ブログブログ by 友利昴

自分に関する記事を書いたものです。

∞×知財(ムゲンチザイ) #2「オリンピック×知財―オリンピックは誰のものか」開会式!

  東京オリンピックがいよいよ近づいて来ました。東京五輪のスポンサーは、他の大会よりも異様に多く、街やCMは既にエンブレムだらけであまりプレミアム感がなく、食傷気味という人もいるのでは。しかし、聖火リレーランナー公募をはじめ、そろそろスポンサー独自の施策やキャンペーンが活性化してくる兆しが見えてきています。

  となると、気になるのは「アンブッシュ・マーケティングと呼ばれる、スポンサー以外によるオリンピックに乗じたキャンペーンや広告の顕在化です。大会組織委員会は、このアンブッシュ・マーケティングを規制する姿勢を見せていますが、世間ではアンブッシュ・マーケティングやその規制については賛否で揺れている……というより、いいのか悪いのか誰も上手く理解も評価もできていない状態のように思えます。そんなモヤモヤを晴らしてくれるイベントを、やります

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  場所は、東京・日本橋の、社用グループウェアと先進的働き方改革で注目されるサイボウズさんのオフィス内。∞×知財(ムゲンチザイ)というのは、ちざたまご氏と私が主催する、「知財と『何か』を掛け合わせたテーマで開催するトークイベント」で、今回が2回目の開催になります(参照:前回レポート)。「オリンピック×知財―オリンピックは誰のものか」というテーマは、かなり初期のブレスト段階からあったアイデアですが、「やるなら大会開催の1年前の時期だろう」ということでこのタイミングでの採用になりました。

  それで、「このテーマでやるならこの方に出てもらいたい」と僕からリクエストさせて頂いたのが、ニューヨーク州弁護士で『アンブッシュ・マーケティング規制法』(創耕舎)の著者の足立勝さんと、社会学者で『オリンピック・デザイン・マーケティング』河出書房新社)の著者の加島卓さんでした。僕も『オリンピックVS便乗商法』(作品社)という本を書いたのですが、社会とアンブッシュ・マーケティング/アンブッシュ・マーケティング規制の向き合い方を考えるにあたって、これ以上に参考になる本は日本にないだろうなと思ったからです。ちざ氏も賛成してくれて、オファーしたところお二人とも快諾して下さってよかったです。

友利昴、加島卓、足立勝

  3人でどんな話ができるか、まだ分かりません。ちざ氏は当初「友利さんはアンブッシュ推進派で、足立さんはアンブッシュ規制派で、加島さんは中立派ですよね」、くらいのことを言ってたんですけど、多分そんな単純な対立構造にはならないと思います。ただ、ここで私一人が勝手に話を展開するとつまらないので、個人的な感触だけ簡単に書きます(お二人は全然違うことを考えているかもしれませんのであしからず)。

「日本におけるオリンピック組織のアンブッシュ規制には法律上の根拠がなく、彼らはあたかも法律違反であるかのように活動しているに過ぎない」というのはおそらく足立さんも私も同じ見解。そのうえでの問題意識は違っていて、足立さんは多分「オリンピックに限らず、一般的に周知著名商標をアンブッシュから保護する取り組みが必要ではないか」という問題意識をお持ちではないかと思います。私は「合法なものをあたかも法律違反であるかのように規制してくる相手に対しては、安易に流されて自粛するのではなく、自身でしっかり妥当性を見極めて判断すべきではないか」という問題意識を持っているんですね。これは、対立していない。問題意識のベクトルというか種類が違う話です。

  社会学者である加島さんは、アンブッシュ(規制)が良い・悪いとか、こうすべきだというような価値判断は、多分あまりなさらない。足立さんや僕が提示するアンブッシュ(規制)の実像や将来像、あるいは歴史的経緯から、今日の、アンブッシュとその規制の是非に誰も答えを見いだせない混沌とした状態が生まれた背景・文脈を炙り出し、またそれに基づいて、思いもよらない方向からの問いかけやサジェスションを頂けるのではないかと思っています。社会学知財がコラボレーションすることで、答えの出しにくい法的な問いに、今までにない光が当たるといいなぁと思います。

  いや、お二人は全然違うことを考えているかもしれないんですけどね。違ったらすみません! 僕はこのテーマに関する本は書きましたけど、キャリア的にも一番若いし、お二人と違って研究者と呼べるような立場じゃないので、胸を借りるつもりで楽しみたいと思います。ぜひ遊びに来てくださいね。詳細・お申し込みはこちらから!

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ついでに、先日「Nobody's 法務」さんが『オリンピックVS便乗商法』の丁寧な書評をアップしてくださいまして、ありがたかったのでご紹介。

kanegoonta.hatenablog.com

ビジネスジャッジとして『「実務上のトラブルを避けるために」という名目で、オリンピック組織の言い分に従うことをよしとする』という判断も一定程度理解はできるところ。このあたりは、よく法務界隈でも話題になりますが、悩ましいところではあります。みなさん、もし事業部(弁護士・弁理士の方であれば顧客)からアンブッシュ・マーケティングの相談がきたらどう答えますか?

という問題提起をされておられます。これは悩みますよね。私は前述の問題意識でこの本を書いたんですが、実務において「アンブッシュ・マーケティング規制のカラクリをきちんと分かったうえで、自ら穏当路線を選択する」ことは、まったく筋の通った話だと思います。「よく分からない規制だけど、なんかNGだよね」って自粛してしまうのとは、結果として同じ行動だとしても、判断の質が全く違うと思いますから。世の中には「違法じゃないんだから何やったって問題ない!」と正論?を言い続けてそのまま地獄に落ちて行く人もいますからね。僕だってそんなことやってませんよ、実務では!分かったうえで(また法務担当者であれば、現場にも分からせたうえで)、それぞれの道を選ぶことが大事なんだと思います。

友利昴、加島卓、足立勝 ムゲンチザイ アンブッシュマーケティング