@chablis777
シャブリ

---------------------------

----N----073---------------
----a-----------------------------
----t-----------------------
----u-Z-o-r-a--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------

(光子)雪次郎君が 急にここを辞めるって言いだしたのよ。
(なつ)えっ!? 雪次郎君が?
お芝居をしたいからって。
えっ?劇団の試験を受けたんですって。
(野上)誰かのいる劇団ですよ。
雪次郎君が 川村屋を辞めて役者になると言いだしました。
(咲太郎)お~ 雪次郎!今日はご苦労さん。
(雪次郎)どうも。
(亜矢美)雪次郎君あんた 思い切ったことしたね。
(カスミ)よく決心した。(レミ子)あんたには負けないからね。
ちょっと待って!
雪次郎君を 役者にはできません。
なつ… どうして?
どうしても!
いいの? 本当に家族を裏切って。
雪次郎君が言ったとおり雪次郎君と私じゃ違うしょ。
雪次郎君が 川村屋 辞めたら帯広の家族が どんなに悲しむか…。
たった一人の跡取りでないの!
そったらこと分かってるから決心したんでねえか!
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪「口にする度に泣けるほど憧れて砕かれて」
♪「消えかけた火を胸に抱きたどり着いたコタン」
親を裏切るって 決心したんだわ…。
そんなのダメだわ!
ねえ お兄ちゃん お願い。
お兄ちゃんからも 雪次郎君 止めて。説得して!
それは できない。何で!
今の雪次郎の言葉を聞いてどうして止められるんだ。
雪次郎君が川村屋を辞めるって言ってんの!
雪次郎が どう生きるかは家族でもなく 雪次郎が決めることだろ。
咲太郎さん…。
本当に よ~く考えなさいよ。
せっかく ここまで修業してきたんだから。
それを無駄にして 後悔しないようにね。
はい…。
なっちゃん 本当に心配かけてごめん。
そりゃ心配するわ そんなの…。
でも まだ劇団に受かったわけじゃないんでしょ?
受からなくても川村屋には戻らんつもりです。
ねえ 雪次郎君…。
なっちゃん ごめんって…。
俺は もう川村屋も裏切ってしまったんだわ。
俺の魂は もう演劇の中に行ってしまったんだわ!
それなら 真っ先に帯広の家族に相談するべきでしょ。
それは まだ ちょっと…。
ねえ そこ! そこ迷っちゃダメでしょや!
♪~
(雪次郎)おはようございます。(杉本)おっ おはよう。
あの…。ん?
あの 職長すいませんここを 辞めさせて頂きたいんです。
昨日 マダムには話しました。
大変お世話になっておきながら本当に申し訳ございません!
おはようございます。
おい… おいちょっと こっち来い。はい…。
役者? お前 何考えてんだよ!
そんなに修業がつらかったのか?
いいえ そんなことはありません。
僕にとって菓子職人になることも夢でした。
けど ほかの夢に挑戦するなら今しかできねえと思ったんです。
挑戦したいんです!
菓子職人ならいつでもなれると思ってないだろうな?
そんなこと思ってません!だったら 現実から逃げるなよ!
そんなつまらないことで人生 棒に振ってどうすんだよ!
とにかく 俺は認めない。
だったら… 認めてくれなくていいです。
雪次郎! 俺はな お前をお前のおやじさんから預かってんだよ!
(雪之助)お世話になります。
どうか せがれを厳しくご指導下さい。
♪~
おはよう。おはようございます。
おはようございます マダム。
杉本さんも聞いたのね。はい。
しかし それを認めることができるのは北海道にいる おやじさんだけだと話してたところです。
そうね… まあ なるべく 私は従業員の意志を尊重したいと思ってるけど雪次郎君は 今雪之助さんの意志を受け継いでここにいるんですものね…。
とにかく お父様にあなたから連絡して話してちょうだい。
分かった?
はい… 分かりました。
一人で決める前に 頼みましたよ。
一方 なつは長編映画「わんぱく牛若丸」の作画作業真っただ中にいるはずでしたが…。
(茜)なっちゃん坂場さんのことで悩んでるの?
さかば?あっ ほら この間の理屈っぽい演出助手の人。
あ… 違いますよ。
ちょっと 別のこと考えてました。
別のこと?
ちょっと 困った友人がいるんです。
(下山)なっちゃん。
これ 頼む。
あ… これは この間の馬ですか?
うん。僕が 原画を描き直してみたんだよ。この絵を動かしてみてよ。
(麻子)あのカチンコ君…坂場っていう人が直しを要求してきた馬と牛若丸の動き。
あれか…。
(坂場)いや あの…そこが分からないんです。どうしてこういう動きになるんですか?牛若丸が 前のめりになるのは性格描写として分かることにしましょう。けど 馬はどうですか?
馬は怖がりませんか?
それが 僕なりの答えだ。答え…。
いい?あの理屈をこね回すカチンコ君をギャフンと言わせる動画を描いてちょうだい。
はい 分かりました!
新人アニメーターのなつは少年 牛若丸が 馬で崖を駆け下りる短いシーンの動画にチャレンジすることになりました。
(笑い声)
面白い!
今度は 馬が抵抗して牛若丸が 馬と戦ってる。
(茜)さすが アクションの下山さん見事な修正。
そうですよね。牛若丸も馬も 生き生きしてる。
(堀内)動画 頑張れよ。頑張ってよ なっちゃん!
はい!
よ~し!
しかし それはそう簡単なことではありませんでした。
あっ…。
何か落としたんですか?あっ いや…馬の気持ちと体重移動を研究してたんです。
ご苦労さまです。
あっ あのカットを今 描き直してるとこなんです。
牛若丸が 馬で崖を駆け下りるあの鵯越の逆落としを思わせるカットです!
そうですか。それから… 昨日は すいませんでした。
その すいませんというのは何を指して言ってるんですか?
川村屋で 話の途中でいなくなってしまったことです。
ああ… それは構いません。偶然 会っただけですから偶然 またいなくなることもあるでしょう。
モモッチと一緒にバターカリー食べたんですか?
いえ 私は すぐに帰りました。それじゃ。
あっ いえ あの…ちょっと待って下さい!
昨日の続き 教えて下さい。
続きというのは?話の続きです。
アニメーションにしかできない表現とは何か坂場さんの考えを聞こうとしてました。
聞かせて下さい。
それは…。
やはり あなたが 自分で考えて下さい。えっ?
それを いつか 私に教えて下さい。それが きっとアニメーターに対する敬意だと思います。
あなたが 本当のアニメーターならば。
失礼します。
やなやつ やなやつ やなやつ…!
あなたが 本当のアニメーターならば…。
あ~ もう… くっそ~!
(茜)今度は何?
ハハハ…。
気合いが入ってるだけか。
はい!
ああ…。結局 その日は満足な動画を描くことはできませんでした。
ああ~! はあ…。
それじゃ 雪次郎君はまだ ここで働いてるんですか?
ええ。 辞めるにしたってお父様の許しは必要でしょ。
雪次郎君にとっても。もちろんです。
私も そう思います。
それじゃ 親の許しがなきゃ川村屋も辞められないのか?
そうみたい。雪次郎は 二十歳を過ぎた大人だぞ。
大人だから きちんと自分の人生を考えるべきでしょ。
確かに 役者を目指すよりはこのまま 菓子職人を目指した方が現実的だからね。そうよ。
そりゃ 演劇やって食えてるやつは ほとんどいないよ。
けど それで不幸だと思ってるやつもほとんどいないよ。
不幸なら やる必要は全くないんだからな。
漫画映画を作ってるお前だって似たようなもんじゃないのか?
そんなことは分かってるよ。じゃ 何で雪次郎には反対するんだ?
私は 雪次郎君にも 雪次郎君の家族にも幸せになってもらいたいから心配してんの!
人の幸せなんて他人に決められるもんか!
だったら お兄ちゃんにだって決められないでしょ!
まあ 確かにそうだな…。
他人が これ以上 余計なことをしない方がいいってことかもね。
なつよ お前だって雪次郎君が自由に自分を表現できること…それを願っているよな 誰よりも。


via Twishort Web App