ブロック塀が倒れて下敷きになり、小学四年生女児が亡くなった大阪府北部地震から一年余。先日の新潟・山形地震でも倒壊が相次いだ。学校などでの対策は進む半面、一般住宅ではまだ途上だ。
新潟・山形地震は、最大震度6強。山形県酒田市では、ブロック塀八カ所が倒れ、秋田県由利本荘市では十メートルにわたって倒壊した。専門家によると、地震の周期がごく短く、ブロック塀が倒れやすい揺れだった。昨年六月の大阪府北部地震でも、周期は短かったという。
大阪府北部地震での女児の死亡事故を重視した文部科学省は、直後に全国の国公私立の幼稚園や小中学校、高校など五万余校に、ブロック塀の安全点検を依頼。うち、約一万二千校が安全性に問題のあるブロック塀を持っていた。
文科省は、各県教委に学校のブロック塀の撤去を進めてもらっている。全国統計は今夏まとまるが愛知県では、危険なブロック塀がある四百五十三校の半数近い二百二十四校で撤去が終わった。残りも順次取り除く。同県教育委員会は「熱中症対策のエアコン設置もあるが、各校とも撤去はスピーディーに進んでいる」と話す。他県も順調に運んでいるもようだ。
学校では、プールの目隠しになっているブロック塀が多い。撤去の後、視界を遮蔽(しゃへい)できるフェンスの整備を急ぐことも必要になる。
一方、戦後「生け垣より安価で管理の手間も少ない」と増えた一般住宅のブロック塀は、学校に比べ地震への対策の進みは遅い。
国土交通省は、特に通学路に面する住宅のブロック塀への対策を促す。一九七八年、ブロック塀などの下敷きで十八人が死亡した宮城県沖地震後、撤去に独自の補助金を出す市区町村が増えてきた。
例えば名古屋市では「道路に面し、高さ一メートル以上」のブロック塀に、最大十万円(密集地は同十五万円)を補助する。実績は二〇一七年度の五十六件から一八年度は五百六十五件と十倍に跳ね上がった。平均で一件約二十三万円かかり、うち約六万五千円が補助金だった。市は「急増は大阪府北部地震の影響」と話すが、まだ必要な箇所の一部とみられる。
助成は所有者が申請せねばならない。行政が巡回して申請を促すシステムを強化してはどうか。地震国としてさまざまな対策が必要だが、ブロック塀の問題は、撤去さえできれば被害を抑えられる。全国に八百万戸以上ある空き家の塀への対策も急務だ。
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