新たなスポーツとして、最近話題の対戦型のコンピューター・ゲーム「eスポーツ」。
2022年のアジア大会では、正式競技に採用されることになっています。
このeスポーツにいま、熱中しているのが障害のある人たちです。
これまでの放送
eスポーツに目覚めた障害者たち
eスポーツ 夢中になって取り組む患者たち
心身に、重い障害がある人たちが入院する北海道・八雲町の国立八雲病院。
作業療法室には、ゲームを映し出すモニターがずらり。
「いけいけ!」「惜しい!!」患者さんたちが、夢中になってeスポーツに取り組んでいます。
この病院では、体が不自由でもゲームを楽しめるように、患者の障害にあわせてさまざまなデバイスを作ってきました。
口の動きで操作できるジョイスティックや、わずかな力で押すことができるボタン。
こうしたデバイスは、病院スタッフのお手製です。
残された体の機能を使って、好きなことに取り組む意欲を持ち続けてもらおうと、徹底したサポートを続けています。
作業療法士 田中栄一さん
「どうせ手が動かないからゲームはやらないんだって、以前はそういう子もいたんです。
それが今では、工夫すればできるようになるかもしれないとか、どうせ○○だからやらないというふうな感じじゃなくなってきた。」
この病院で一番のeスポーツプレーヤーは、吉成健太朗さん(23歳)。
徐々に筋力が低下していく難病「脊髄性筋萎縮症」を患っています。
子どものころから、ゲームが大好きだった吉成さん。
病気の進行とともに体が動かなくなり、ゲームがしづらくなっていました。
わずかに動かすことができる指先を使い、ゲームの腕を上げてきました。
eスポーツプレーヤー 吉成健太朗さん
「ゲームの中では新しく能力を得たり、努力が結果に結びつくという道筋が見えている。
それが次も頑張ろうという、モチベーションになっている。」
サポートに乗り出す業界も
ゲーム業界も、障害のあるプレーヤーのサポートに乗り出しています。
サポート担当
「最近なにか困っていることとかありませんか。」
テレビ電話を使って、八雲病院のeスポーツプレーヤーたちに問いかけるのは、大手ゲーム会社のサポート担当者。
より多くのユーザーに楽しんでもらうため、ソフトウェアの課題を洗い出しているのです。
介護施設にも、eスポーツは広まっています。
群馬県・伊勢崎市にある通所型の施設では、去年(2018年)「eスポーツ講習」を始めました。
専門のコーチが、レベルにあわせて個別指導。
プロのeスポーツプレーヤーから直接指導をうける機会も設けています。
未来の“トッププレーヤー”を生み出すことが、この施設の目標です。
eスポーツ コーチ 中村恭子さん
「障害者にeスポーツという文化を広めたい。」
「ほかの障害者の方にも、あっこういった道があるんだ。」と、知ってもらいたいということでした。
障害のあるプレーヤーの活躍に注目
今年(2019年)5月下旬、北海道の病院で入院生活を送る吉成さんに、ビッグニュースが届きました。
全国大会で準優勝した高校生チームに、ネットでの対戦を申し込んだところ、快く応じてくれたのです。
試合当日、落ち着かない様子の吉成さんでしたが、試合が始まると表情が一変。
デバイスを巧みに操作し、相手チームに挑みました。
全国準優勝の高校生たちに及びませんでしたが、大きな手ごたえをつかんでいました。
誰もが、対等に競い合うeスポーツ。
eスポーツが盛んなアメリカでは、障害のあるプレーヤーが大きな大会に出場し活躍するなど、注目を集めています。
日本でも今後、障害のあるプレーヤーの活躍の場が広がるかもしれません。