@chablis777
シャブリ

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雪次郎君が 川村屋を辞めて役者になると言いだしてから 数日なつは 牛若丸と馬の動画にてこずっていました。
(なつ)はあ… よ~し…。
ああ…。
その日 なつは 久々に徹夜をしました。
よいしょ…。
ん~…。
ん?
あっ! おじさん?
おばさん… とよばあちゃん…!
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
おじさん おばさん とよばあちゃん…!
(雪之助)おはよう。(妙子)お久しぶりね なっちゃん。
(とよ)なっちゃん! やっと会えたわ~!
とよばあちゃん!
雪次郎から手紙もらって飛んできたんだわ。
ああ… 雪次郎君に会ったの?
それが… あの子いないんだわ。
え… 雪次郎君がいない?
川村屋の部屋を 勝手に出てったみたいだ。
とにかく なっちゃんに会えたんだから…。
なっちゃん 悪いけどどっか座らせてくれんかね。
もう こわくて こわくて…。
どうぞ 中…。悪いね…。
よっこらせ よいしょ よっこらせ…。
どっこいしょ。 ああ やっと落ち着けた。
はあ…。
あっ あ~ら… いやいや これはまあ どうも どうもなっちゃんが いつもお世話になっております。
(亜矢美)はあ…。とよばあちゃんです。
あっ あの… 雪次郎君の家族です。
あっ じゃ 北海道から?
あの~ 私は 以前 ここにお邪魔しました雪次郎の父親です。
あっ あ~…!
私は 母の妙子です。
ここに なっちゃんが住んでると聞いていたので朝早くから押しかけてしまってどうも すいません。
いえ いえ…。あっ あの この人 亜矢美さんです。
あの 何て言うか…。知ってるよ。
なっちゃんのお兄さんを拾ってくれた人だべさ。
拾ったって言うなよ…。
あっ あれがお兄ちゃん。
あれが?久しぶりだね。
(咲太郎)あっ… どうも。
まあ…かっこいいお兄ちゃんね なっちゃん。
いや おばさん そんなことないから本当 だまされないで。えっ?
この人は 男見る目がないからね。ん?
ちょ… 誰の息子と結婚したんですか。
あっ あの よろしかったら どうぞ 奥へ。
あんた…。あっ いてっ…。
♪~
ねえ お兄ちゃん雪次郎君がいなくなったみたい。
へえ… そうなんだ…。
申し訳ないが 川村屋が開くまでここに いさせて頂けますか?
いくらでも  どうぞ。狭っ苦しくて すんません…。
なっちゃんは 仕事 大丈夫なの?
ほら やっとやりたい仕事に就けたでしょや。
今日は日曜日だから 大丈夫。
あっ そっか… 日曜日か。
3人で来て大丈夫なの? 雪月は。
(雪之助)それどころじゃないからね。あ…。
思い切って 3人で来たんだわ雪次郎さ会いに。
お店閉めて。
事によると 永久に閉まることになるかもしれないからね。
そんな…。
あら やだ 私 お茶も出さないで…。朝ごはん まだですよね?もう どうぞ お構いなく。
食欲もありませんから。
弁当も 夜行列車で食べてきたんで…。
あっ… そうだ あんた それ…。ああ ハハハハ…。
あの これ つまらないものですが どうぞ。
あ… お土産なんてそんなもの結構ですよ。
そんなもの?あ… せん越ですが土産は そんなものではありません。これでも 一応 十勝の銘菓です。
雪月のバター煎□。
おじさんの魂のお菓子。
魂…。
まあ それは それは 結構なものを…ありがたく頂戴いたします。
どうぞ。
じゃ 粗茶だけでも…。
あっ 私も行く。えっ…。
♪~
すいません。大丈夫 大丈夫。
あっ… こっちがいいか。
ダメだって!おじさん酔わしたら どうなるか…。
そうだね。お茶で。
それで あいつはあなたのいる劇団を受けたんだね?
はい。あなたが誘ったのかい?
違いますよ。
けど… そんなに いけないことですか?えっ?
雪次郎が夢を追っちゃそんなに いけないんですかね?
あ… 店が大事なのも分かりますが雪次郎の夢だって大事じゃないですか?
夢を追うのはいいけどね。それが幻だったらどうすんの?
幻でも いいじゃないですか。
夢か幻か 追ってみなければ分かりません。
(とよ)へえ~ 立派なこと言うね。いや それほどでも…。
(とよ)褒めてないわ。えっ?
そんじゃ 誰でも雪山に登ってみなけりゃ登れるか死ぬかも分からんと言ってんのと同じだべさ。
(妙子)お義母さんそれは ちょっと極端でしょ。
そんなことないべ。 食えなきゃ死ぬべ。
雪次郎はね 菓子職人になるっていうちゃんとした夢あったんだ。
だから それを 本人が幻だと思ったんでしょ。
しょせんは 親の決めた夢だって。
お兄ちゃん 言い過ぎだってば!
君はどうなんだ? うん?
夢だか幻だか知らんけど借金作って 警察の世話にもなってなっちゃんに迷惑かけてばっかだべ。
いや おじさん今は そったらことないから…。
あんた ちょっと言い過ぎだわ。
俺と雪次郎は違いますよ。
親のくせにそんなことも分からないんですか!
雪次郎のことを信じてやればいいじゃないですか。
信じてるからこうやって飛んできたんだべ。
もう これ以上あいつの人生 狂わさんでくれ。
頼む。
おじさん… 雪次郎君は全部 一人で決めたんです。
どこにいるか お兄ちゃんも知りません。
(小声で)それは知ってる。
あ… それは知ってるそうです。
えっ!?
雪次郎に相談されて俺が出ろって言ったんだ。
(4人)はあ!?咲太郎 やっぱりお前か!
今 親に会ってしまったら絶対に 決意が揺らぐって…。
あいつはやっぱり諦めるしかないって言うからだったら 先に川村屋を出てしまえって言ったんだ。
お兄ちゃん!部屋は 俺が用意した。
どこだ? そこ。
実は あいつ劇団の研究生に受かったんですよ!
えっ?俺は 裏方で潜り込んだだけですけど雪次郎は 正々堂々と試験を受けて役者としての素質を認められたってことです。
その倍率は10倍です。10人に一人の狭き門を突破したんです。
本当かい?喜んでる場合じゃないべ。
そんなにいるんかい役者になりたいなんて若者が 東京には。
そうです。
どうか 祝ってやって下さい!
バカ! 言うタイミングが違うんだよ!えっ?
その前に どこにいるの?
雪次郎君 どこに隠したの!?
ちょ… どこ!ねえ 教えて!
しゃべれ!
レミ子と同じアパートだ。
たまたま 隣の部屋が空いてたから。
じゃ… すぐ行きましょう。
いや… その前に川村屋に挨拶するのが筋だべ。
うんだ うんだ…。
この度は まことに申し訳ございませんでした!
(光子)そんなことは やめて下さい小畑さん!
(野上)されると思いました。
本当に 息子と孫が2代にわたってお世話になっておきながらとんだご迷惑をおかけして…。
本当に すいませんでした!
いいんですよ うちは。
それより せっかく北海道から いらしたのに会わせてもやれないこちらが恥ずかしいです。
マダム雪次郎君の居場所は分かりましたから。
えっ そうなの?
まあ どうか座って… お話ししましょう。
職長も参りますから… ね。
お言葉に甘え… いてててて…。
すいません お嬢さん…。マダム。
あっ…。マダム…。
(光子)いや もう 本当いいですから。
(杉本)雪次郎君は 至って真面目に修業されてましたよ。
本当ですか?
本当です。
だから 私も いなくなるのが残念でつい 少し きつい言い方をしたかもしれません。
いえ… ありがとうございます。
あの子は真面目だから…真面目なまま 道を外れたんだね。
あの子は ここで 決して皆さんにご迷惑ばかりおかけしてたわけじゃないんですね?
(杉本)そんなことはないです。彼に やる気がないとは一度も思ったことはありませんでした。
私も てっきり 雪次郎君はお菓子作りが好きなんだと思ってました。さすがは 小畑雪之助さんのご子息だと。
それだけの修業を捨てる覚悟をしたんかいあの子は…。
何言ってんだ。そんなもの覚悟じゃない ただの甘えだ。
覚悟だべ! あんた こんだけ真面目に…。甘えだべ! こんだけ迷惑かけて…。大体 お前が甘やかすから…。あの!
雪次郎君は 本気です。
本気で 演劇が好きなんです。
だから 雪次郎君も苦しいんです。
それだけは分かります。
(雪次郎)えっ 3人で来たんですか!?
うん。もうじき ここに やって来ると思う。
そ… そんな急に…それはないっしょ 咲太郎さん!
お前は 逃げたんじゃないだろ?
覚悟して ここに来たんだろ?
あとは お前が説得しろよ。
それができたら ここにいないですよ!
情けないな…。
本当に 家族を捨てる覚悟があるのか?お前。
俺は お前を隠したんじゃないぞ。
お前の覚悟を後押ししただけだよ。
本当に やりたいことがあるならどんなことにも 正面から向き合えよ!
(レミ子)来たわよ!
じゃ そういうことだ うん。ちょっ… 咲太郎さん!
いないって言って下さい…。
おい おい… ちょ ちょ ちょ ちょ…!
雪次郎!
♪~
雪次郎!
元気かい?
雪次郎君 黙って いなくなるなんてそれはないっしょ。
ああ 雪次郎の運命やいかに…。


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