2018年6月28日、LINEは千葉県浦安市の舞浜アンフィシアターにおいて「LINE CONFERENCE 2018」を開催した。同イベントは2013年からほぼ毎年開催しており、直近1年の成果と新サービスを一気に発表している。2018年もディスプレイ付きスマートスピーカー「Clova Desk」の今冬発売予定など、盛りだくさんの内容であった。本稿では企業のビジネス利用に的を絞り、注目すべき動向をお伝えする。
「人々の生活を便利に、豊かにするためにリデザインする」――LINE代表取締役社長CEOの出澤 剛氏は、カンファレンスの冒頭でそう宣言した。そして、AIやフィナンシャル領域に注力している同社が満を持して発表したのが、LINE独自のブロックチェーン技術を用いた「LINEトークンエコノミー」構想だ。これは、ユーザーがサービスを評価し、評価に応じたインセンティブをLINE独自のトークンで還元する仕組みだ。ゲーム、シェアリング、エンターテインメント、メディア、コマースといった、LINEの各ビジネス領域のサービス活性化を狙うもので、既に研究開発を進めているという。
マーケティングコミュニケーション視点でインパクトが大きかったのは、新たな「LINE公式アカウント」に関する発表だ。LINEはこれまで大企業向けに「LINE公式アカウント」、中小企業や店舗向けに「LINE@」と、法人向けアカウントを2種類提供してきた。両方合わせると日本国内だけで250万以上の企業が利用している。それらを統合してLINE公式アカウントに一本化する。現行のLINE公式アカウントは月々最低250万円が必要だが、これを従来のLINE@同様、月額利用料金0円から利用できるようにするというのだ。
新料金体系は従量課金制で、つながっている「友だち」の数に応じて、月額0円の「フリー」、月額5000円の「ライト」、月額15000円の「スタンダード」が用意される予定だ。
さらに、統合後のLINE公式アカウントにおいては、企業システムとAPI連携してユーザーと双方向のコミュニケーションを実現できる「LINEビジネスコネクト」と法人向けカスタマーサービスを構築できる「LINEカスタマーコネクト」、LINEポイント活用システム「LINEポイントコネクト」の3つを統合したAPIも公開する(オプション扱い)。これにより、企業やビジネスオーナーはよりユーザーごとに適したサービスや情報を提供することが可能になる。導入時期は未定だ。
広告事業についても、幾つかの発表があった。まずは広告の配信面が増えること。LINEの運用型広告配信プラットフォームである「LINE Ads Platform」では、「LINE NEWS」「LINEタイムライン」「LINEマンガ」「LINEブログ」という4つの媒体に静止画や動画広告をワンストップで配信することができるが、新たな配信面としてここに、2018年中に公開予定の「スマートチャネル」が加わる。スマートチャネルはLINEのトークルーム上部に新設される情報エリアで、現在地の天気やニュース、災害情報などパーソナライズされた情報が表示される。優良な配信面が着々と増えることで、広告出稿先としてのLINE Ads Platformの価値はますます上がっている。
同社執行役員 広告事業戦略担当の葉村真樹氏は、LINEは国内7500万人のユーザーの興味関心、行動履歴、購買履歴をLINEのIDベースで解析できることをアピールし、ユーザーごとのコンテンツの出し分けを精緻に行えると述べた。今後は位置情報などの情報も含めて解析し、マーケティングの精度をより高めることを検討しているという。
会場では2017年10月に発表した、店頭販促に特化したサービス「LINE SP Solutions」の実演も行われた。キャンペーン実施から参加状況の把握、後追いプロモーション、次回施策の案内までの流れをLINE内で全て完結させるというものだ。ペットボトルに貼られたQRコードを読み取ってLINEポイントを獲得できるといったキャンペーンを体験したことのある人は少なくないだろう。LINE SP Solutionsは約半年で述べ2800万人以上が参加して、参加したことをタイムラインでシェアした回数は2000万回以上、実際に店舗に訪れた回数は420万回だったという。「販促業界にいる人なら、これがいかに威力のある数字かご理解いただけるのではないか」と葉村氏は自信をのぞかせた。
LINEの広告事業は、2012年にサービスを開始した頃は、LINEの総収益のわずか6%にすぎなかったが、2017年には40%を占めるほど成長した。
「LINEはユーザー自身の感情から得られるベネフィットに注目して、広告事業をリデザインしていく。LINEのコンセプトは“Closing the distance”。企業とユーザーの距離を縮めていく。これまでも広告を広告と捉えず、あくまでユーザーにベネフィットを提供するコンテンツやサービスだと考えて進めてきた。LINEは単なる情報をシェアするものではなく、エモーションをやりとりするツールだ」(葉村氏)
今後は、中小企業向けに力を入れていくことも明かされた。LINE Ads Platformのセルフサーブ型や、「LINE Promotion Sticker」「LINE Point Code」の中小企業向けプロダクトを提供する予定だ。
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