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 コンビニエンスストアが、これまで業界の成長を支えてきた「24時間営業」と「定価販売」を見直そうとしている。

 セブン―イレブンとファミリーマートは一部の店で、時短営業の実験を始めた。深夜から早朝の4~8時間は店を閉め、加盟店の収入に影響があるかなどを見極める。人手不足が深刻になり、加盟店主や従業員の長時間労働も見過ごせなくなったためだ。

 ポイント還元の形で、実質的な値引きも始まった。ローソンは沖縄と愛媛で、消費期限が迫ったおにぎりなどを対象に、5%分のポイント還元を実験している。セブンも秋に、同じようなやり方を採り入れる。

 まだ食べられるのに捨てる「食品ロス」を減らし、廃棄費用の多くをもつ加盟店の負担を減らすねらいもある。

 夜型の生活をする人が増えて市場が急拡大していたときは、24時間営業はコンビニ本部と加盟店の双方の利益につながり、食品廃棄の費用も大きな問題にならなかった。ところが店舗数が増えて競争が激しくなり、人手不足が目立ってくると、便利さの裏で加盟店に負担が偏っている構図が顕在化した。

 時短営業や実質値引きは、問題解決へ一歩前進ではある。しかし、対応は限定的で、あまりに遅い。セブンが大阪の加盟店主と時短営業をめぐって対立したのをきっかけに、コンビニの現場のひずみが注目され、国の介入もあって、本部はようやく改善へ踏み出した。

 経済産業省の調査では、人手が足りないと考える加盟店主は、2014年度の22%から18年度は61%まで上昇した。本部の対応が後手に回り、加盟店の運営はより厳しくなっている。

 09年には、値引きの自由が加盟店主にないとして、公正取引委員会がセブンに排除措置命令を出した。しかし、定価販売にこだわる各社の姿勢は、変わらないままだった。

 経済産業相の要請を受けて4月下旬に各社が公表した行動計画には、時短営業への対応などに加え、セルフレジの導入や加盟店とのコミュニケーション強化も盛り込まれた。

 にもかかわらず、公取委は近く、加盟店主からの営業時間の見直し要求を本部が一方的に拒んでいないかなど、実態を調査するという。問題の根底にある本部と加盟店主の関係に、厳しい目が向けられている。

 本部が優越的な地位を背景に自らに有利な契約を結び、加盟店主に負担を強いるようなやり方は、持続可能ではない。

 加盟店主の声に徹底して耳を傾け、時代に即した健全な関係づくりを急ぐべきだ。

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