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富田直美 真説・IT考

官邸屋上で見つかったドローンは
落下でなく「着陸した」と見る

――知っておきたい最新のドローン事情

富田直美
【第17回】 2015年4月24日
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 しかしながら、その多くはマスコミやテレビコマーシャル用の空撮を生業としており、その下に、空撮等のアマチュアが存在しているのが現状であり、最近はこのドローンの心臓部であるコントローラーのプログラムに書き込めるSDKが公開されたり、その元になるOS的な部分がオープンソース化されてもいる。

 これを使って、ドローン制御のプログラムを書く小学生まで誕生しており、実に素晴らしいことなのだが、国家、大学、研究機関は、独自のドローンOSや独自のハードウェア(ドローンの筐体とモーター等)を国家戦略として巨額の投資をし始めているように感じる。

 PCの黎明期、今回と同じように、どれだけ多くの独自OSが誕生したであろうか? NEC PC98の囲い込みによる瞬間風速と凋落、DoCoMoの独自OSによる寡占と低落。もう、こんな馬鹿馬鹿しいことを辞めてほしいと考えるのは、私だけなのだろうか?

中国企業DJIは
ドローン界のアップルだ

 そんな矢先に、国産ドローンの製造と発売の発表がテレビで伝えられていた。

 著名な教授が現れて語っていたが、でもその放送で使われた魅力的なドローンの用途を伝える動画は、ほぼ全てが海外(フランスが多い)のものであり、自分達の研究成果を伝えるものはなかったように思えた。

 1年も前からYouTubeで誰でもが見ることのできるレベルの物。すなはち、国産ドローンは我々空撮のプロや、その仲間から見ても、注目できるような革新的なことが無く、目新しい用途も無いものに見えた。

 中国のDJIのように、世の中にある基本的な技術、インフラを組み合わせるだけで、短期間で世界一となることができた理由をBig Dataでなく、知恵と経験で分析すれば、どこにお金を投じるべきかは明らかだと私は思う。

 まさにAppleが純粋な技術的優位よりも、人間工学、文化、デザイン、等々を超えた、人がほしくなる組み合わせと、自分達の価値を決定づけることにのみフォーカスし、ほぼ基本ファブレス的な形態の中で成功を収めている事をダイヤモンドオンラインの読者は熟知しているのだと思う。

 DJIはまさに、そんなAppleのスタイルをドローンで行っている企業に見える。彼らのアメリカのHPを見れば、その中に中国の匂いは全くない。

 全てはスマホの部品等々が潤沢に得られる深浅を製造拠点とし、破竹の勢いで伸びていることからも本質を知ることができよう。私が考える彼らのKiller Applicationは、世界一のカメラのジンバル技術のように思うのだが。

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新しいIT技術に基づく製品やサービスは、人間、社会にどんな影響(ポジティブ、ネガティブ)を与えるのか? 先端IT企業9社の経営経験を経て、現在は名門シンクタンクの理事を務め、大学で人間力を教える著者が、わかりにくいITとIT業界の動きを人間力によって立つ問題意識を元に考察する。

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