地域包括ケア病棟
 今年10月7日のブログ記事「地域包括ケア病棟の行方」を紹介しました。この記事に記載している内容について、医療機関から質問のコメントを寄せられましたので回答させて頂きます。
 内容としては、7対1入院基本料を算定する病棟内で地域包括ケア入院医療管理料を病室単位で届け出る場合の看護配置についてです。13対1の看護配置である地域包括ケアと7対1の看護配置をどう捉えれば良いのか、厚労省が発信する文章も少しややこしいため、混乱を生じやすい内容であります。根拠となる資料を紹介しながら、極力分かりやすく解説したいと思います。




地域包括ケア入院管理料の看護配置基準の捉え方

 まず、頂いたコメントの内容をご紹介します。

投稿者:noguchi 2014年12月15日 15:11 
 地域包括ケア病棟の行方の記述で「病室単位で導入する場合、その病棟は7対1の看護職員配置基準のもとでの人員配置とならざるを得ないためです。」とあります。
 また、別の資料ですが、病室単位で届け出る特定入院基本料の様式9の説明で「当該病室を有する病棟全体について定められた人員を満して様式9を届け出る」と書いてあります。これは診療報酬上、どのルールや通達なのか探していますが見つかりません。教えて頂けませんか。

 ご質問頂いた内容は、入院基本料の看護配置と特定入院基本料の看護配置の捉え方の2つに分解して考えると分かりやすいと思います。まず、入院基本料の看護配置基準の考え方について見ていきます。





7対1病棟の中に地域包括ケアの病床を含む場合
地域包括ケアの病床部分は13対1として良い?

 ブログ記事の中で書かせて頂いた部分を抜粋すると『病室単位で導入する場合、その病棟は7対1の看護職員配置基準のもとでの人員配置とならざるを得ないためです。』と記載しました。ここでは、7対1入院基本料を算定する病棟の中に地域包括ケア病床を届け出たとしても、看護配置基準は病棟全体で7対1を求められる事を指摘しています。この根拠となる資料は、入院基本料の施設基準の通則の中にあります。
 『次に掲げる看護職員及び看護補助者の数に関する基準については、病棟(別表第三に掲げる治療室、病室及び専用施設を除く。)の種別ごとに計算するものであること。』と記載されています。少し分かり難い表記の仕方をしておりますので、以下のように1つずつ分解して整理すると分かりやすくなります。

地域包括ケア入院医療管理料と看護基準






病床単位の届出があっても、病棟全体で看護配置基準を満たす事が必要です

 このように解釈すると、『各入院基本料の看護配置基準は、病棟全体で計算する(一部の特定入院料を除く)』となります。こう見ると、一部の特定入院料以外は、入院基本料を算定する病棟の中に病室・治療室単位の特定入院料を算定するところがあったとしても、病棟全体で入院基本料の高い看護配置基準を満たす必要があります。
 ここの除外される特定入院料に関して、該当する別表第三の病室・治療室の一覧を見ると、地域包括ケア入院医療管理料が含まれていないのが分かります。このため、7対1入院基本料を算定している病棟の場合、一部の病床で地域包括ケア入院医療管理料を届け出たとしても、看護配置基準は病棟全体で7対1を維持しなくてはなりません。
別表第三 看護配置基準の計算対象としない治療室、病室又は専用施設

 一 救命救急入院料に係る治療室
 二 特定集中治療室管理料に係る治療室
 三 ハイケアユニット入院医療管理料に係る治療室
 四 脳卒中ケアユニット入院医療管理料に係る治療室
 五 小児特定集中治療室管理料に係る治療室
 六 新生児特定集中治療室管理料に係る治療室
 七 総合周産期特定集中治療室管理料に係る治療室
 八 新生児治療回復室入院医療管理料に係る治療室
 九 一類感染症患者入院医療管理料に係る治療室
 十 短期滞在手術等基本料1に係る回復室
 十一 外来化学療法加算に係る専用施設






療養病棟で地域包括ケア入院医療管理料
該当する病室以外の看護配置基準は20対1のまま?

 このように7対1病棟に地域包括ケア病床を導入しても、看護配置基準は入院基本料が優先され病棟全体が7対1のままを維持せざるを得ません。逆にこの基準からすると、15対1入院基本料や療養病棟入院基本料の20対1、25対1の看護配置基準が優先されれば、地域包括ケア病床を導入しやすくなります。
 ご質問頂いた内容では、

また、別の資料ですが、病室単位で届け出る特定入院基本料の様式9の説明で「当該病室を有する病棟全体について定められた人員を満して様式9を届け出る」と書いてあります。

とあります。ここの資料は、保団連の「自動計算機能付Excel表(様式9)」の解説資料に記載されていたのだと思います。ここに記載されている内容としては、地域包括ケア入院医療管理料の13対1よりも緩い看護配置基準の病棟の場合、看護配置基準が高い地域包括ケア入院医療管理料の13対1を適用する旨が書かれています。これについては、地域包括ケア入院医療管理料の施設基準でその内容が定められています。

 結論としては、それぞれの入院基本料(15対1、20対1、25対1)を算定する病棟で地域包括ケア病床を届け出る場合は、病棟全体で13対1の看護配置基準を満たす必要があります。そのエビデンスとなる施設基準を以下に示します。
 地域包括ケア入院医療管理料1の施設基準の中に、『当該病室を有する病棟において、1日に看護を行う看護職員の数は、常時、当該病室を有する病棟の入院患者の数が13又はその端数を増すごとに1以上であること。』とあります。こちらも先ほどと同様に文章を分解して解釈してみます。

療養病棟における地域包括ケア入院医療管理料の看護基準




療養病棟で地域包括ケア病床を届け出るには
病棟全体で13対1以上の看護配置へ

 『地域包括ケア病床のある病棟の看護配置基準は13対1以上の配置とする』と解釈することができます。療養病棟や15対1を算定する病棟に地域包括ケア病床を導入した場合、看護配置基準は13対1が優先されます。この療養病棟からの地域包括ケア病床の届出については、日本慢性期医療協会が開催した今年の診療報酬改定説明会(2014年3月8日)で一戸和成課長補佐(厚生労働省保険局医療課)も同様の説明をしております。ご参考になれば幸いです。
【コンサルティング事業部 隅廣】


※実際に加算等の届出や運用にあたっては、管轄の地方厚生局にご確認の上、運用をお願い致します。