吾輩は猫である ~名前はマダナイ~   作:大三元
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「キッ!貴様等ぁ!この獣達をぉぉお!うゎぁああああ!」

 

ロンデス・ディ・グランプはうらや……… 恐怖した、隊長であるベリュースが今まさに獣達に飲み込まれたからである。

その獣は所謂家猫と呼ばれる種のものだ、その猫達が今ベリュースを押し倒し身体中のあちこちをその狂暴な前足の肉球でもみくちゃにしているのである。

一匹二匹程度なら何とかなっただろう、しかしその数は膨大、今も他の隊員達も押し倒されている、あぁ私も早くもみくちゃにされたい。

 

カルネ村の住民達も恐怖していた、何処からともなく現れた猫達によって村を襲った騎士たちが全員戦闘不能になったからである。

そして現れた猫達は次の標的と言わんばかりに村人たちに襲い掛かった、ある者はその狂暴な猫になすすべもなく膝上を寝床にされ、またある者は猫を抱きかかえるといった強攻に打って出ている。

猫達は唸っている、それはもう恐ろしく目を細めながらゴロゴロと。

しかしこんなしあわ……… 恐怖もすぐに収まった、それはこの猫達の主であろう人物が現れたからだ。

その人物も猫だった、いや正確には人型の猫だ、毛並みは茶色で所謂トラ模様でとてもフワフワでツヤツヤだ、着ている服は何処か気品ある物で一見しただけでとても高級な物だと解る。

 

「諸君、ご苦労である」

 

その人猫が手を上げ一言述べると先ほどまで溢れんばかりに居た猫達が一瞬にして消えたのである。

村人も騎士達もざんね……… 安堵しているようだ、しかしその安堵もつかの間、次に現れたのはそれはそれは恐ろしいアンデットと漆黒の鎧に身を包んだ騎士が現れたからだ。

 

 

 

それからはいろいろあった、騎士達を忍ばせておいた部下達に運ばせナザリック送りにしたり村人から恐れられたのを何とか話して落ち着かせたり暴れるアルベドをマダナイさんの力を借りて宥めたりした、そして村長からこの世界について、正確には近隣諸国について聞いたり一般常識等を聞いた。

そんな時名前を聞かれた、初めは偽名としてアインズ・ウール・ゴウンを名乗ろうとしたのだがそれをマダナイに止められた、やはり偽名は良くないな、後でボロが出たら恐ろしい。

 

幾時間か村長と話、情報を得た後ナザリックに戻ろうとした時村に新たな一団が迫ってきた。

また面倒なと思っていたのだが現れたのはこの国を治める王国の戦士長だと名乗る一団だった、最初はこちらがアンデットである事で険しい顔になっていたのだが村長達の発言で態度は急変、馬に乗っていた戦士長は馬から降り深々と頭を下げ礼を述べたのであった。

戦士長はガゼフ・ストロノーフと名乗った、このガゼフの言うには最近帝国騎士が辺境の村々を襲っているのでその討伐に来たとの事。

ほう、そうなのか等と考えている時ふと隣が気になり目を向けるとそこには地べたに座るアルベドの膝の上でスヤスヤと猫形態で眠るマダナイの姿があった。

ガゼフ達もその姿に気が付いたようだ、一部の者の口はほころんでいるように見える。

そんな時一人の兵がガゼフに報告に来た、なんでも村を取り囲むように接近してきている一団が居るのだと。

 

 

 

「確かにいるな」

 

村人達と兵を建物に避難させ辺りを見渡すガゼフ、そこには報告通りの状況が広がっている。

彼の者は何者かをモモンガが問うとガゼフはスレイン法国の者だと、そしておそらく特殊工作部隊である六色聖典のいずれかだろうとの事だ。

 

「憎まれているのですね、戦士長殿は」

 

「本当に困ったものだ、まさかスレイン法国にまで狙われているとは」

 

こんな風に話している間モモンガは外の一団がなぜユグドラシルと同じモンスターを使役しているのだろうかと召喚されたであろうアークフレイム・エンジェルを見て思う。

 

「モモンガ殿、良ければ雇われないか?報酬は望まれる額を約束しよう」

 

「お断りさ「待った!」」

 

モモンガの声に被せる様にマダナイが声を上げる、先ほどまで猫の姿で呑気に寝ていたはずなのだが今は人型になっている。

 

「ガゼフ・ミートローフさん、雇われようじゃないか、その代わり1つ条件がある」

 

ガゼフはストロノーフなのだがと小さく呟くがそんな事よりも先ほどまで居なかった亜人に驚いた、しかし協力してくれるという事なので話を進めることに。

 

「それはありがたい! っで条件とは如何に」

 

「それはあの者達の討伐は私達三人で行うって事です、心配なら貴方一人だけなら同行を許可しよう」

 

この猫の亜人のいう事に最初は無茶だと思った、アンデットと亜人、それだけで人間よりは強いとは思うが流石に相手は特殊部隊勝ち目は無いと、がそれは王国軍とて同じ事、ならばと手を取りその条件をのんだ。

 

「わかった、その条件をのみましょう」

 

 

 

 

ニグン・グリッド・ルーインは落胆した、あのガゼフ・ストロノーフが亜人とアンデットだけを引き連れて現れたからである。

 

「ノコノコ殺されに来たかガゼフよ、でその者達はなんだ?人間でありながらアンデットや亜人を引き連れるなど反吐が出る」

 

「初めましてスレイン法国の皆さん、私の名前はモモンガ、こっちはマダナイだ」

 

ニグンの言葉などどうでもいいといった感じでモモンガは挨拶をする、マダナイはモモンガの後ろから顔を覗かせている状況だ。

相手の力量が解らないのでニグンは数体のアークフレイム・エンジェルをガゼフ一行に突撃させた。

しかしその攻撃が通る前に天使達は光の粒となり消えて行った。

 

「一体何をしたアンデット!」

 

「ふむ、やはりユグドラシルと同じ天使の様だな」

 

ニグンの質問には答えない、ただモモンガは確かめるだけだ。

これはまずいと思いニグンは待機させていたプリンシパリティ・オブザベイションに攻撃を指示した。

しかしそれをアンデット、モモンガは片手を翳しただけで消滅させてしまった。

その姿を見てスレイン法国の兵、陽光聖典の者達は恐怖に支配される。

まずい、これは途轍もなくまずい、ニグンは今用いる最上級の駒を使う事にした、それは神官長から賜った最上位天使が封印された水晶だ。

その水晶を見てモモンガは驚いた、なぜならその水晶はユグドラシルのアイテム「魔封じの水晶」だったからだ。

 

「魔人さえ消滅させることが出来る御業をとくと味わえ!」

 

ニグンは勝ち誇った顔で言い放つ、その間モモンガはと言うとマダナイに耳打ちされていた。

そして頷くとモモンガから魔法陣が出現した、それは今まで見た事が無い物だったと後にガゼフは語った。

モモンガが何かを握りつぶす、その瞬間空が割れ溢れんばかりの輝きと共に見た事が無い見目麗しい天使が6体現れたのだった。

 

「な……… あり… えない…」

 

先ほどまでの余裕が陽光聖典から消えた、あの忌々しいアンデットがニグンの召喚した天使よりも上位の天使を、しかも6体も召喚したのだから。

一瞬にして勝敗は決した、モモンガが召喚した天使達はニグンが召喚した天使を一瞬のうちに葬ったのだから、そしてニグンは気づく…いや陽光聖典の全員が気づく、このアンデットは、いやこの御方は神であらせられると。

 

「あ…貴方は… 神… そう!スルシャーナ様であらせられるのですね」

 

ニグンは自分の中の知識にある神、死の神スルシャーナ様だと確信したがモモンガの次の言葉でそれは否定された。

 

「スルシャーナ? 先ほども言ったが私の名前はモモンガだ、スルシャーナではない」

 

否定されたがこの強大な力、やはり神だと信じて疑わない、ならばとニグンはあの言葉を発したのだ。

 

「では… 貴方様はぷれいあーでございますね」

 

「プレイヤー?あぁユグドラシルプレイヤーの事?うんそだよ」

 

今まで特に話の輪に入っていなかったマダナイが答える、モモンガは片手で両目を多いアチャーっといった感じになる、後日モモンガに怒られるマダナイの姿がモモンガの自室で見られたとか見られなかったとか。

 

 

 

 



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