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(志ん生)浅草の町がたった2日で消えた。
♪~
(孝蔵)関東大震災。
突如起こったマグニチュード7.9の大地震により東京は壊滅的な被害を受ける。
(孝蔵)<体協は会長 岸 清一の事務所に居を移し新体制で始動したばかりでした>
(野口)あった!
(岸)こっちか?
(野口)よかった… 無事残ってましたよ!
(岸)ああ… うん! これ…。金栗 見ろ! ほらストックホルムの写真も無事だったぞ!
(岸)どうした? 金栗 大丈夫か?
(四三)シマちゃんが…。
見つからん…。
いっちょん見つからんばい。
あ~ 俺のせいばい!
俺のせいで シマちゃんが…。
シマちゃん…。(岸)金栗…。
こんな時に自分を責めたら切りがない。
(地鳴りと悲鳴)
もう… 何や もう やめちくれ~!
やめちくれ もう!
シマちゃ~ん!
<この震災で死者・行方不明者 約11万人。全壊家屋 11万棟。火事で燃えた家 21万棟>
<有楽町の東京市庁舎も罹災し外に張ったテント 青空市長室を震災対策本部として急場をしのぎました>
電車が開通したぞ~! 電車が!
<家を失った多くの人が身内を頼って被災地を逃れました。東京に残った罹災者を救うためバラックと呼ばれる仮設住宅が大量に必要となりました>
(永田秀次郎)日比谷公園のバラックにはあと何人収容できるんだね?
日比谷は5,000。 あと上野に8,000。
(永田)足らん 足らん 足らん! 桁が違う。
<当時の東京市長は永田秀次郎。その迅速かつ冷静な対応力から後に 震災市長と呼ばれました>
市長 面会です。見れば分かるだろ!? 今 忙しいんだ!
(治五郎)おお… 永田君。嘉納先生。
手短に用件だけ伝えます。
おい 静かにしろ。
神宮外苑を避難所として市民に提供しましょう。
えっ?幸い建設用の資材も残っております。
それらを使って バラックを建設すれば5,000人は収容できます。
競技場も開放しましょう。
アハハハ… いや しかし神宮は 嘉納先生にとって 悲願の…。
なになに… 国民の寄付で造った国民のための競技場ですから。
<直ちに建設された外苑バラックには6,400人の罹災者が収容されまして…>
シマちゃ~ん!(増野)竹早の増野シマ 知りませんか?
シマちゃん!
(増野)あの… 竹早の増野シマ…。増野さん 増野さん!
(清さん)おい 金栗さん どうだ?
♪~
心配すんなって。かみさん 陸上選手だろ?
とっくに逃げて助かってるよ。
ありがとうございます。
・(小梅)丸焼屋のすいとんだよ!
(清さん)こっち来な…。
ありがとうございました。
女は強えんだから。 見な。
(小梅)丸焼屋のすいとんだよ!
1杯目はタダだよ。 2杯目は5銭。どんどん ついでくよ。 はい…。
ま… 丸焼屋…。
あら 韋駄天の金栗さん!どぎゃんしました?
こちらの旦那 連れ合い捜して避難所 回ってんだ。写真 見せたげて。
里に帰ったんじゃない?
里に?(小梅)ええ。里で身内に会えた人も多いって聞くよ。
(清さん)あっ そうだよ!鉄道も走りだしたっていうしな。ああ そうに違いねえ! うん!
金栗さんとこもご家族 心配してるんじゃないの?
(スヤ)はい お疲れさん。
おとうちゃん? あれま…。
おとうちゃん!
ただいま。
ほら 政子 あんたのお父ちゃんばい。ああ… よくぞ ご無事で。 おとうちゃん。
うん。
<さすがの金栗さんも熊本に帰りました。4年ぶりです>
♪~
「よ~うっ!」(太鼓の音)
♪~
♪~
♪~
♪~
♪~
♪~
「よ~うっ!」(拍子木の音)
はい はい はい…。(実次)のこった! のこった のこった!
押せ押せ 押せ押せ…。あ~!
(実次)強か 強か~。(スヤ)座りなっせ。
うん。(実次)まあ 何はともあれ無事で何より。 ハハハハ…。
母ちゃんも そんうち来るけん。うん。
(実次)あ~ 都会は恐ろしか~。地震に便乗してこぎゃ~ん騒ぎの起こるとは。
いや 兄上 これは み~んな うそ。流言飛語の類いばい。
ばってん自警団が治安ば守っとっとだろ?
富士山の爆発して伊豆諸島が沈没すっとだろ?
うん それも…いや それは初耳。
ばってんそんくらいバカげたうわさも多か。
少なくとも 俺が東京で見たとは地震に屈せず助け合うて生きる人たちん姿ばい。
(幾江)したら な~し帰ってきた?
こっちです。(シエ)はい。あっ 四三!母ちゃ~ん!
あんた まあ無事だったとか!(初太郎)よかった~ 四三おじ。捜索願いば出そうって言うとったけん。そぎゃんね。
腹はすいとらんね? 握り飯ば食わんね。
まあ よう帰ってきた~。
(幾江)答えろ! な~し 帰ってきた?(スヤ)お義母さん。
今まで 何べん帰ってこいと言うたか知らん。
正明の生まれた時も政子の生まれた時もいっちょん帰ってこんかった薄情者が。
な~し 今 東京が大変な時にな~し 帰ってきた!?
やめて下さい お義母さん。せっかく帰ってきたとに。
逃げてきたとばい こん男は。
東京ば捨てて。
そぎゃん男は熊本も捨てるけん阿蘇が爆発したら真っ先に逃げるとだろ?こん意気地なしが。
大地震ばい 逃げて何が悪かですか。
そぎゃん時こそ 東京に残ってふんばらんで どぎゃんする!
弱っとる人に 手ば差し伸べんでどぎゃんする!
(スヤ)ずっと ふんばってきたとですよ!おとうちゃんは!
たった一人で バカんごつ東京中走って周りば笑顔にしてきたとですよ!
ねえ 実次さん!
えっ?
何か言わんか 実次!
実次 黙っとらんと ほう。
逆らわずして~ 勝~つ!
何も思いつかんかったけん大きか声ば出してみた。幾江さんのおっしゃることも真理。
ばってん スヤさんの気持ちも分かる。
そぎゃんたい…。えっ?
逆らわずして勝つ。
大地震に立ち向かうとじゃのうてそん力ば 逆に利用して最終的に人間が地震に勝てばよか!
「柔よく剛を制す」 そぎゃんたいね 兄上!
おお おお… そぎゃんたい!
(スヤ)本当に?
あ~あ 思い上がっとったばい。
東京が大変か時に 俺は何もできん。
我が無力ば痛感して勝手に しょげ返っとったばってんそもそも 人間は無力たい。
だけん 何も考えんで今までんどおり バカんごつ走ればよか。
そぎゃんたい。
目の覚めたばい。
こうしちゃおれん。
もう? お昼も食べとらんのに。
握り飯でよか!(幾江)待て!
出してやりなっせ。はい!
(幾江)どうせ走るなら これば持っていけ。
救援物資たい。困った時はお互いさまばい。
(シエ)そんならこれも持っていきなっせ!
母ちゃん… 義母上…。
ぬしゃ 韋駄天が何の神様か知らんとか?
人々んために 走って 食いもんば集めて運んだ神様たい。
だけん 「ご馳走」て言うとばい。
ああ…いや~ 気持ちは うれしかばってんこぎゃん たくさん一人では運びきれんけん…。
うちが行きます。
あ~ 行け 行け。後から ま~だまだ 送ってやるけん。
<早速 四三が東京へ戻るってえと熊本から大量の物資がハリマヤに届いていました>
(辛作)これだけじゃないんだよ。まだ この奥に倍近くある。
お義母さん…。
(辛作)金栗さん スヤさん… ありがとう。
ひゃあ~!
ひゃあ~!
ひゃあ~!
♪~
韋駄天が 東京の街を走りだしました。
回想 (幾江)ぬしゃ 韋駄天が何の神様か知らんとか?人々んために 走って 食いもんば集めて運んだ神様たい。
♪~
よし! 行くばい。
(孝蔵)<物資を背負って罹災地を走りだした韋駄天と その弟子>
頑張れ!頑張れ 頑張れ!
<大塚から春日通りを下って宮城前。日比谷公園 日本橋>
♪~
すみまっせん。 失敬… 失敬します。
<神田 上野 浅草>
・お~い 韋駄天夫人! こっちも頼むぜ。
はい!
<避難所で特に目立ったのは女学生の活躍でした>
おお… 頼もしかね~ 竹早組!
(梶原)夏休みが終わった途端の休校ですもの。
体力は有り余ってましてよ。頼むばい。
おっ 村田!(富江)あっ パパ! ちょっと…。
これも… これもお願いします。
(富江)シマ先生の旦那さん。
シマ先生の旦那さん。あ~…。
やはり 里には帰っていませんでした。
頂きます。どうぞ。
これ… 食べて下さい。
りくちゃん。あっ… すまんね。
ほら りく あ~ん。
(りくの泣き声)あっ…。
よかです。(りくの泣き声)
ハハハハ…。
(おりん)寄席は いつ開くんですかね?
戒厳令下だよ~。
こんな時にネタやったってウケるわきゃねえや。
地震の前だって大してウケてなかったですけどね。
何か言ったかい?いいえ。
一杯 引っ掛けてくるわ。
(ため息)行ってらっしゃいまし。
(志ん生)<家 出たはいいが 銭がねえ。気が付いたら寄席の方へ足が向かっていました>
(拍手)
<驚きましたね 建物をなんとかこさえて営業してたんです>
♪~
(拍手)
え~ 随分と…焼け残りが集まりましたな。
(笑い声)
…にしても 余震ってえのはいきなり来やがりますな。
今ね うちのカカアがね これなんですよ。
…でね 余震でね逃げ遅れちゃかなわねえってんでいつも 草履履いて寝てるんですよ。
…で ゆうべも グラグラッと来ましてねそん時にね うちのカカアがガバッと飛び起きて 亭主が寝てるここをこう またいでねダダダダダダダッと飛び出していっちゃった。
「この野郎 おめえ ガキと亭主どっちが大事なんだい」っつったら…。
何言ってんだい! 子どもと亭主じゃ亭主の方が他人だよ!
「何言ってんだい! 子どもと亭主じゃ亭主の方が他人だよ!」。
(笑い声)
「うちの中で一番偉いのは誰だと思ってんだい?亭主が一番偉いんだよ。おっ うそだと思うならな役所行って聞いてみな」。
「役所なら もう焼けてるよ」。(笑い声)
♪~
(孝蔵)<ちまたでは 当時「復興節」という唱歌が大流行しました>
♪~
おかしな歌が はやってますな。 ええ。
まあ こういうね時なんで 今は…。
おっ 韋駄天!お待たせしました!
お待たせしました お待たせしました!あっ!
はい お待たせしました。
すいまっせん。ありがとよ 韋駄天!
お待ちしてましたよ!いや~ 助かる。
こういう時こそ 亭主がしっかりしなくちゃならない。
ありがとうございます!野菜もあります。
また来ます!
(清さん)夜になると やけに静かだろ。ああ。
(清さん)昼間はお祭りみたいに にぎやかだから余計 そう感じる。
でもよ あんなにうれしがるとは思わなかったぜ。
四六時中 ふさぎ込んでもいられねえ。
たまには笑いてえし 酔っ払いてえ。
それが人間さ。
だからよ… また来てくれよ。薄汚え ノミだらけのバラックだけどよ…。
それに関しちゃ俺んところと大して変わらねえよ。
…で どうなのさ?おりんさんとは仲よくやってんの?
うん? う~ん さあな。
逃げてかねえってことは悪くねえんじゃねえか?
ハハッ… こんなこと言ってる。
犬とか猫だったらよもう隙見て逃げちまうからよ。
(笑い声)
し~っ。
何だい?(清さん)聞こえねえか?
(すすり泣き)
(小梅)みんな 大人だから昼間は無理して笑ってるけどさ身内に死なれて 家もなくして…つらくないわけないもんね。
(清さん)気が済むまで泣いてこっちは聞こえねえふりしてまた明日 何食わぬ顔でおはようって言うんだ。
孝ちゃんにはよそういう落語をやってほしいな。笑っても泣いてもいいじゃねえかってやつをさ。
♪~
スッスッ ハッハッ スッスッ ハッハッ…。
シマちゃん?
スッスッ ハッハッ…。
シマちゃん?
シマちゃん! 無事だったとね!?
シマちゃん!
(シマ)金栗先生。
スッスッ ハッハッ…。シマちゃん。
♪~
すいません すいません… 失敬。
失敬。 すいません。
韋駄天だ!持ってきました。
ありがとう!
重かですよ。
すいません… すいません…あっ すいません…。
増野さん!
(可児)校長!お~ 可児君!
ご無事で…。あ~ みんな。 ハハハハ。
とにかく みんな 無事でよかった!
まあ とはいえ このご時世我々に 一体 何ができるのか…。
いや こんな時だからこそ私は 次の3つを提案します。
1つ 来年 パリで開催される第8回オリンピック大会に選手を派遣する。
2つ 全国陸上競技大会を開催しこれを予選とする。
3つ…。(トクヨ)お待ちになって。
嘉納先生あなたは何も変わっておりませんのね。
全くだ… あっぱれですよ。(笑い声)
時局を見てみて下さい。
今 スポーツだの体育だのと言ってられる状況ですか!
私は嘉納先生のご提案を支持します。
野口さん…。
非常時こそ 強国 日本!
屈しない東京を世界に アピールすべきです!我々はスポーツマンです。
我々ができるのはスポーツによる復興だけです!
見たまえ 自分の姿を。革靴に子ども用の下駄を履いて。(笑い声)
なにが… スポーツによる復興だよ。笑われるぞ。
いいぞ いいぞ~。 これだよ これ!
こういう議論をやりたかったんだよ 私は。
…で 3つ目は何です?
運動会だ。
金栗…。
(治五郎)白状すると これは彼のアイデアでね。復興運動会を この外苑バラックでやってはどうかと言うんだよ。
復興運動会? 体協がかね?
はい。 バラックやら 避難所やら回っとりますと最初ん頃こそ にぎやかでしたが今は みんな ふさぎ込んどる。
不安で 不安で たまらんのだと思います。
地震だ!
こん暮らしが 一体 いつまで続くのか…。
♪~
(治五郎)変わらず元気なのは子どもたちだ。彼らにとっては 遠足や林間学校がず~っと続いてるようなもんだからね。
子どもたちの笑顔がここでは唯一の救いだ。あの子たちにこそオリンピックを見せてやりたい。
♪~
そこで 運動会だ!
男女問わず 子どもから大人まで誰でも参加できる復興運動会をこの外苑競技場でやる!
これこそスポーツによる復興じゃないかね!?
はい!ええ そう思います!
外苑バラックの自治会長と話す機会を設けてくれ。
どうも 自治会長です。
何だ~ 君かね!
娯楽は正直 間に合ってんだよね。
上野か日比谷でやったらどうよ?
何だよ もともとこの場所は私がつくったんだよ?
だったら 暮らしてみなよ バラックでさ。そうだ やってみろ!
一晩中 ノミやシラミに食われてみな!そうだ!
参加できねえやつはどうすりゃいいんだ?
ケガ人だって 大勢いるんだ!動けねえやつは ほったらかしか?
(可児)いやいやそういうわけじゃなくてですね…。
(増野)あっ あの…!
あの… やって頂けないでしょうか?
増野さん…。なるべく大々的に宣伝をして…。
シマの耳に届けば必ず駆けつけると思うんです。
やりましょう。
♪~
(五りん)<自治会長と 体協の名誉会長がしぶしぶ手を打ちまして…>
(拍手)
<復興運動会が行われる運びとなりました>
やっぱり スポーツは娯楽の王様だ~!
ハハハハ…。
♪~
フォーティースリー!
あ~ 安仁子さん!
<夫 大森兵蔵をみとった彼女は私財をなげうって作った児童福祉施設で活動していたのです>
(安仁子)この子たちも地震で親を亡くしたの。
参加してもオッケー?
も~ちろん! ウェルカムです!
(永井)まだだ こら! こら!(笑い声)
よ~い…。
♪~
よしよし 大丈夫 大丈夫。大丈夫 大丈夫…。
フ~!
<競技は 子どもたちのかけっこで幕を開けました>
おっ 速い 速い!
<復興運動会の競技数は 40種目に上り40歳以上の男子による100m走親子競走など 家族対抗の競技…>
始め~!
<球技も行われました>
はい 始め!あ~!
当たったボーイは 外野。 ねっ?当てたガールは 内野復活。
<大森兵蔵が伝えたバレーボールは今や女学生に大人気>
♪~
ほら! みんな もっと腰を落として!
♪~
違う違う違う 違う違う違う…。
<子どもからお年寄りまで腹の底から大笑いしてにぎやかに楽しんだそうです>
おい… ここ直してから行かんか。
…ったく。金栗先生。あっ?
あっ 君は…。
人見絹枝です。
ああ… あっ はい。
えっ 岡山から?はい。
あっ そぎゃんです…あっ 遠かところ ご苦労さん。 座って。
去年 シマ先生にお手紙を頂きまして。
あ~ 陸上大会にも熱心に誘っとったようで。
はい これ。 どうぞ。ありがとうございます。
走るの嫌いじゃったけどシマ先生のお手紙に少しずつ心動かされて岡山の競技会に出て走り幅跳びで日本新記録を出しました。
はっ!? 日本新…。
君… 君が? えっ!?
うわ~! うわ~ そぎゃんね!
いや~ よう がまだしたね~!
あっ…。ですから 今日は…シマ先生に どうしてもお礼が言いとうて。
あっ… そぎゃんですか。
(増野)竹早の増野シマ 知りませんか~?
竹早の増野シマ 知りませんか?竹早の増野シマさ~ん?えっ?
増野さん!はい。
人見絹枝さん。人見…? ああ 増野です。
初めまして。
あの~ 手紙 読んでもよかですか?
どうぞ。
失敬。 すいません。
(シマ)「人見絹枝様先日は 突然 お声をかけてしまってごめんなさい。増野シマと申します。私は金栗先生に憧れ走ることに夢中になりました。女子スポーツの普及が今の私の生き甲斐です」。
♪~
「私は背も低いし 人見さんのような恵まれた肉体も持ってない。おまけに 子どもが生まれたばかり」。
人見さん 足のサイズは何文?
(永井)支度して~ よ~い…。
(シマ)「だけど 私は走ることが大好きです。風を受け 息を弾ませ地面を蹴って走るのは気持ちいい。男も女もないはずです。最近 ようやく教え子が陸上に興味を持ってくれました」。
「女子の陸上はまだ世界でも認められていません」。
「だけど 私はあなたの走る姿を世界中に見せたい。私が金栗先生に憧れたようにあなたの走る姿を見て…」。
こればい。
「あなたのようになりたいと願う女の子が一人でも現れたらそれこそが女子スポーツの未来を開くのです」。
ついに ここまで来たばい!
(拍手と歓声)
♪~
増野さん?
いえ…。
♪~
<ケガや病気で参加できなかった人のために復興寄席も開かれました>
「おっ 今日はよ ひとつ お互い怖えもんを言い合おうっていう趣向なんだ。おめえ おめえ 何が怖えんだ?」。
「俺かい? 俺はな ヘビが怖え」。「あっ ヘビね。 そういうもんだな。おっ そっち 何だい?」。
「えっ 俺? アリ」。 「アリ? ああ そう」。(笑い声)
俺は火事が怖え。俺 地震が怖え。
(笑い声)
俺は かあちゃん 怖え!
<ラストを飾るのはオリンピック出場選手による徒競走です>
誰かと思えば 三島さん!ばっ!
(弥彦)僕が走らなきゃ 締まらんだろう。
お~! こいつは ちょっとした東京オリンピックだぜ!
出たな 痛快男子!ご無沙汰してます。
(本庄)何だよ結局 三島君が持っていくのかね。
ちゃっかり ユニフォーム着てるし。
金栗君。はい。
君と走るのは ストックホルム以来だね。う~ん…。
いや 真剣勝負は初めてばい。
(吉岡)よ~し 盛り上げていくぞ!そ~れ! 韋 駄 天!
(一同)韋 駄 天! 韋 駄 天! 韋 駄 天!(永井)うるさ~い! 静粛に!
静粛に~!
支度して~!
よ~い…。
♪~
ストックホルムから 12年か。彼は ず~っと走り続けておる。彼が走ると みんなが笑顔になる。
(可児)まさに韋駄天ですな ハハッ。
そぎゃんよかもんじゃなかです。えっ?
ああ バカだ… バカの走りよるて皆 笑っとるだけたい。
スッスッ ハッハッ スッスッ ハッハッ…。
おりゃ~! 走らんか!
♪~
よっしゃ~! よっしゃ~ ありがとう!おい 金栗君!
こら おとうちゃん!マラソンじゃなかて。
おとうちゃん?おとうちゃん?
「怖い怖いって一体 本当は何が怖えんだ!?」。
韋駄天が来たぞ~!「今度は韋駄天が怖い」。
(どよめき)
いい加減にしねえか! おい!いっぺんぐらい サゲまでやらせろ!
ハハハハ! 失敬!
はあ!?
(一同)韋 駄 天! 韋 駄 天!韋 駄 天! 韋 駄 天!
行け 韋駄天!はい~!
♪~
こうして復興運動会は幕引きとなりました。
その晩 外苑バラックから泣き声は 一切 聞こえませんでしたよ。
ええ… みんな 疲れてとっとと寝ちゃったんでしょう。
スッスッ ハッハッ スッスッ ハッハッ…。
(一同)韋 駄 天! 韋 駄 天!韋 駄 天!
<水泳総監督 田畑政治。史上最多の金メダルを日本に もたらした男>
(田畑)徹底的にたたきのめし 自信喪失に陥れてやるんですよ シシシ…。
彼は口が韋駄天だな。
兵隊が武装して クーデターっていうのやってんですよ。
たった数日間だけど スポーツで国を変えることができるじゃんね。
<「いだてん」第二部スタート!>
10万人以上といわれる関東大震災の犠牲者を祭る慰霊堂。
ここに飾られている絵画は自らも被災した画家 徳永柳州が震災直後の東京を歩き回り描いたものです。
♪~
徳永は各地で巡回展を行いその入館料を復興支援に充てました。
震災から85日後に行われた復興のための運動会ではバラック内の対抗競走や孫探しと題した競技も。
当時 「震災以来初めてのにぎわい」と言われました。
(森田)市民の気持ちを一つにするというスローガンなどを打ったりとかそういった運動も功を奏しまして自分たちの街なのだから自分たちで復興しようという機運が高かったように思われます。
♪~
明治通りや永代橋など復興計画として建設された多くの道路や橋は 今日にまで残ります。