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ノベルゲームをタイピングして小説っぽく。

探偵 神宮寺三郎 白い影の少女【13】



・・・


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「事態は悪くなる一方だな・・・」
「では、急ぎましょう」
「ああ・・・」

 



・・


・・・・・・


新宿西小学校へやって来た。


「ここに貴之君達はいるのですかね・・・」
「ああ、いるとしたらこの辺くらいだと思うが」
「では、早速、探してみましょう」
「ああ」



・・・


ここも駄目か・・・。



「先生、校庭も見て行きましょうか」
「ああ、そうだな・・・」


校庭内を見回したが、やはり貴之達やゆうを見つける事が出来なかった。


「ここにもいないとなると厄介だぞ・・・」
「他に貴之君達が立ち寄りそうな場所は知らないのですか?」
「・・・残念ながら、分からない。
こうなったら街を探すしかないのか・・・」
「・・・でも、街を探すとなると途方もない事に・・・」
「・・・とりあえず、哲三さんが見つけたかもしれない。
一旦、新宿中央公園に戻ってみるか」
「見つかっていればいいんですが・・・」
「・・・・・・」

 



アジト 午後5時58分 藤村貴之

 

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「じゃーん! そしてここが俺達のアジトだ。 すげーだろ!」
「小汚いアジトだけどね」
「いいじゃねーかよ。
立派なアジトだろ。いちいちケチつけんなよ」


「もう少し片づけた方がいいと思うな、やっぱり・・・」
「ちょっと散らかってた方がアジトらしいだろ?
おい、遠慮しないで入って来いよ・・・」


「おうち・・・すごいねぇ・・・」
「な、すげーだろ?
これからは自由に出入りしていいんだからな」


「そうそう、なんてったって僕達は仲間だもんね」
「最初は女なんてとか言ってたくせに」


「仲間になったら男も女も関係ねーよ」


「二人と二人で丁度いいじゃないか」
「あ、そ。
あたしはもう帰るわ。今日は忙しいもの」
「もうちょっといいだろ。
せっかくゆうが新しく仲間に入ったんだぜ」
「寄り道し過ぎなのよ。
ここまで何時間かけてるのよ」


「仲間に俺達の縄張りを案内するのは当たり前だろ。
ゆうだって楽しかっただろ?」

「うん、ゆうもたのしかったよ」
「これからもっと色んなとこを案内してやるからな。
楽しみにしてろよ」
「うん。
たかちゃんありがとう」
「た、た、たかちゃん?」


「なに照れてんのよ」
「うるせぇな!」


「いいなぁ・・・僕、妹が欲しかったんだぁ」


「ともちゃんもみすずちゃんもありがとう」
「や、やだなぁ、トモヤでいいよ。
えへへへへ」


「みすずちゃん、そのおようふくどこでひろったの?」
「ひろった・・・?」


「ハハハ、そんな変な格好してるからだろ!」


「みすずちゃん、きれい。
ゆうもほしい」
「えぇっ。
嘘だろぉ?」


「・・・ま、まあ、そうね。
悪い子じゃないみたいね」


「ねぇねぇ、ゆう。
ほら、僕はどう?」
「ともちゃんもすてき」


「俺は俺は?」
「たかちゃんもすてき」
「へへへーっ」



「まったくオトコってどうして・・・」


・・・


「・・・!

ゆう、こっちに来い!」
「ええ?」


「ど、どうしたんだよ、貴之」
「・・・誰か来る」
「えっ・・・!」

 

 


・・・



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「・・・ほぉ、こんな場所にいたのか。
ずいぶん探し回ったよ」
「な、何者だ!」
「その子を渡してもらおうか」
「ゆうを・・・?
ゆうに何の用だよ」
「会いたがってる人がいるんでね。
さあ、こっちへ渡してもらおう」
「嫌だって言ったら?」
「俺は手荒な事は得意なんでね。
じゃあ、俺と遊ぶかい?」
「くっ・・・コイツ、なんかヤバいぞ」
「おいおい、どうした?」


「うん、うん、や、やばい」


「合図したら一緒に逃げるぞ。
ゆう、走れるな?」
「うん、がんばる」



「何をごちゃごちゃと話してる。
早速・・・」
「あっ、あぶない!
アンタの背中に白い・・・!」
「・・・ん?」
「バーカ、何もいねぇよ!」



・・・ガスッ!!



「ぐあああぁ・・・」
「へへ、逃げろぉ!」


「さぁ、ゆうちゃん、行くわよ!」




「く、くそっ・・・」




新宿中央公園入口 午後6時15分 神宮寺三郎



俺達は貴之達とゆうを一通り探し終えて、新宿中央公園へ戻って来た。


「哲三さんはまだ戻って来ていないようだな」
「・・・そうみたいですね」
「ここで待ってみるか」


・・・ん?


「おお、いた、いた。
アンタを探していたんだよぉ」
「・・・ん? どうした?」
「とくちゃんの家の場所がわかったんだよ」
「本当か・・・?」
「ああ、こんな時に嘘言ってどうするんだよ」
「・・・それで」
「ああ、そうだった。
西新宿8丁目から・・・向こうに行って・・・」


中西は俺に徳子の家の場所を丁寧に教えてくれた・・・。


「ありがとう、早速、行ってみる」
「ああ、オレもこの辺を探してみるわ」
「ああ、頼む」
「じゃあな・・・」



・・・
「よし・・・早速、徳子の家に行ってみるか」
「ええ、今度こそいてくれればいいんですけど・・・」
「ああ」




・・・


・・・・・・

 

 

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俺達はようやく、徳子の家にやって来た。


それは西新宿8丁目の外れにある、廃墟のような家屋だ。


ここにゆうや貴之達がいればいいが・・・。


とにかくここを探してみるしかないな。



「洋子君、ちょっとここで待っていてくれ・・・中を見てくる・・・」
「はい、わかりました」


俺は徳子の家の中へと足を踏み入れた。


子供が集めたような、壊れた玩具のようなものがいくつか散らばっている。


どうやらここで間違いないようだ。


辺りには誰もいないようだ。



・・・
周辺も含めて一通り探してみたが、ゆうらしき子供も貴之達も見つからない。


ここで探すよりは哲三と合流した方がよさそうだ・・・。


哲三の方が見つけたかもしれないしな・・・。


やれやれ、参ったな・・・。



「先生、やはり・・・」
「ああ、いなかった」
「・・・・・・」


徳子の家にもいないとなると、貴之達はどこにいるのか・・・。


「哲三が戻ってくる頃だろうし、新宿中央公園へ戻ろうか」
「そうですね・・・」

 



地下道 午後7時02分 藤村貴之

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「くっそ・・・あいつら、どこに行きやがった。
・・・ったく、足が遅いんだからよ・・・。
探すしかないか・・・。
世話のやける奴らだな!
とにかくあいつらを探して・・・。
ついでに逃げ道を何か役に立ちそうなものを探そう」



・・・

「床には何も落ちてないな・・・つまんねぇの。
おっ! これは・・・

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・・・何だ、ただのゴシップ誌か。
漫画かと思ったのに。
こんなの、別に面白くも何とも・・・。

・・・・・・。
い、いけねっ!

読みふけってる場合じゃなかった!



・・・地下鉄の路線の案内表だ。


今は関係ないな。金ないし・・・。


100円で使えるコインロッカーが並んでる、今は特に荷物もないし、関係ないな。


おっ、ここに通路の案内表がある。


えぇと・・・何かいい逃げ道はっと・・・。


なかなか、あの男をうまく巻けそうな所はないな・・・。


どっかにうまい事、抜け道とかあるといいんだけどなぁ・・・。

階段がある、ここを上がればアジトまですぐだな。


もし、いい逃げ道が見つからなかったら
アジトにまた戻る、っていうのも手かもな・・・。


この辺りはもういいか、もっと奥の方を探してみよう。




・・・

ここにも、あいつらいないみたいだな・・・。


・・・まあ、一応この辺りも調べてみるか。


・・・おっ、床にコインはっけ~ん!
って、何だ、これ?


・・・これじゃ何の足しにもなりゃしないな。


もう他にはなにも落ちていないな。


壁によくみかける扉があるけど、何の扉なんだろうな?


まさか、ここに抜け道が・・・。


・・・なんてわけないか。


何かの道具でも入ってるんだろ。


・・・口紅の広告だ。


春の新色がうんぬん書いてある。


美鈴とか、こういのやたら興味もつんだよなぁ・・・。


まだつけられもしないくせに、ませやがってさ。


こんなのしなくたって十分だっつーの。


口さえ開かなけりゃな・・・。




・・・


道が二股に別れている・・・。


さて、どっちに行くか・・・。


右に行けば、地上みたいだな。


左は・・・何だろう?


行くとしたら左か。


あいつら見つけてないのに、まだ上には行けないもんな。



じゃ、早速行きますか。




・・・。


何だ?
ここ・・・まずい所に来ちまったのかな・・・。


工事中って書かれている。


この中で工事をしてるのか?


・・・何の音もしないな。


こんな時間だからもう誰もいないのか。


・・・こんな所に扉が・・・。


おっ!鍵、かかってない!


よし。



・・・

「・・・おじゃましまーす。
・・・・・・。
誰もいない・・・のかな?


でかい木材がいくつも壁に立てかけられている。


・・・さすがにこれは持っていけないだろうな。


鉄パイプがいっぱい転がっているな・・・。


まあ、今は別に関係な・・・・・・待てよ。


そう言えば・・・。


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これ、よく漫画なんかで喧嘩の道具とかに使われてるよな。


これがあれば、あの男も撃退できるんじゃないか?


よし・・・!


持っていってみよう!


・・・工事現場でよく見かけるヤツだ。
えーと、フォークリフトとか言ったかな?


これが動かせれば、さっきの男も一発かもしれないけどなぁ・・・。


さすがに無理か・・・。



・・・


ん・・・?


奥に何か転がっている。


何だろ?


・・・何だ。ただのビニール袋だ。


中には・・・何も入ってないな。


ちぇっ・・・。


・・・・・・・ドラム缶だ。


中にはオイルでも入ってるのかな?


まあ、今は関係ないか。


・・・奥は真っ暗だな・・・。


先が見えやしない。


「おーいっ!!
誰かいるかー!?」


・・・・・・。


「誰もいないみたいだな・・・
しょうがない。外に出るか・・・
いつまでもここにいるのはヤバそうだしな。
ここはもう探してもしょうがない。
さっきの右の道の方に行ってみよう」


・・・


・・・・・・



「・・・ありゃ?
何だ、ここ・・・。
さっきの所じゃないか。
・・・つまり一周しただけって事かぁ・・・ハァ・・・。
しょうがない。
一応、またこの辺りを探してから最初の所に戻るか・・・」


・・・


「缶コーヒーの広告だ。
ノンシュガーブラックか・・・うぇ・・・。
想像しただけで苦いや。
こんなもん好き好んで飲む奴の気がしれねぇよ。
・・・この辺にはやっぱりいないみたいだな。
しょうがない、戻るか・・・」


・・・

「ん? あれは・・・
こんなところにいたのか・・・・全く・・・」


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「もう、貴之、何やってたんだよ」
「何言ってんだよ!
お前達をさがしていたんじゃないか!
ついでにこの辺をいろいろ調べてみたけど・・・」



「・・・で、どうするのよ?」
「・・・このまま逃げていても、らちがあかない。
ゆうと美鈴はここからまたアジトへ戻れ」
「何言ってんのよ!
あたし達はあそこから逃げて来たんじゃないの!
なのにまた戻れっての?」



「なるほど・・・。
確かにアジトが一番安全かもしれないね」
「ああ、向こうもわざわざまたあそこに戻ると思っていないだろうからな・・・」



「フン、わかったわ・・・。
・・・で、アンタ達はどうするの?」
「俺と知也がオトリになる。
その間にゆうと美鈴は逃げる・・・。
・・・わかったか?」
「わかったわ・・・」



「ええっ、何で僕が・・・」
「そんな事、言ってる場合じゃないだろ!
美鈴、いいな。

ゆうを連れて逃げるんだぞ」
「・・・わかったわよ」



「じゃあ、ゆう、美鈴と逃げるんだぞ」

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「うん、わかった・・・」
「じゃあ、ゆうは俺達の後ろに隠れてろ」
「うん・・・」



「僕、嫌だよ・・・怖いよ」
「嫌とか言ってる場合じゃないだろ。
早くしろ、あいつが来るぞ!
美鈴はこれを使え。
さっき拾ってきた。
アイツの後ろに回り込んで思いっきりやれよ」



「あたし暴力は苦手なのよね」
「いつもかっ飛ばしてるバッティングセンターだと思えばいいだろ・・・。
チラチラ丸」
「その呼び方やめてよ! スケベ!」


「き、来たよっ!」




・・・
「フン・・・。

もう鬼ごっこは終わりにしようか・・・」
「なんでゆうを追い回すんだよ」
「子供には知らなくてもいい事があるんだよ。
おとなしくその子を渡せばこっちも手荒な事をしなくてもすむんだがな」
「頭ごなしに命令すれば子供が言う事を聞くと思ってるのか!
典型的な自己中の大人だな。
そんな奴の言う事なんて聞く訳ないだろ!」
「口の減らないガキだ」
「あっ、アンタの背中に白い!」
「二度も同じ手にひっかかるか!」



・・・

「今度は本物よ! えーいっ!」
「ぐはぁっ!!
ぐぅ・・・くそっガキが。
待ちやがれっ!」



「へっ、悔しかったら捕まえてみな!」


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新宿中央公園入り口 午後7時49分 神宮寺三郎



俺達が新宿中央公園に戻ってくると、すでに哲三がそこで待っていた。


「神宮寺さん、どうだった?」
「徳子さんの家は見つけたのですが、残念ながら誰もいませんでした」
「そうか・・・。

わしの方もあの子を見つける事は・・・」


一体、どこに・・・。


「じ、神宮寺さん、あれは・・・」
「・・・?」


俺は哲三が指を差す方へと視線を移した。


「・・・ん?」
「じ、神宮寺さん・・・」
「・・・・・・!
貴之か・・・?
その傷・・・どうした!?」


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「神宮寺さん、俺・・・。
俺に・・・俺に力を貸してくれよ。
ゆうが、ゆうが・・・。
ゆうが捕まっちまう」
「まさか・・・ゆうの事か?」
「俺達、ゆうと一緒にいたんだ。
そしたら黒い服の男がいきなり襲ってきたんだ」


黒い服の男・・・。


ようやく姿を現したか・・・。


それにしてもひどい事をしやがる。


「そいつはゆうを追ってるんだ。
俺達、頑張ってゆうだけは何とか逃したけど・・・。 うぅ・・・」
「ゆうは今どこにいる?」
「美鈴と一緒に俺達のアジトにいるはずだよ・・・。
神宮寺さん、お願いします。
ゆうを、ゆうを助けて下さい」
「・・・・・・」
「神宮寺さん・・・。
俺達はやっぱりガキなのか?
ガキの俺達には、何にも出来ないのか?
俺達だけじゃ、ゆうを守りきれなかった・・・」
「・・・そんな事はない。
己の弱さを認めるのは、大人にとっても難しい事だ。
それが出来たお前が、自分を恥じる必要はない。
あとは任せろ・・・」
「ありがとう・・・ございます」



・・・
「洋子君、貴之を頼んだ」
「はい・・・」


とにかく人がいた方がいい。


春菜も呼んでおくか・・・。


俺は携帯電話を取り出し、事務所に電話を掛けた。



・・・。


・・・・・・。



「・・・ふぁい?」


しばらくして寝ぼけた声の春菜が電話に出た。


「おい、目を覚ませ」
「ほあ?
え・・・神宮寺さん?
どうかしたんですか?」
「今、事務所にいるな?
すぐに新宿中央公園に来てくれ」
「え、え・・・。
な、何かあったんですか?」
「話は後だ。 急いでくれ」
「えーっと、でも・・・」
「いいから、早く来い」
「はい、はい、わかりましたよ・・・」



とにかく急いで来てくれるといいが・・・。



「洋子君、貴之は大丈夫か?」
「ええ、幸い大きな怪我はなさそうです」
「そうか、よかった・・・」



・・・。


・・・・・・。


「お待たせしましたー・・・。
はぁはぁ・・・」
「よし。

じゃあ、早速・・・」
「ちょちょちょちょっとタンマ!
はぁ、はぁ・・・。
い、息がつらい・・・」
「走ったと言っても、そんな大した距離じゃないだろう?」
「トシなのかな・・・。
ぜぇはぁ・・・」
「とにかく揃ったな。
では急ごう。
今から、貴之達のアジトに向かう。
俺と一緒にもう一人付いてきてもらう」
「あ、そうだ・・・。
ねぇ、神宮寺さん。
私は屋敷に戻りますね」
「どうかしたのか?」
「ちょっと・・・用事を思い出して・・・。
私がいなくても平気ですよね?」
「全く、こんな時に・・・」
「すみません、すぐ戻りますので・・・。

じゃあ、後の事はよろしくお願いします」


そう言うと春菜はあっという間に駆け出していった。


「あの子は・・・。
春菜は前から、そのう・・・。
あんな子だったかね・・・?」
「ええ、まあ・・・」


すぐにアジトに向かいたいところだが、貴之の事が心配だ・・・。


誰かに貴之の事を頼まなければ。


「先生、春菜さんがいなくなったために貴之君を看る人がいなくなってしまいましたね」
「ああ、そうだな・・・。
もう一度、決めなおさないといけないな」


・・・

「仕方ない・・・。
哲三さんは貴之を連れて病院へ・・・」
「おう・・・」


「俺は?」

「貴之は哲三さんに付いて病院へ行ってくれ」
「俺も行く!
怪我なんてもうよくなったし」
「気持ちは分かるが、後は俺に任せろと言っただろう」
「・・・わかった」


貴之は悔しそうにしながらも、アジトの場所を俺達に教えてくれた。




・・・ん?



一体、誰からだ?


なんだ春菜か・・・。



「神宮寺さん、大変です!」
「どうした」
「今、美鈴ちゃんから連絡がきたんです。
アジトにゆうちゃんがいるから迎えに来てくれって。
誰かに追われてるらしくて急いでくれって」
「そうか、まだ無事なんだな。
俺達もこれからアジトに行くところだ。
そっちの用事は終わったなら、急いで来てくれ」
「はい・・・」


急がなくては・・・。



「哲三さん、貴之を頼みました」
「おう、任せてくれ」
「洋子君、行くぞ・・・」
「はい・・・」


俺と洋子君は急いで貴之のアジトへと向かった。




大河原家 午後8時05分 池内春菜


「すぐに来てくれ」
「はい・・・」



・・・
「急がなくっちゃ!
急がなくっちゃ!
・・・よいしょ、よいっしょ!
あっ、いけない・・・。
・・・もう!」
「どうしたの、随分忙しそうだけど・・・」

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「すみません礼子様。
私、すぐ行かないと」
「だから何があったの?」
「亜希さんの子供が見つかったんです。
でも悪い奴に追われてるらしいので、これから助けに行きます!」
「・・・そう。
それなら私が車で送りましょう」
「え、いいんですか?」
「一刻を争うのでしょう。
遠慮はしなくていいわ」
「助かります!」
「・・・いいのよ」



アジト 午後8時30分 宮内美鈴



「遅いなぁ・・・
何やってるのよ、あの二人」
「たかちゃんとともちゃん、だいじょうぶなの?」
「大丈夫・・・だとは思うんだけどね」



・・・

「あーもう。
なんだってこんな時に・・・。
あ、お母さん? あのね、もうちょっと遅くなる。
違うわよ。ちょっと友達が・・・。
すぐ帰るから、ご飯は先に食べちゃって、ね?
だから友達が大変なの。
嘘じゃないったら。
本当だって言ってるでしょ。
だから、どうしてそういう話になるのよ。
友達だって大事でしょ?
お母さんだけじゃないんだから。
あー、もう・・・。
泣かないでったら、なんでお母さんが泣くのよ。
わかった、わかったから。
すぐ帰るから。本当だって。
もう切るからね」


・・・。


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「ごめんね。
お母さんがうるさいから、もう帰らないと・・・」
「おかあさんって、だれなのぉ?」
「あたしのお母さん。
うるさくて泣き虫でワガママで、一人じゃ何にも決められない。
うっとうしい人。
まったく、やんなっちゃうわよ・・・」
「・・・?」
「だからあたしのお母さん」
「おかあさんって、みすずちゃんのなかまなのぉ?」
「・・・?
お母さんはお母さんでしょ」
「お、か、あ、さ、ん・・・・・・?」
「まさか、お母さんがわからないの?」
「・・・うぅ」
「お母さんっていうのはつまり、ゆうちゃんを産んだ人の事。
ゆうちゃんにもお母さんぐらいいるでしょ?」
「ゆうはずっとここにいるのぉ」
「一人で育った訳じゃないでしょ?
ゆうちゃんが小さい時から、ずっと一緒に住んでる女の人の事。
まあ最近はずっと一緒に住んでるとは限らないし、再婚だってよくあるけどさ」
「みすずちゃんの好きなひとなのぉ?」
「うーん・・・、
好きって訳じゃないけど・・・。
でも嫌っても仕方ないし・・・。
ま、要するに、なんていうの、私達子供が一緒にいなくちゃいけない人なのよ・・・。
そう、義務なの。
社会でそう決まってるの。
だから、一緒にいてあげなきゃいけないの」
「ギムって?」
「守らなくちゃいけない事かな?
違う、そうじゃなくて・・・。
約束、かな・・・?
守ったらみんなが幸せになって、破ったらみんなが不幸になるの。
・・・とにかく、ここを動かないでね。
すぐに・・・」



・・・!!




「だ、誰っ!」
「美鈴・・・僕だよ僕」
「・・・・・・? 何だ知也か・・・。

遅いわよ!
って、どうしたの、その怪我。
貴之は?」
「わかんない。バラバラに逃げたから。
男に捕まりそうになって、貴之が一人で相手してたけど」
「・・・逃げてきたの?」
「そう、貴之が逃してくれた」
「馬鹿知也!!」
「な、な、なんだよ。
しょうがないだろ?
逃げて来れただけでも褒めてくれよ・・・」
「つけられてないわよね・・・?」
「たぶん・・・。
・・・それにあんな奴、貴之が倒してくれたさ」
「そう・・・」




・・・
「やっと見つけたぞ・・・」



「う、う、うわぁ。
ななななんでぇ!?」



「ほう・・・。
あいつは貴之と言うのか・・・。
子供ごときに俺が負けるとでも思ったのか?
はははは・・・。
学校のお勉強もいいが、もう少し社会の厳しさを知っておいた方がいいぞ・・・。
さあ、大人しくその子を渡せ。
さもないと・・・」

「誰がアンタなんかに!」
「どいつもこいつも威勢だけはいいようだな・・・。
しかし、もう遊んでいる時間もないんでな・・・」
「きゃああっ!」


「う、うわぁぁぁっ!」



「ははははは・・・」



・・・。


・・・・・・。




アジト 午後8時35分 神宮寺三郎



俺達は貴之に言われた場所のアジトへとやって来た。


「・・・どうやら、いないようですね」
「・・・・・・」


しかし、貴之の話からもここにいる事は間違いないはずだ。


いや、もしかしたらここにいた・・・のかもしれない。


何か手掛かりを探してみた方がよさそうだな・・・。


もしかしたら、子供達の行方に関するものが得られるかもしれない。


ひとまず、この辺りを調べてみよう。


・・・


これは・・・携帯電話だ。


誰の物だ?


携帯を操作し、電話帳などを調べてみた。


貴之や知也の名前が登録されている・・・という事は、この電話は美鈴という子の物か?


・・・何にしても子供達がここにいたという事は確実だな。


無事でいるといいが・・・。


足跡がいくつもある。


まだ新しい感じだな・・・。


足跡は・・・左に向かっている。


もう少しここを調べてから、そっちの方に行ってみよう。


壁が崩れて穴が空いてしまっている。


相当、この建物が古いという事だな・・・。


ん・・・?


見覚えのある落書きがある。


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つい最近見たような気がするが・・・。


どこで見たんだったか。


・・・


そうだ・・・。


あの白い影を探して、西新宿8丁目を調べていた時だ。


・・・となると、この熊はゆうが描いたものという事だな。


よし・・・。


そっちの方に行ってみよう。



・・・
足跡はこの辺りで途切れているな・・・。


一体、子供達はどこに行ってしまったんだろう?


壁にはスプレーなどで、様々な落書きが書かれている。


2階に上がる階段がある。


1階に人はいないようだから、子供達がいるとすれば2階より上という事になるが・・・。


ひとまずこの辺りを調べてから上がるとしよう。


床にはコンクリートの破片があちこちに散らばっている・・・。


この建物の古さを物語るようだ。


奥は行き止まりになっているようだ。


俺達が入ってきた所以外の出入り口はここにはないようだな・・・。


この辺りは一通り調べたな。


2階に行ってみよう。



・・・


・・・・・・



階段の途中だが・・・念のため、この辺りも調べてみるか。


コンクリートなどの破片は落ちているが・・・これといったものは特に落ちていない。


ここを登れば上り階段だな。


・・・
得には何も落ちていないようだ。


落書きだけはここにもあるが・・・。


・・・2階に行こう。



・・・


相変わらずここにも人気は感じられんな・・・。


だが、部屋がいくつもある。


もしかしたら、この中にいるのかもしれない。


割られた窓の外には、高層ビルが見える。


ところで、このガラスは誰が割ったのだろう?


あるいは、風か何かで割れてしまったのだろうか・・・。


俺は一番奥のある部屋の中に入った。


しかし、その部屋には誰の姿もなかった。



・・・仕方ない、他の部屋を調べてみよう。


手前にある部屋の中に入ってみたが、誰の姿もなかった。


ここも駄目か・・・。


となると、後は残り一部屋となるが・・・一体、子供達はどこにいるんだ?


真ん中の部屋を調べた。


しかし、室内には荒らされたような形跡はあるものの、誰の姿もなかった。


駄目だ、どこにもいない・・・。


もう少し部屋の中を詳しく調べてみようか。


もしかしたら、手掛かりくらいは得られるかもしれない。


1番荒れていた真ん中の部屋をもう一度調べようと入った。



・・・


暗いな・・・。


目が慣れたとしても、部屋の隅々まで見る事はできなさそうだ。


足の踏み場もないくらいだな。


なぜ、ここまで荒れているのだろう・・・?


あちこちに木材の破片が散らばっているな・・・。


廊下の窓ガラスの破片が、ここにまで飛び散ったんだろうか。


しかし、その破片をさらに踏みつぶしたような跡があるのが気になるな・・・。


黒く薄汚れたタオルが丸められている。


ずいぶんと古くてボロボロのようだが、どうやらマットのようだ。


・・・

いくつか足跡がついているな・・・。


大人の足跡じゃない、子供のものだ。




・・・ここにまでガラスが・・・。


ん・・・違うか。


これは・・・・・・眼鏡・・・だ。


眼鏡のレンズだな。


まさか知也の眼鏡か?


ひどいな・・・粉々だ、勝手にこんな風に割れるわけがない。


恐らく襲われて、こんな風に・・・。


・・・。



――『・・・・・・っぁあー!!』



・・・!?



今のは・・・!?


 

・・・