吾輩は猫である ~名前はマダナイ~   作:大三元
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モモンガの私室でモモンガとマダナイは見つめ合う。

 

「美の結晶………ただの骨にしか見えないのだが………」

 

「古より生きる伝説………ただのワーキャットにしか見えないんだよなぁ………」

 

二人は守護者から言われた事を思い出し呟く、その顔は何処か暗いものだ。

いったいどれだけ時が過ぎただろう、二人が揃ってため息をついた、そして何か打ち合わせしたでもなく話始める。

 

「これからどうしましょうマダナイさん」

 

「どうするって………まぁのんびりしましょうよ、せっかくですし」

 

「せっかくって、元のリアル世界に戻りたいとか思わないんですか?」

 

「う~む、特に思わないな、モモンガさんはどうなんだ?」

 

「俺も戻りたいとは思いません」

 

そしてまた黙る二人、それから時が流れてセバスが入室してくる。

それを合図にマダナイは自室に戻る事にしたのである。

 

 

 

自室に行くとそこにはメイドが控えていた、特に気にするでもなくマダナイは寝ることにしたのだった。

翌朝、マダナイが目を覚ますとそこには昨日と同じメイドが同じ位置に同じ格好同じ姿勢でいるじゃないか、これはなんだかなと思ったマダナイだったが下手に何か言うと昨日モモンガと話したそれらしく振舞うと言うのを破ってしまいそうだったので黙って見つめることにした。

なにやらもじもじし始めるメイド、それをジッと見つめるマダナイ。

しびれを切らしたのかメイドが話しかけてくる。

 

「マ、マダナイ様、どうか致しましたか?」

 

顔は赤くなり息が少し荒くなっている、何かしたか等考えたが答えは出てこなかったのでとりあえず返事をしてみることにする。

 

「いやなに、特にはないさ。そうだなぁ朝食を頼むよ」

 

そう言うとメイドは一礼し返事をすると部屋から出て行った、さてこれからどうするかと考えていた時モモンガからメッセージが来た。

 

『あ、起してしまいましたか?』

 

『今起きた所です、で何か用です?』

 

『はい、いろいろと試して気付いた事があるのでその事について話したいと思い………そちらに行ってもいいですか?』

 

良いですよと言うとモモンガは礼を言いメッセージを切ったのだった、そしてその直後ドアが叩かれる音がしたかと思うと朝食を持ってメイドが帰ってきたのだった。

いやぁ早いな等と呑気に考えているマダナイであったがやはりこの体でも腹は減るものだ、うまそうな御馳走を前にして些細な事は消え失せ朝食をとる事にした。

焼きたてのパンに何とも言えない美しいスープ、リアルでは到底味わえる事のない生の野菜に新鮮な卵で作られたオムレツにと色々な料理に手を伸ばすマダナイ、初めて味わう料理に無我夢中で口へ放り込む。

食べても食べても腹が膨れない、いや実際には膨れているのだがまだ食べたいと思う心がそう感じさせているのだろうか、一瞬にして全てを平らげるとメイドにおかわりを要求する。

メイドが一礼して食器を片付け部屋から出て行く、その時モモンガが到着した。

 

「食事中だったのかすまないな、また出直す」

 

「いやいい、何だったら一緒に食べるか?」

 

「あ、いや、私骨なので…」

 

あーとモモンガを見る、今の状況で食事をしたら床にこぼしてしまうだろうと想像に難くない。

無言で私の対面に座り話始める、ユグドラシル同様魔法は使える、これは私も見ているので解っている事だ、職業等もユグドラシルと同じで魔法職である者は斬撃武器は使えないらしい。

その様な話をしているとメイドがおかわりを持って戻ってきた。

それをもしゃもしゃと食べるマダナイ、気にせず話すモモンガ、一通り話した後マダナイはモモンガに聞いた。

 

「睡眠不要って言ってましたが昨日夜何してたんですか?」

 

「あぁ少し外を見に行っていてな、とても綺麗だったぞ」

 

モモンガは昨日何があったかを細かく話してくれた、デミウルゴスに変装がばれた事、マーレとアルベドに指輪を渡した事、セバスに叱られた事等を。

 

「とまぁこんな感じです、ではそろそろ私は戻ります、何かあればメッセージで知らせてください」

 

そういいモモンガは帰っていく、それを見送ると眠気に襲われた、あれだけ食べたのだ眠くなっても仕方がない、マダナイは二度寝することにした。

 

 

 

二度目のおはようだ、背伸びをして辺りを見渡す、やはりメイドは同じ場所に居る。

朝モモンガから聞いた話しを思い出しこちらも試してみることにした、それは形態変化、今は人型だが猫にもなれるのだ。

結果はユグドラシルの時と同じく猫になれた、茶色のトラネコ、うむ猫である。

この姿で動き回ってみようと思い扉の前まで移動するがここでふと気が付く、ドアに手が届かないではないか、そう考えた時にはもう既に扉は開いていた、流石ナザリックのメイドだ。

そして自由気ままに歩き回る、行き先など考えていない、フラフラと移動する。

すれ違う者皆に挨拶され礼をされる、なんだか体中が痒い、いろいろと動き回って行き着いた先は何やら出入りが激しい部屋の前だった。

中に入ってみるとそこはアルベドの仕事部屋だった様だ、立ち上がり挨拶しようとしたアルベドを止めマダナイは近づく、こうやって見上げるとアルベドは大きいのだと解る。

マダナイはアルベドを見上げる、そしてうずうずと体が疼きだす、それに耐えきれずマダナイはアルベドへ向け飛び込んだ。

 

「マ!マダナイ様いけません!こんな皆の前で!」

 

そうアルベドは言うが顔を見れば誰だって解る、とてもうれしいのだと。

口はにやっとなり端からは涎が出ているのだ、その光景を見ているついてきたメイドも顔を赤くしている。

そんな事はどうでもいい、今のこの場所がいいのだ、この様な事を考えながらマダナイはアルベドの膝の上で本日3度目の睡眠を始めたのであった。

 

 

 

 

 

 



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