平成二十六年・沖縄全戦没者追悼式に臨み、沖縄戦において、家族を案じつつ、戦場に斃れた御霊、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に向かい、謹んで哀悼の誠を捧げます。
我が国の暦には、格別の意味をもつ日付があります。老いも、若きも、静かに目を閉じて、私たちが、どこから来たかを振り返り、自らに問う日であります。
そして、本日、また、その大切な日を迎えました。沖縄で失われた、二十万人もの尊い命、痛ましい犠牲、筆舌に尽くし難い苦難の歴史を経て、今を生きる私たちがあること、平和と、安全と、自由と、繁栄を、享受していることを、改めて、噛みしめる日であります。
沖縄の人々に刻み込まれた心の傷は、あまりにも深く、後の世に生を受けた者が、その痛みを分かち合えると思うことは、不遜でありましょう。しかし、より深く理解し、常に思いを致す。そうあり続けなければなりません。
私はいま、沖縄戦から六十九年を迎えた本日、全国民とともに、瞼を閉じて、沖縄が忍んだ、あまりに夥しい犠牲、この地に斃れた人々の流した血や、涙が、自分たちを今日あらしめていることを、胸に深く刻んで、静かに頭を垂れたいと思います。
その上で、これまで沖縄の人々がしてきたように、私たちの祖父母、父母たちがしてきたように、戦争を憎み、平和を築く努力を惜しまぬ国民として、私たちの住む世界をよりよい場とする歩みを、倦まず、たゆまず、進めていかなくてはならないのだと思います。
アジアの玄関口に位置する沖縄は、大いなる優位性と、限りない潜在力をもつ土地として、飛躍的な発展を遂げようとしています。沖縄の発展こそが、日本の未来を創ると言っても過言ではありません。私が、先頭に立って、沖縄の振興を、さらに前に進めて参ります。
申すまでもなく、米軍基地の集中が、今なお県民の皆様の大きな負担となっています。基地の負担を能うる限り軽くするため、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、「できることは全て行う」との姿勢で全力を尽くしてまいります。
結びに、この地に眠る御霊の安らかならんこと、ご遺族の方々の御平安を、心からお祈りし、私の挨拶といたします。
平成ニ十六年六月二十三日
内閣総理大臣 安倍晋三