日本ボクシングコミッション(JBC)と日本プロボクシング協会(JPBA)は21日、格闘技界やネットテレビなどで行われている「ボクシング」と銘打つイベントについて、共同宣言を発表した。
以下、宣言の内容。
ボクシングは最古のオリンピック種目の一つであり、また他の単なるショービジネス的競技とは一線を画して、長い歴史の中でスポーツとして認知されてきたプロ競技でもある。
我々各団体はこれまで、ボクシングがそうした競技スポーツであるという自負を持って、世界諸団体とも協働しながら、安全性重視の姿勢等に基づき、公平・公正なルールを策定し、その運営に務めてきた。
しかるに、近時「ボクシング」「ボクシングルール」などの名の下、商業性のみを追求する一方、安全性を軽視し、公平・公正とは言い難い運営をするイベント、企画等(「非ボクシングイベント等」)が散見される。これらは、競技スポーツとしてのボクシングに長年にわたり寄与し、発展させてきた我々各団体の努力を踏みにじるものであり、看過できない。また、安全性、健康管理上も極めて重大な危惧がある。スポーツ文化を守り、ボクシングの健全な発展を改めて期するため、我々は下記の通り宣言する。
記
1、非ボクシングイベント等には関与、協力しない。
2、非ボクシングイベント等の不当性を、今後も世論に訴え続ける。
3、非ボクシングイベント等に参加した格闘技選手等が、我々各団体が定める手続きを経た上で、競技スポーツとしてのボクシングに参加することについては、門戸を開放し、これを歓迎する。以上
ちょうど22日にはAbemaTVの番組企画でキックボクシングの那須川天心と元3階級王者の亀田興毅氏が特別ボクシングルールで対戦する。タイミングが重なったが、JBCの安河内剛事務局長は「この共同声明はAbemaTVさんに向けたものではありません。たまたまこのタイミングになっただけです」と説明した。
声明を出したきっかけは、昨年末のメイウェザーと那須川のエキシビションマッチ以降、ボクシングの名前を借りたイベントが急増したことにある。その後、議論を重ね、約2カ月前から声明を準備し今回の発表に至った。安河内事務局長は「ボクシングという看板を利用している格闘技イベントや団体が増えてきて、ボクシングそのものが浸食されてきている。大阪ではライセンスのない人がボクシングを興行しました。公式記録にも載らないような試合。これからも横行しそうなので、今のうちにクギを刺そうと。けん制の意味も込めて、ボクシング界としてのポリシーを声明として出しました」と狙いを語った。
声明には内省の意味もある。「最近はボクシング界もタガが緩んできて、非公式イベントに協力することでボクシング自体が脆弱(ぜいじゃく)化していくということを意識していない。だからボクシング界もそこをしっかり意識しましょうというアピールもある。一方で、これまでボクシング界も敷居が高すぎた。我々も襟元をただして、門戸を開放できるところはしたい、ということも声明に盛り込んでおります。我々もしっかり意識を持って新しいボクシング界を模索していくという意味でも、しっかり自分たちの立ち位置を認識していこうということです」とボクシング界の改革も見据えた。
JPBAの林隆治事務局長補佐も「今回はこちらの姿勢を示したのみで、決して協力しないというわけではない。もしボクシングをやるのであれば、テストなど手続きを踏んで、きちんと講習を受けてもらいたい。何かが起こって、ボクシングが危険、と思われるのは避けたい」と説明。選手の安全と競技性を守る意向を示した。