出荷の日4

 私は、磐坂鏡子、16歳、県立高校に通う普通の女の子、のはずだった。昨日までは。
昨日の朝、シャワーを浴び、トーストとコーヒーの朝食をとっていると、お父さんとお母さんが、いつになく真剣な顔で私を見つめているのに気がついた。「どうしたのよ。」と私が言うと、お父さんは「鏡子、今日はお前に大事な話があるんだ。」と話し始めた。なんだろう。いやな予感がして、私の心臓は激しく鼓動し始めた。「実は、お前は私たちの本当の子供ではないんだ。」なにそれ、私はもらわれっ子て事?私は衝撃を受けた。しかし本当の衝撃はそれからだった。「お前は、食用少女って知っているかい。」お父さんは突然思いもかけない事を言い出した。話には聞いた事がある。私と同じ位の歳の女の子だけど、生まれたときから食用として育てられたクローン少女がいると。びっくりするぐらいの高い値段で売られており、一部のお金持ちのための高級食材だと。ごく平均的な庶民である我が家には関係ない話だと思っていたが。「少女畜産社という会社が、食用少女を飼育しているんだ。そこの食用少女は、A、S、SSとクラスがあるんだが、本当はそのさらに上に、Xクラスという秘密の商品があるんだ。」お父さん、何の話をしてるの?全然わからないわ。「Xクラスの存在はごく限られた特権階級にしか知らされていない。Xクラスの食用少女は、完全な予約注文生産で、赤ん坊の頃から、一般家庭で、普通の人間として育てられる。自分が食用少女である事は本人にも知らされていない。」イヤッ!何の話なの!それが私と何の関係があるの!叫ぼうと思っても声がかすれて出ない。「そう、私たちは少女畜産社の特別飼育係で、お前はXクラスの食用少女なんだよ。そして明日はいよいよ出荷の日だ。」私は席を立って逃げようとしたが、体が動かない。そういえば手足がしびれたような感じがする。あっ、さっきのコーヒーに。お母さんが言った。「勘違いしないでね。私たちは今日まで、あなたの事を本当の子供のように思って育ててきたし、心から愛情を注いできたつもりよ。でもあなたを出荷するのは最初からの約束なの。あんたはそのために生まれてきたのよ。あなたはもう立派な食用少女よ。おいしく料理されてお客様を楽しませてね。」私は、目の前が真っ暗になり、そのまま意識を失った。

 気がつくと、私は見知らぬ部屋で、全裸でステンレスの台に寝かされていた。その部屋は清潔なタイル貼りで病院の手術室のようでもあったが、どこか非人間的な感じがした。私は肉屋の作業場を思い出してゾッとした。しばらくすると医者のような白衣を着た男たちが入ってきた。私はおもわず逃げようとしたが、手足はおろか、胴体までベルトでしっかりと固定されているので、わずかに身じろぎする事しかできなかった。悲鳴を上げようとしても、口にボールのようなものが押し込まれており、呻き声しか出ない。男たちの一人が、「おや、気がついたかね、鏡子君、いや食用少女X139、ここはXクラス食用少女の出荷前処理場だよ。お客様にお届けする前に、今から君の肉質調整をするんだ。覚悟はいいかい。」覚悟なんてできるわけない。私は叫ぼうとしたが、もちろん無駄な努力であった。男は、私の裸の体をしげしげと眺め、「今回のXクラスもいい出来だな。よく締まったいい肉付きをしている。しかし長年普通の人間として暮らしてきたため、このままだと君の肉には、いやな臭いが残ってしまう。そこでいろんな処理が必要なんだ。」男は恐ろしい説明をしながら、手元のボタンを操作した。すると台が私を固定したまま左側に傾いた。「まず胃洗浄。」男がそう言うと別の男が、チューブのような物を私の口にねじ込もうとした。私は必死で抵抗したが鼻をつままれて、つい口を開けてしまった。たちまちチューブが私の喉の奥まで差し込まれる。オエッ、私は激しい嘔吐感に襲われた。男がボタンを操作するとお腹の中に何かが流し込まれた。三人目の男が私のお腹をマッサージする。胃の中のものが逆流してくる。私は思わず、ゲエッと、すべてをぶちまけてしまった。「次は腸だ。」また別の男が台の後ろに回って、何か操作をする。台のお尻の所に穴が開いていたらしく、いきなり私のお尻に何かが差し込まれた。あっ、何かが入ってくる。またお腹がマッサージされる。しばらくすると、お腹がグルグル鳴りだした。私の我慢が限界に達しようとした時、後ろの男が、私のお尻に栓のようなものを差し込んだ。「もう少し我慢するんだ。」助けて!お腹が破裂しちゃう!私は気が狂いそうになる。そして栓が抜かれた。私の頭の中で何かが弾けた。後の事はあまり言いたくない。

 その後、さらに腸内洗浄が行われ、汚れた私の体も、ホースの水できれいに洗われた。ここまでされて私は、まだ気も狂わず、失神さえしていなかった。ひょっとしたら、やっぱり私は、普通の人間とは違い、何かの耐性があるのだろうか。そういえば子供の頃から怪我などの痛みには強かったなぁ。私が怪我をすると、いつもお父さんが大騒ぎしておかしかったけど、あれは商品の心配をしていたのかしら。その後、私の体のあちこちに、チューブに繋がった注射針が刺された。チューブの中を真っ赤な血が流れていく。男が言った。「これで君の血液を、いったん体外に出して装置を通し、血液浄化をしてから戻すのさ。それで血の臭みが減るんだ。」さらに多くの点滴バッグが繋がれた。「これは特製の香料入りリンゲル液だ。君の肉にほのかな香りが付くんだよ。」それから手足やお腹にはコードの付いた小円盤がたくさん貼られ、ビクンビクンと動いている。「これはパルスマッサージ器、肉を柔らかくするんだ。」男たちは、テキパキと作業を進めていく。私はもう抵抗する気力も失せて、されるがままになっていた。最後に男が「いいぞ。君は今、どんどんおいしい体になっているんだ。お客様も喜ぶぞ。」と笑って言った。疲れきった私はたくさんのチューブやコードに繋がれたままで、眠りに落ち込んでいった。長い一日が終わり、私は人間でなくなった。

 そして今日、私は、食用少女X139として出荷されている。普通の高校生磐坂鏡子はもういない。特製の運搬用カプセルに入れられ、どこかへ運ばれていく。このカプセルは食用少女専用で、入っているだけで体力が回復されるらしい。普通の食用少女は自ら喜んでカプセルに入ると、梱包係の男が言っていたが、もちろん私は抵抗した。一夜休んである程度気力も回復していたし。頭の片隅では、もはや自分の運命が逃れられないものだと、理解はしていたけれど。そんなわけで私は、また拘束されてカプセルに入れられている。カプセルの蓋が閉まるとき、係が、「まぁいいか。これぐらい元気がある方が、客も喜ぶさ。」と、つぶやくのが聞こえた。カプセルには催眠効果もあるらしく、私は再び眠りに落ちた。

 目が覚めると、そこは大きなお屋敷のような場所のパーティー会場だった。私は部屋の真ん中の大きなテーブルに置かれた平たい台、あっ、これはまな板だ、の上に裸で横たわっていた。やはり手足は固定され、口にはボールが含まされている。まな板の横には、大きな包丁が並べてある。いよいよ私は料理されるのだ。私は思わず呻き、身をよじらした。すると派手なタキシードを着た男、あっテレビによく出てる人気芸人じゃない、私ちょっとファンだったんだけどな、が叫んだ。「さぁ、本日の特選素材が目を覚ましたようです!」会場に歓声が上がる。会場の中央、私のまん前には、これもテレビでよく見る大物政治家の姿があった。彼が私の注文主だろうか。そのすぐ横にはよく似た風貌の青年がいた。司会の芸人が続ける。「本日のお孫さんの二十歳のお誕生パーティーのために、○○先生は、17年も前から、特別の食用少女を予約されておりました。お孫さんの成人を祝うためだけに、生まれ育てられた少女は、今ここにその美しい体を横たえております。昨日までは自分をただの人間だと信じていた少女を、今ここで生きながら調理して、皆様にお召し上がりいただきます。お孫さんが食用少女を召し上がられるのは、初めてだと伺っておりますが、○○先生の後継者の、大人としての第一歩のお祝いの席として、これ程ふさわしいお料理はございませんでしょう。」会場中から拍手が鳴り響く。よく見れば他にもテレビで見る顔が大勢いる。「では、さっそく調理にかかっていただきましょう。」
 数人の調理師が私に近づいて来る。私は思い切り身をもがく。○○の合図で調理師の一人が、私の口のボールをはずした。私はすぐに大声で喚いた。「いやぁ!助けて!私を食べないで!人殺し!あんたたちみんな狂ってるわ!」すぐにまた口がふさがれた。孫の青年は、少し怯えたような表情で尋ねた。「お爺様、どうしてこんな食用少女を使うんですか。普通の食用少女なら、もっと大人しいでしょう。それに子供の頃から特別飼育した方が、味もいいに決まっているじゃないですか。」○○が答えた。「わかっとらんな。従順でない者を力でねじ伏せて思い通りにする。それが権力の醍醐味というものだ。それがわからんと、お前も立派な政治家にはなれんぞ。」「そんなものですか。」「そうだ。それに恐怖と苦痛に歪む顔こそが、なにより料理の最高のスパイスなのだ。覚えておけ。」
そうこうする内に、一人の調理師が、いきなり私のみぞおちに包丁を突き立てた。その瞬間、また口のボールがはずされた。私の口から絶叫がほとばしる。かまわず調理師は、一気に包丁を、私の下腹部の茂みまで引き下ろした。血が噴き出す。全身を激痛が駆けめぐり、目の前が真っ赤になる。会場からはまた歓声が上がる。調理師は切り裂いた私のお腹に両手を入れ、力まかせに押し広げた。私は苦悶の声を上げる。ブチブチとなにかが裂ける音がし、私のはらわたが飛び出した。私は苦しい息の下で、調理師たちが、私のはらわたを切り捌き、お腹の肉を切り取っているのは、眺めながら、ふと思った。こんなになってまだ生きているなんて、私はやっぱり食用少女だったんだなぁと。

(おわり)
出荷の日5
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