「自家採種の禁止」で…地域の多様な品種が食卓から消える
知的財産権の保護は、TPPでも大きなテーマだった。米中貿易戦争でも、トランプ大統領は中国が知的財産権を侵害していると問題にしている。新しい技術やソフトの開発者の権利がないがしろにされ、コピーや海賊版が横行すれば、開発や著作活動が成り立たなくなってしまう。国際社会が協力して知財保護を強化していくことは必要だ。
しかし、コピーが何でも悪いわけではない。育成者の権利保護を名目に、「自家採種の禁止」という形で、日本の農業文化が壊されようとしているのだ。
自家採種とは、農家が自ら生産した作物から種を採取し、次の年に作付けすること。企業が開発した種はF1品種と呼ばれ、収穫率が高く、品質の均一性にも優れるが、一代限りの種だ。一方、自家採取の種は、質の劣化は避けられないが、農家は工夫をしながら、種を代々つないできた。東大大学院の鈴木宣弘教授(農政)が言う。