元Jリーガーの石塚啓次氏がスペインのバルセロナで開業したうどん店がUDONという商標の使用を中止するようスペインの弁護士から警告されるという事案がありました。石塚氏のブログ記事によれば、
ということだそうです。
TMVIEWで検索すると、確かにUDONという文字商標が、「飲食店と宿泊施設の経営」等を指定役務としてスペインで登録されています。登録日は2003年、権利者はUDON FRANCHISING, S.L.というバルセロナの会社です(これが同社のサイトのようですが、うどんよりもラーメンをフィーチャーしてるように見えます)。
商標登録がある以上、他人によるその商標の使用を禁止できるのですが、うどん店が看板にUDONと書いてはいけないというのは何とも理不尽ですね。
さて、スペインの商標法(日本語訳)を見ていると以下の規定があります(日本の商標法とよく似ています)。
ゆえに、うどん店が看板にUDONの文字を使用することに対して、この商標権を行使することはできないように思えます。
とは言え、石塚氏は、資金も時間もないことから裁判で争うこともできず、相手の要求を呑んで、看板を付け替えざるを得ないようです。しかし、この件は、今回に限った話ではなく、今後、他の日本のうどん店がスペインで開業する場合にも問題になり得ます。そのたびに、UDON商標でもめるというのは、日本の国としての問題と言えます。
これで思い出した別の事案があります。エチオピアの特産コーヒーブランド「シダモ」の商標登録(権利者はエチオピア連邦民主共和国)が日本において「単に産地を表示するものにすぎない」等として無効とされたことに対し、知財高裁において無効を取り消した(有効に戻した)ケースです(参照ブログ記事「企業法務戦士の雑感」)。
上記ブログ記事によれば、この事案を担当した日本の弁護士事務所(西村あさひ(超大手です))とエチオピアの弁護士事務所は、国際的プロボノ活動(社会貢献活動)と位置づけて受任したようです(要はものすごく安く(ひょっとすると無報酬で)受任したということです)。
かたや商標登録の無効を取り消す、かたや商標権の効力がないという裁判所の判断をもらうということで方向性としては逆ですが、自国の食文化を国として守るという点では同じです。どこかの大手法律事務所がプロボノとして支援してくれないものかとも思いますが、本来的には「クールジャパン」の一環として日本政府として支援すべきと考えます(コンテンツ企業や箱物に予算ばらまくことだけが「クールジャパン」ではありません)。