吾輩は猫である ~名前はマダナイ~   作:大三元
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「おめでとうございます」

 

セバスが遠隔視の鏡の使い方をマスターしたモモンガに対して発した、モモンガはありがとうと言い返事をする、その間マダナイはと言うと器用にセバスの頭の上で眠っていた。

 

「ん? 祭りか?」

 

モモンガは人がいる場所を探して1つの村を発見する、何やら人が入り乱れている。

 

「いえ、これは違います」

 

セバスの言を確認するためモモンガは遠隔視の鏡の映像を拡大する、そこには鎧を着込んだ者が村人らしき者達を虐殺している所であった。

その光景を見てモモンガは思う、この世界に来る前だったら卒倒していたはずと。

 

「どういたしますか?」

 

セバスの質問にモモンガは即座に答える。

 

「見捨てる」

 

「畏まりました」

 

その時モモンガはセバスの顔をじっと見る、その表情はどこか懐かしい、そうたっち・みーを思わせる。

たっち・みーの姿だと解った時あの時、初めて会った時の事を思い出す。

駆け出しの時、それはユグドラシルで異形種狩り全盛期の時の事アンデットであるモモンガもその被害にあっていた。

一人でレベリングしている時に人間種のパーティーに運悪く出会ってしまいPKの餌食に会った、もう駄目だ、その時助けてくれたのはたっち・みーさんだった。

 

「何故見も知らない俺を?」

 

「誰かが困っていたら!助けるのは当たり前!!」

 

ビヨンビヨンと正義降臨のエフェクトを出しながら答えるその姿は今でもモモンガのあこがれの姿だ、その時一緒に居たマダナイの事も思い出す。

 

「骨かぁ、私猫だから………いや、吾輩は猫である、犬ではない、故に骨に興味なし」

 

たっち・みーの後ろから顔をだしキリッっとした顔のアイコンを出しながら発言するマダナイ、そんな事を思い出していたら寝ていたマダナイと目が合った。

 

「吾輩は猫である、故に気まぐれなのだ」

 

そう言ったかと思うと人型になりモモンガの方へ歩み寄る、そして映像を確認しモモンガに問う。

 

「ふむこれはこれは… モモンガさんは見捨てるのか、なら私は助けよう、だからモモンガさんも助けるよね?」

 

またしてもモモンガは昔の事を思い出した、あれはギルド結成して間もない時の事だ、ある人間種プレイヤーが異形種パーティーにPKされかけていた場面に出くわしたのだ、その時はモモンガ、ウルベルト、マダナイの三人で行動していた。

モモンガはあの時の事、自身がPKされていた時の事を思い出し助けないことにした、ウルベルトは己の信念によるものなのか助けないことにした、二人共根っこでは人間種プレイヤーを憎んでいたのだろう。

 

「ふむこれはこれは難儀だな、モモンガさんとウルベルトさん助けないんです?PKKギルドなのに、なら私は助けようかな~、だから二人共協力してくれるよね?」

 

と笑顔のアイコンを出し異形種パーティーに突っ込むマダナイ、仕方なく二人は動き出したのだ。

後になぜ人間種プレイヤーを助けたのか理由を聞くと「え?ギルドとして助けちゃ駄目だったの?なら猫の気まぐれと思ってて」とまたしても笑顔のアイコンを出し答えたのだった。

そうだ、人助けに理由なんてないんだ、困っている人を見てしまったのなら助ける、そういう考えの人達なんだと。

モモンガは笑う、あの懐かしい記憶に、まだ大切な仲間達はここに居る事に。

そこからモモンガは早かった、セバスにこの村に行く事、ナザリックの警戒レベルをあげさせる事、アルベドに完全武装で来るように伝える事を言い渡し転移門を開く。

 

「よっしゃ猫まっしぐだ!」

 

そういって転移門へ突撃するマダナイを微笑ましく見てからモモンガも転移門の中へ消えて行ったのだった。

 

 

 

村娘であるエンリ・エモットは今その短い人生を終わらせようとしていた。

いつもの様に村の皆と農作業に励み苦しいながらも楽しく生活を送っていた最中、帝国の騎士だと名乗る一団が村に攻めてきたのだ、母は殺され父も目の前で斬殺された。

自身は背中を斬られたがまだ何とか動ける、妹ネムだけはと森へ駆けたのだがそれも虚しく騎士に捕まってしまう、剣を振りかぶる、もう駄目だと妹を抱きしめ守る、その時騎士が何やら騒ぎ始めた。

何事かと騎士の視線の先へ目をやるとそこには禍々しい黒い空間が浮かんでいる、それを見ていると中から人らしきものが出てきた。

その者は獣なのだが人と同じように二足歩行で歩き人と同じように服を着ている、そしてその者が騎士に向かって手を翳すと何処からともなく猫の大軍が現れ追って来ていた騎士達を飲み込んだ。

 

「うん、テクスチャ変更は変わりなしだな」

 

何を言っているのか解らないがどうやら敵ではないらしい、そう思っていたら同じく禍々しい空間から恐ろしいアンデットが現れたのだった。

 

 

 

「モモンガさんこいつらクッソ弱いわ」

 

「そうか、まぁまだ村の方に居るだろうしそちらで実験してみようか」

 

二人はいつもの様に話す、しかし何処か楽しそうだ。

そこでふとモモンガが村娘に目をやる、背中に怪我を負ったらしい、ならばと下位ポーションを渡したのだがどうやら怖がられてしまっているらしい。

運が悪いことにちょうどその時アルベドが現れた、そしてひと悶着あったのだが何とかこの場を収めることに成功する。

そして村娘に守りの魔法をいくつかかけ村へ向かう事にしたのだった。

 

 

 



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