い。しっかり決勝に残ってメダルを狙えるところまで練習を積み上げたい」。底知れぬ強さ、可能性を秘めた若きスプリンターが世界最速決定戦でその真価を発揮する。 (川村庸介)
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