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日本の暗号ミステリの嚆矢となる、江戸川乱歩のデビュー作「二銭銅貨」
日本人が暗号に使える、文字のバリエーションは世界一だと思います。
確かに、暗号自体は、数式に近いものです。アクロバティックな論理や驚愕のトリックとは、異なる次元のものと思われようが、暗号ミステリでは、それが解かれるに至る経緯、ここを物語ることで、ミステリとしての謎と驚きを演出するのだと思います。
解読のための意外なヒント、謎めいた符号が、がらりと様相を変える瞬間のきらめき。
そこに、ミステリを読む楽しみ、喜びが、確実にもたらされるのです。
そして、手間暇かけて作られた暗号を、解き明かした時の爽快感は、一度味わえば、病み付きになること請け合いです。
そのような、一癖も二癖もある暗号ミステリの、日本における嚆矢となったのは、英米の推理小説の文化そのものを日本に輸入した、江戸川乱歩の「二銭銅貨」。
遥かな先駆的作品、エドガー・アラン・ポーの「黄金虫」の暗号趣向を取り入れて書き上げた、この短編は、江戸川乱歩の実質的なデビュー作でもあるのです。
職もなく、極貧の毎日を送る青年が、空洞になった、偽造銅貨の中から紙切れを発見します。
「南無阿弥陀仏」の六文字が、一見ランダムに書きつけてあるそれは、先頃、お縄になった泥棒が、盗み隠匿した大金の隠し場所を、暗号化したものだったのです。
まんまと暗号解読に成功した青年は、相棒に手柄話を語り始めるのだが——–。
六個の文字の並びから、主人公の青年がインスピレーションを得ていく過程は、非常にスリリングで、謎解きの興味を十二分に満足させてくれます。
若干の専門知識が絡んでくるものの、ぬけぬけと大胆に張られた伏線が驚きを生み、アンフェアの加減をゆるめる、念の入った構成も、実に絶妙です。
短編ミステリとして、完璧と呼べる出来栄えを誇るマスターピースであり、デビュー作にして、すでに完成された、恐るべき江戸川乱歩の手練手管を堪能できる作品だと思います。
評価:
著者:江戸川乱歩
出版社:講談社
本が好き! 1級
エンターテインメント小説、純文学、ノンフィクションなど、ジャンルを問わず、読書三昧の日々を送っています。
大好きな作品について、これから少しずつレビューをしていきたいと思っていますので、宜しくお願い致します。
Source: 本が好き! 新着書評
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