オーバーロード シャルティアになったモモンガ様の建国記 作:ほとばしるメロン果汁
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デブゴンのドワーフに対する態度は『主人の友人』くらいです
モモンガ様については、魔導王陛下呼びはできないのでシャルティア様呼び
要塞創造魔法の術者しか開けられない扉の設定?
開けっ放しにしてドワーフ製の扉を後から付けたんじゃないかな?(滝汗)
「ふぬうううう! っぐぬううっうううう!」
「フンっ! ぐうっ! も、もうちょっと……」
「よっしゃっ! お主ら、もうひと踏ん張りじゃぞ!」
「任せろい」「今度酒奢れよ!」「お主少しは痩せんか」「無駄話は後じゃ! 押すぞ」
「せーのっ!」
銀糸鳥がドワーフ国に辿り着いた日の夕刻。砦の窓から赤い光がさす中、年長者のドワーフの言葉に次々と威勢のいい声が上がる。ヘジンマールの引っかかっていた尻尾の付け根の部分、
そこにドワーフ達の力が集中した。合わせてヘジンマール自身も体を振り周りの壁を使いながら前に進もうとする。やがて――
「フンンっ!フンっ!っと……あ、抜けました!」
スポリッと通路に挟まっていた自身の体が抜け出るのを感じ、巨体からホッと息を吐き出す。
「ふぅ、疲れたわい」
「全くじゃ。お主前に別の通路でも引っかかっておったじゃろ」
「面目ないです、反省して今日は別の通路を選んだのですが……」
完全にハマってしまい抜けられなくなったのだ。
ドワーフの城では引き籠っていた事を差し引いてもこんなことはなかった。おそらく大型のゴーレムを城の中で動かすためか、通路などはヘジンマール達でも通れる広さがあった。だが彼の新しい主人――シャルティア様がクリエイト魔法で作り出したこの砦は、元が人間用なのか一部の通路などはドラゴンには手狭に感じられた。
仮にドワーフの城で動けなくなっても、力任せに壊してしまえばよかった。(すぐに父である
もちろん主人の物であるこの砦を壊すなど、考えただけでゾッとしてしまう。
ムンウィニア=イリススリムを素手で微塵に引き裂いた光景は、いまだ鮮明に思い出せる光景だ。
砦を壊すくらいなら自分を守るために、自分の体が傷ついた方が百倍マシという物である。
壁でこすれた際についた傷を見ながら思わず安堵の息を漏らした。
「それよりもお主、シャルティア様に呼ばれているのではなかったのか?」
「あ! そうでした。すみません御礼はまた後ほど」
ドワーフ達にペコリと頭を下げ、太い尻尾を当てないように慌てて主の元へ――
「おぉいちと待ってくれ!」
「え? あ、はい」
急いでいた体をピタリッと止め、首から上だけを動かし声を掛けてきたドワーフに向ける。
『銀糸鳥』への宣言で失敗したばかりか、遅れれば主人の機嫌を損ねるかもしれないため、
一瞬無視することも考えた。
だが、当の主人から『ドワーフとは友好的に接するように』と言いつけられているため無視など出来ようはずもない。下手をすれば今曲げているこの首がねじ切られてしまう。
「商人会で噂になっておったんじゃが、シャルティア様がここを離れて帝国に行くというのは本当かの?」
「……今朝がた帝国の冒険者なる者達が来てそういった話はありました。シャルティア様のご意思は聞いてませんが」
「そうか。なにやら外交官も同行すると聞いたんじゃが、先走り過ぎた噂かの」
「そちらは完全に初耳です。これからシャルティア様に会いますので聞いてみます。では!」
強引に話を切り上げ今度こそ主の元へ急ぐ。
機嫌次第では今の噂を報告してもいいかもしれない。頭の中で会話の流れを幾つか組み立てながら、己の父親でも悠々と動き回れそうな円形のホールに飛び出し、螺旋階段から上階へ向かう。
ドワーフ曰くいつまでも消えないランプで照らされ、目が眩む空間には高価な調度品の数々。
そしてなによりホールのあちこちに飾られた赤い旗に目がひきつけられる。主が以前――いや、今も所属している
(改めて考えると……とんでもない主人に仕えちゃったんだろうなぁ……)
左右の壁と中央の壁に飾られ、おそらく四十本以上あるであろう旗に体を擦り付けないよう
慎重に迂回しながら最上階へ全力で駆け抜けた。
♦
「ぜぇ…はぁ……ふぅ! ……よしッ」
扉の前で息を整える。一月前までは完全に引き籠っていたが、最近は読書の時間を挟みつつ命ぜられた仕事や主への講義という名の『自身の有用性を必死にアピールするための時間』のせいか、少し体が軽くなった気さえする。
だが、体はともかく運動不足は短期で改善することはないようでこういった時は非常に困る。
息が乱れた見苦しい姿を見せるわけにもいかず扉の前で必死に息を整え、体に汚れがないかを
チェックした後、中の人物が不快に感じないよう注意しつつゆっくり扉を叩いた。
――コンッ、コンッ、コンッ、コンッ
「ヘジンマールか?」
扉の向こうか澄んだ声で返事が聞こえる。どうやら不機嫌ではないらしい。
そのことに内心で安堵の息を吐き出しつつ慌てて返事を返す。
「はい! 遅れてしまい申し訳ありません」
「ん? 別に遅れてはいないと思うけど、とにかく入ってきなさい」
「は、はいッ」
了解を得てから扉をゆっくり開ける。幸いこの部屋を含めて最上階は広い作りになっており、入室にも不便はない。静かに入室した後、扉を閉め辺りを見回す。
「今入浴中だからその場で楽にして」
「は? で、出直してきましょうか!?」
「それでは二度手間でしょう。創造魔法で貴方用の椅子も用意してるから」
見れば奥の扉の脇にこの砦内では見られない、かなりの大きさの椅子がある。
(どうしよう、今朝の宣言で失敗したばかりなのに優しいって……これヤバイ?)
ヘジンマールの得た知識では、ドワーフも人族も入浴中は一種の無防備状態。
ドラゴンなどの元から身体能力の高い種族にはわかりにくいが、装備などを外している場合が多く戦闘能力は大きく下がる。だが素手でドラゴンを切り裂く主にそれが適応されるとは到底思えない。
(多分不機嫌じゃないし、好意であれば受け取るべきだけど)
一応の自信はあった。この半月ほどの講義で知識を披露し、自身の有用性はアピールできた。
それに今まで接した限りでは、たった一度の失敗で首をねじ切る主人とは思えない。おそらく。
ただ彼女の
というのがヘジンマールの気分を重くする。
(あの時、聞くんじゃなかった……胃が痛い。誰か代わってほしいなぁ)
とてつもなく迷ったが自身の過去の業績を信じ、ひとまず座ることにする。
「で、ではお言葉に甘えます」
巨大――といってもヘジンマールには丁度いいサイズの椅子に尻尾を巻くように体を収める。
ふわりとした感触がドラゴンの堅い鱗越しに感じられ巨体が椅子に沈み込むが、
内心の緊張は増すばかりだ。
しかし主人の創造魔法は常軌を逸している。この椅子や砦にくわえて以前は馬車も見せられ、口ぶりからして他にも出現させることが出来そうであった。
ヘジンマールは本だけで得た知識なので当初自信はなかったが、創造魔法は維持するのに
(世界は広いなぁ……)
世界の広さを本で学んでいたつもりだったが、己の主人を見ているとどれほど小さいものだったかがわかる。勿論得た知識が無駄とは思わないし、その知識で力自慢のドラゴンとは別方向から主人に取り入る事はできたと思うが。
「あー…それでヘジンマール」
「は、はいッ」
これまでの事を考えていたが、主人の声で我に返る。
(いけない! 集中しなければッ! たぶん命まではないだろうけど……)
「……今朝は少し言い過ぎました、許してください」
「……え?」
一瞬何を言われたのかがわからなかった。もしかして謝られた?誰に?
「け、今朝と言いますと?」
「銀糸鳥のみなにした宣言よ」
「は!? いえ、あれは考えもせず強く出過ぎた私がいけなかったのです! その言いだしておきながら……中途半端なものでしたし……」
言葉の後々が尻すぼみに小さくなってしまう。だがこれは本当に思っている事だ。
初めての試みだったためか、知識だけでは駄目ということを身をもって知った。経験がないのはあの時点では仕方ないが、せめてドワーフか主人に相談すればよかったのだ。
「それはそうだけど、扉を開ける前に私が確認すればよかったのだし。あの時言い淀んでいた
あなたの地位、というか役割か? はっきり決めてなかった私にも責任はあるかと思って」
(お、…おぉお……)
先程までこんな心優しい主人を疑っていたのかと自らが恥ずかしくなる。
そして己の駄目な父親に爪の垢を煎じて飲ませて欲しい、いやドワーフ的に言えば髭の先だっただろうか?
「とりあえずあなたの役割は私の教育係、だと私が侮られるかな? だとすると相談役でいいか」
「そ、相談役ですか?」
「あなたの知識は今後とも無くてはならないものだしね。他のドラゴンはどうしようか……」
そこまで評価してもらえていたことに体の肉が僅かに震える。
力を持っているだけでなく配下に対する心配りもして貰える主になら、今後も喜んでついて行くことができそうだ。
今後主が帝国に行く時も喜んで同行を――、
「あ、お、お考え中のところ失礼ですが、お知らせしておきたいことがございます」
「ん? 何かしら」
「商人会のドワーフから聞いたのですが、シャルティア様が帝国に赴く際は外交官が同行するという噂があります」
「あぁー……そう。なにかさらに大事になってたような」
「シャルティア様は帝国に行かれるおつもりなのでしょうか?」
「……呼ばれてるようだしね、後興味もあるから」
なぜだろうか?恐らく興味があるのは本当の事なのだろうが、どこか諦めのように聞こえる。
帝国からの客を相手にして疲れたのか、女王ではないという秘密がやはり問題なのだろうか?
「……やはり、王族に会われるの気が引けますか?」
「確かにそれもある」
「私が思いますに。シャルティア様はアゼルリシア山脈を征服されたようなものです。
女王を名乗っても問題はないかと」
「う~ん、いやそれだと国とは呼べないでしょう。
多分帝国から見れば、せいぜいモンスターを率いるお山の王様とかになってしまうか」
種族としての生まれがドラゴンであるヘジンマールにはピンとこない。
だが本で得た知識で補完すれば主人の考えもわかってくる。多人数で形成した社会を収める者が王なのだ。
周りの国に認められ、領土や主権他の国との交渉――つまり外交能力などがある大人数の組織。
「なるほど……たしかに人間は認めないかもしれません」
「それに今一番悩んでるのは礼儀作法とか……後喋り方も」
主人が吐露した悩みに、はて? と堅い鱗に覆われた首を傾げてしまう。
今朝見る限り帝国の冒険者への対応は、完璧といっても差し支えないのではないだろうか?
相手は主人に見惚れていたようだし、友好的な態度にも終始丁寧に答えていたように思えた。
途中でヘジンマール自身は案内役として席を外したが、同席していた商人会議長も良好に終わったと聞き及んでいる。帝国に赴いた際、今日と違う要素は――
「……相手が王族の場合ですか」
「えぇ、今朝はなんとかなったけど王族に対する挨拶の仕方とかは流石にね」
「本で良ければございますよ」
「え? あるの!? 帝国王族のマナー講座のような本?」
水を打つような音が奥から響き、扉の隙間から「やった!」という言葉をドラゴンの鋭い知覚が拾う。実際中身を見て貰わないとわからないが、おそらく主の期待に答えられそうな本に心当たりはあった。
「ドワーフの城で読んだ記憶があります。今はドワーフ達の物ですがシャルティア様でしたら」
「そう、ならば早速これから取りに――」
「いえ! こういった雑務は配下の務めです。
「そう……か、確かにそうかもしれないわね」
これは別の本で得た知識だ。宣言の失敗も同じ本だったが、別に本の知識は間違っていない。
支配者は配下の者を上手く使わなくてはならない、極論だが一番上手いものに仕事を全部投げてしまえばいいのだ。主のような絶対的な力があるのならばなおさら雑務は配下に任せて、自身の力を存分に発揮して貰えばいい。
そしてそれがヘジンマール自身の安全にも繋がるのだから。
「私でしたらドワーフとも話がしやすいので大丈夫かと、行ってまいります!」
「えぇ、じゃあヘジンマールお願いね」
自らの主に了解を貰った後静かに椅子から降り、部屋の外に出る。
部屋を訪れた時とは逆に随分と体が軽く感じられた。
たぶんナザリックなし部下なしの単独転移で一般人感覚のアインズ様だと
威厳とか支配者感のない状態なので、このままだとジルクニフとの会談は……
ジルクニフと初対面書籍版との違い(このまま何事もなく進んだ場合)
・ジルクニフがワーカーを送り込まない、帝国側は謝罪など後ろ暗いことが無い
むしろ本作のアインズ様は帝国へ被害を与えたのでは?と考え中
ジルクニフはそんなことよりもあの力は危険過ぎると考え中
・ナザリックなし(圧倒的財力と異形の怪物に恐怖しないハゲ)
このまま進むとジルクニフのホームである帝国で会う事にフサフサ
・アインズ様の見た目と考え方
見た目は恐ろしくない(見た目は)
ナザリックのNPC達がいないため絶対の支配者になる努力をしていない(今のところ)
部下が世界征服を考えてない、欲しいのは名声とこの世界で興味を持った事くらい
ジルに利用され、こき使われるアインズ様は見たくないと思う人は多い(?)と思うので
デブゴンに少し強化してもらいます。本読んで鏡の前で練習するだけなので付け焼刃ですが。
喋り方もだんだん原作似になってくるんじゃにでしょうか、TS補正があるのでまんまはないかと。
アニメだと描写はあまりありませんが、アインズ様は勉強家で本もかなり読むっぽいし多少はね。
次回、出発準備