健康診断のエビデンスについて

健康診断のエビデンスについて

(より詳しく知りたい方のために)

健診で行われている項目には、実は“健診として”の医学的な根拠(エビデンス)が乏しいものが多くあります。
 一般に国の定めた“血圧、身長体重”など法定項目の多くについては、最初に掲げた“早期発見・早期治療”の目的に対する意義がほぼ確立しています。しかし、実は十分な“証拠”がない検診項目も多くあるのです。たとえば、がん検診での胸部X線検査は、肺癌に対する有効性の根拠がないとして世界のほとんどの国では行われていません。(CTでなければ見つからないものが多いのですが、CTを全員に行うのはX線被ばくなどの問題も多く現実的ではないからです)。心電図検査が虚血性心疾患を見つけるのに有効という根拠はありません。また、広く行われている前立腺腫瘍マーカー(PSA)の検査は、早期がん発見に有効であることは確立していますが、早期発見する事が寿命を延長できるかどうかについての確実な証拠はまだありません。さらに、放射線検査をすると被ばくによってむしろガンになりやすくなるので健診は避けた方がよいという意見も一部にはあります。(胸部X線程度であれば決してリスクは高くないという研究結果が出ており、過剰に心配する必要はない、というのが大多数の専門家の見解です。)脳ドックについても無意味であるといった議論が多くあります。
 こうした見解には妥当な箇所もあるかもしれません。しかし、“根拠がない”とは、“無効である”という意味ではありません。症状がないうちに上記のような検査がなされなければ見つからない疾患があることは事実です。したがって、健診が、一人一人の受診者の方にとって有用な可能性は十分にあります。また、そもそもこうした議論の多くは主に“集団での医療経済的有効性”を主眼になされています。(特に欧米ではその傾向が大変強いのです。)つまり検診の多くの項目は費用に見合う経済的効果がないと判定され、エビデンスがないとされてしまうわけです。 つまり、根拠がないからといって単純に無意味であると言い切ることはできないのです。日本では医学的に有用な可能性がある項目が積極的に健診に採用されています。さらにさまざまなオプション項目も自由に受けていただく事が可能です。多くの検査を受けることによりいくばくか体や費用の負担はかかりますし、もしかしたら不要な心配事をかかえてしまうことになるかもしれません。しかし、検診を受けなくては分からない事が多くあることも事実です。

 大事なのは健診をお受け頂くご本人が、各検査の意義・メリット、検査に伴うリスクと、費用(対価)の三つをよく検討していただき、ご納得いただいたうえで検査を受けていただくということです。言い換えれば、健診を受けるものも受けないのも、受けた結果をどう活用するかも、ご本人の判断にゆだねられています。是非健診の意味と限界をご理解頂き、健康管理に役立てていただけますようお願いいたします

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