生活保護FAQシリーズ、今回のテーマは「大学等への進学」です。今の時代、自分がやりたい仕事をやるためにも、大学などに進学する必要がある場合も多いと思います。しかし、残念ながら生活保護を利用している人の大学等への進学率は平均よりもはるかに低いのが現状です(次表参照)。
生活保護を利用していて大学に行きたいとき、どうすればよいのでしょうか?今回はこの点について紹介したいと思います(夜間大学や通信制について別途紹介します)。
大学等への進学と「世帯分離」
生活保護世帯の大学等進学率が低い最大の原因は「生活保護を利用しながらの大学進学」は原則として認められていないという点にあります。しかし、上に見たように進学している人は少ないとはいえいます。どういうことかというと、「世帯分離」という取り扱いをすることによって大学等進学が可能になっているということです。
「世帯分離」というのは、実質的に同じ世帯に属する人であっても、特定の人だけ生活保護の対象から外すという仕組みです。例えば、両親と子ども1人の3人世帯で生活保護を利用しているときに、その子どもが大学等に進学する場合、たとえ子どもが両親と同居しつづけていたとしても、その子どもだけ生活保護の対象外となります。したがって、その分だけ保護費は少なくなります。
この場合、大学等に進学する場合は生活費や学費のすべてを子どもが自分で工面しなくてはならなくなります。しかも、生活保護世帯から大学等(一部除く)に進学する場合には奨学金(現状では実質借金)を借りることも条件とされています。生活保護世帯の大学進学率が著しく低いのにはこれらの事情があります。
※なお、詳しい条件については末尾の相談先までご相談ください。
進学準備のお金はどうするの?
大学に進学する上では学習塾の費用や入学料などのさまざまな費用がかかります。残念ながら生活保護制度はこれらの費用は保護費として支給されません。しかし、これらの費用について全く考慮されていないわけではありません。
生活保護制度には「高等学校等就学費」というものがあります。しかし、これは高校の教材の費用などを対象としたもので、学習塾の費用や大学等への入学料などは含まれません。そこで、生活保護制度では、自治体などからの「恵与金」や公的な「貸付金」、あるいは本人のアルバイト収入はこれらの費用に限り収入として見なさない(認定除外される)こととされています。
ただし、必ず事前に相談の上、貸付金やアルバイト収入などの収入申告は忘れずにしてください。
2018年度から変わったこと
ところで、大学等への進学について今年大きな変化がありました。そのうちの1つが大学等への進学に際する住宅扶助費の取り扱いです。先ほど述べたように、世帯分離をする場合には生活保護費がその分だけ減ることになります。しかし今年から大学等進学にともない世帯分離をする場合、住宅扶助分に関しては据え置きにすることとなりました。つまり、上記の例で言えば生活扶助は2人分になるが、住宅扶助は3人分支給されるということです。
また、今年の法改正で、大学等に進学する際、転居をする場合には30万円、転居をしない場合には10万円が「進学準備給付金」として支給されることとなりました。進学をする際にはなんだかんだでお金が必要になるので、こういった新しい仕組みについても積極的に使っていきましょう。
最後に
今回は生活保護世帯の大学等への進学について取り扱いました。近年、大学等進学のハードルは少しずつ下げられてきましたが、残念ながら依然として生活保護世帯で大学等に進学するのは厳しい状況です。本来であれば、そもそも「世帯分離」をしなくとも大学等への進学が認められるべきでしょうし、生活扶助費も据え置きとされるべきでしょう。進学準備給付金もないよりは良いかもしれませんが、これだけで進学率の格差が埋まるとも思えません。生活保護世帯の大学等への進学についてはまだまだ改善の余地があります。〈もやい〉では大学等進学も含めてさまざまな点について厚生労働省に対して政策提言を行っています。よろしければこちらもご覧ください。
大学等への進学について、もしわからないことがあれば下記の相談窓口までご相談ください。
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