吾輩は猫である ~名前はマダナイ~   作:大三元
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シャルティアは幸せの真っ最中だ、もふもふでふわふわな至高の御方を胸いっぱいに抱きしめているのだから、周りで吸血鬼の花嫁が下等な物を次々に殺戮してようが歩いている場所が薄汚い洞窟内だろうが気にならない。

 

「あぁ、マダナイ様ぁあ」

 

もうたまらないっといった感じでマダナイの顔に自身の頬を擦り付ける、マダナイはまんざらでもない様子らしく先ほどからされたい放題だった。

しかしこの幸せそうな二人の時間を邪魔するものが現れた、それを知るきっかけは吸血鬼の花嫁の悲鳴である。

 

「ヴァンパイア… か」

 

そう言い現れた人物は青髪で無精ひげを生やした男であった、手に持つ得物は刀である。

 

「おいおい猫なんか抱きかかえて随分ゴキゲンじゃないか」

 

シャルティアはその男を睨む、至高の御方であるマダナイを猫呼ばわりしたから、しかし手は出さなかった、なぜなら胸元でマダナイが手出し無用を言い渡したからである。

 

「ほぅ、いい目つきだな。 しかs「にゃぁん!」

 

男のセリフを遮るようにマダナイはシャルティアから離れ声を上げる、着地と同時に人型になる事をしながら。

男は驚く、誰だってただの猫が人型の猫に一瞬で変わったら驚くだろう。

 

「猫もただの猫じゃなく化け猫だったとは驚いた」

 

この言葉でシャルティアと吸血鬼の花嫁は男を睨みつける、しかし男も殺気には慣れているのか動揺もせず手に持つ得物を鞘へ納め身構える。

その間マダナイは顎に手を当てほほぉっといった感じで男を見つめていた。

 

「ブレイン・アングラウスだ」

 

「吾輩は猫である、名前はマダナイ」

 

男はブレインと名乗る、それに倣いマダナイも名乗る、二人は自己紹介を終えるとグッと身構える。

両者共に動かない、ブレインは既に武技を発動させている。

マダナイは相手が準備を整えたのを見計らい相手の胸目掛け飛び込んだ。

武技の効果範囲に入った瞬間ブレインは刀を振るった、その一撃は知覚不能な一撃だったはず、しかし蓋を開けてみればマダナイには遅すぎた様だ。

いとも簡単に懐へ潜り込んだマダナイはその勢いのままブレインを押し倒す、そしてそのまま顔面に狂暴な前足の肉球をめり込ませた。

ムニュムニュと押し付けられる肉球、自身の武技「秘剣虎落笛」を破られた事と理不尽にも顔面に押し付けられている肉球のせいで一瞬何が何だか分からなくなる、しかし直ぐに狂気に戻ると己の足でマダナイを突き放そうとする。

マダナイは突き放そうとする足をバックステップで回避すると再び身構える。

その間戦闘を見ているシャルティア達は羨ましそうに目を細めていた。

 

「ちっ! 化け物め!」

 

起き上がり再び刀を構えるブレイン、刀を構えたはいいがもう相手には敵わないと心の中で思ってしまったために動く事すらできない。

 

「ふむふむ、なるほどなるほど… いいねぇ」

 

マダナイは笑顔になる、傍から見たらかわいい顔なのだがブレインからしてみれば悪魔の微笑みでしかない、もう駄目だ、どうしようもなくなったブレインは涙を流しながら奥へ逃げて行ってしまった。

 

「マダナイ様、捕まえましょうか?」

 

吸血鬼の花嫁が提案するがマダナイは却下した、マダナイなりに何か考えがあるのだろう、吸血鬼の花嫁は素直に従った。

その後は再び猫の姿になってシャルティアに抱かれながら奥へ進む、先ほどと変わらない吸血鬼の花嫁の虐殺タイムである。

 

 

 

 

最奥まで進むとそこには裏口があった、ブレインとやらに会わないなと思っていたシャルティア達であったがこれで合点がいった、死体の回収やら捕まっている女共をナザリックに送る仕事があるのだが先に何処につながっているか確かめるために外へ出てみることにした。

裏口の先の光景は何とも言えない状況だった、冒険者らしき一団が列を成し身構えているからである。

 

「推定! ヴァンパイア! 銀武器を用意しろ!」

 

冒険者の魔法詠唱者が声を荒げる、それに従い他の者達は各々準備を進める。

シャルティアと吸血鬼の花嫁が身構えるがそれ以上は何もしなかった、又してもマダナイに止められたからである。

準備が整い冒険者達が戦闘状態に入ろうとした時マダナイが人型に変化する。

先ほどのブレイン同様冒険者達も驚く、マダナイはそんな事お構いなしに言葉を発した。

 

「吾輩は猫である! 名前はマダナイ!」

 

胸を張り声高らかに宣言するマダナイ、シャルティア達はその場で跪き冒険者達はその光景を見て動きが止まる。

 

「吾輩達は敵ではなぁあい! 故に武器を降ろせぇえい!」

 

尚も固まる冒険者達、何を言っているのか解らないからである。

しかしこの冒険者一団のリーダーであろう人物だけはその発言に従って己が持つ剣を鞘へ納めた。

 

「敵… ではないのだな?」

 

「敵ではないのである、なぜなら吾輩は猫であるからして」

 

半信半疑ではあるものの話が通じるのであるからまだ何とかなるだろうとリーダーらしき者は他の者に武器を仕舞わせた。

それを確認したマダナイは軽く頷き冒険者達へ歩み寄った、まだ信じ切ってない者達は再び武器を抜こうとしたがマダナイの行動を見てそれを取りやめた。

歩み寄ってきた化け猫は右手を差し出して握手を求めてきたからだ、裏があるかもしれないと思いつつもリーダーらしき者はそれに応じて握手をする。

もにゅっという肉球の感触、あぁこれは良い物だと顔が少しほころんでしまった。

 

そこから話し合いが始まった、冒険者達はなぜこの様な事になったのか、なぜ貴方の様な者がここに居るのか、なぜあの吸血鬼達は貴方に従っているのか等聞かれた、マダナイはそれを適当に誤魔化した、この様になったのは襲われたから、ここに居るのは旅の途中でたまたま居合わせただけ、この吸血鬼達は友達なんだと。

マダナイからはなぜ冒険者である貴方たちがここへ来たのか等を聞いた、答えはここに居た盗賊団の調査をしに来たからである。

 

「いやぁ~マダナイさんがおっかない化け物じゃなくて良かったです」

 

「当然だ、私はワーキャット、猫人だ。 化け物じゃない」

 

何とか誤解は解けた様であったがシャルティアが冒険者に突っかかろうとする度にマダナイが「お座り!」っと言って宥めていたのであった。

その後お互い納得したうえで解散となった、惜しい事に洞窟内の物は冒険者達がギルドに報告するためそのままにして欲しいと言って来たので諦めた。

今回の騒動で得た物はあまり無かった為これではモモンガに怒られると思いシャルティアにお願いして眷属を出し近辺の森の調査をする事に。

言い訳の為だけに眷属を森へ向かわせたのだったがここで思いもよらぬことが起きた、それは眷属の一体が森の中で殺されたのである。

この森にはそこそこ強い奴が居るのか、ならばモモンガへ報告する為に確かめに行かないとっという感じでシャルティアを連れてその眷属が殺された場所へ歩いて行ったのであった。

 

 

 




あーもうめちゃくちゃだよぉ


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