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2019-06-24

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・「圧しながら引いている」という感覚が、
 もちろんいまでもうまく伝えられないでいる。
 文字通りに受けとってくれたらいい。
 指圧のことだと言えば、ちょっとわかってもらえるかな。
 かつて、機械が肩をもんでくれたり
 指圧してくれる電気じかけの椅子を買ったことがある。
 会社に置いておいたら、みんながよろこぶと思って、
 けっこう奮発したつもりで設置したのだった。
 「ほぼ日」より前の時代ね、東京糸井重里事務所のころ。
 ぼく自身も、しょっちゅうこの椅子に座るかと思ったら、
 あんがいそういうものでもなかった。
 「あー、らく」だとか「いいねぇ〜」だと言う期間も、
 せいぜいひと月もあったか、なかったか。

 この電動あんま椅子(仮に「イスッチ」と呼ぼう)は、
 とてもまじめで一所懸命なやつだった。
 強くと指定すれば強く、長い時間やれと言えば長く、
 ご主人様のお望み通りに圧したりもんだりしてくれた。
 しかし、イスッチ、しょせんロボットなんだよなぁ。
 「圧す」が、ほんとにただの「圧す」なのだ。
 いやもっとつまらなく言えば、「圧す」というより、
 指の役割をしているゴムが、何センチか縦に移動する。
 移動した分だけ、人の身体を圧すという結果になるのだ。
 その圧すというか移動の速度がゆっくりだから、
 人の指がやることに似ているようにも感じているのだが、
 イスッチよ、圧してる身体のほうの状態を、
 もっと確かめながらやってくれないと困るんだよ。
 このまま圧したら痛く感じるかな、あるいは
 もっと深く圧してほしいのかな、ということを、
 人間の場合は指で探りながら指圧をしているのさ。
 指が、圧される側の身体に相談しているんだよ。
 それは、いわば「圧しながら引いている」感じなんだ。
 イスッチ、わかるか、相手はただの肉塊じゃないんだ。
 神経が通っていて痛みも快感もある、人の身体なんだよ。

 「圧しながら引いている」という指圧の感覚は、
 実際、あらゆるコミュニケーションのなかにある。
 命令なり指示なりが実行されるだけじゃなくて、
 「お願い」みたいなことで動くものごとがあるだろ。
 ここらへん、とても重要なことだと思っているんだ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
指圧のうまい人はなにやってもうまい説、あると思うな。


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