銀座「すきやばし次郎」は店主次郎とその息子「ヨシカズ」を追ったドキュメンタリー映画にもなり、海外でもよく知られた存在のようです。
日本の寿司とはかけ離れた、海外のとんでも寿司が話題になっている今日この頃…。
本場の鮨に対する、アメリカ人の率直な反応とはどのようなものなのでしょうか!?
新婚旅行で「すきやばし次郎」に訪れた、アメリカ人ライターのレビューをご紹介します!
Netflixで有名な「すきやばし次郎」に行ってみた!
“Jiro Dreams of Sushi”で知られる「銀座すきやばし次郎」に、新婚旅行で行ってみました。
「ミシュラ ンガイド東京」で5年連続で最高の三つ星の評価を受ける、世界最高級の鮨屋です。
控えめに言っても、今まで経験したことのない最高の鮨でした。
鮨はいろいろ食べてきたけど、この店だけが「本当にオススメしたい店」だと言えます。
あの店での体験は本当に素晴らしいものでした。
おまかせコース、とは?
次郎でのメニューは、20貫の鮨が20分以内に出される「おまかせ」です。
その日次郎が市場で仕入れた魚によって、職人が客に何を食べるか命じるというものです。
鮨が私達の皿に触れるやいなや一瞬で胃袋へと消え去りますが、実は、これこそが重要なのです。
次郎は、鮨が出された瞬間、この数秒が味のピークだと信じています。
私はスーパーで買って7時間後の寿司を食べたことがありますが、これもまぁ悪くありませんでした。
でもそんなことはどうでもいいのです。釈迦に説法、です。
カウンターに座っただけで止まらない緊張
カウンター。
そこにはパトロンたちと、自分の「作品」に絶対の自信を持っている職人たちが織りなす、異様な空気が漂っています。
私はとても緊張しており、心のなかで「お前は浮いてない、いいオキャクサンだ……!」と何度繰り返したか、わかりません。
私たちはここに来る前に腹を空かせて備えてきたわけですが、徒労に終わりました。
というのも、世界一の鮨シェフを前にして私の「欲望という名の忍者」はドロンしてしまったからです。
彼が笑わないのは恐らく、スシ・テクニックと引き換えに、悪魔に笑顔を売ってしまったからなのでしょう。
「見習い」にメニューを頼む
20歳かそこらの見習いは、一年間の「米を炊く」修行を経て、今度は25年ほど「米の違いがわかるようになるまで」修行を積むのです。
やっと鮨が握れるようになるのは、サラリーマンが引退するような年齢になってから。
「キング・オブ・鮨「次郎」によるミラクルなメニューください」というのは長すぎるので、私は彼に「メニューください」とだけ言いました。
一糸乱れぬチームワーク
そっとメニューを開けようとするやいなや、次郎とチームは疾風のごとく動き出しました。
包丁とまな板はカウンターにさっと置かれ、彼らの動きはまるで何千回も練習を繰り返した振付師のようでした。
経験という言葉は適切ではありません。これは「熟達」です。
他の人がやってみると、恐らく失神したホームレスのようになることでしょう。
また、事前にネットで調べた情報によると、醤油皿は使わないほうがいいそうです
。これは恐らく、「アメリカ人はサルサソースにトルティーヤをダンクインするように、醤油の中に鮨をドボンするというのは事実か?」というテストの一環なのだと思います。
「次郎の鮨」とご対面!
私達が席について90秒、一つの鮨が皿に置かれました。
私はそれをうやうやしく中指と親指で掴み(YouTubeの「正しい鮨の食べ方」動画で予習しておいたやり方です)、口の中へ放りこみました。
これは単なる米の塊と、ちょっとのわさびと、魚の切り身の集合体のはずなのに、私はそこに神を見ました。
「お客さんの空気を読む」という、職人技
普段はぶっちゃけあんまり好きじゃないイカでさえ、私の舌の上で優しくとろけていきます。
次々繰り出されるネタの全てが完璧で、しかも私が飲み込む前に次のネタがきちんと皿に整列しています。
次郎は、私の食べるタイミングに合わせて、作るペースを調整しているというのです…!
最初はゆっくり味わっていたのでBPM25というところでしたが、それに気づいてからはBPM50くらいにしておきました。
事件は突然に…
サヨリが出された時、私はまだアカガイが口の中に入っていました。
これはヤバイ。次郎は「鮨は出されてから数秒がピーク」だと言っていたのに、そのルールに背くわけにはいかない…!!
私は額に冷や汗をかき、必死で思考を巡らせました。
しかし無理にアカガイを飲み込めば、それまで食べた鮨9貫も一緒に戻してしまうことは確実でした。
世界一の鮨レストランでゲロなんて、世界のトップニュースになってしまいます。
私はパニックに陥っていましたが、食べ続けないといけないことだけはハッキリしていました。
この鮨にいくら払ったと思う!?「ランチ」に、「ハネムーンの予算全体の2割」を費やしてるんだぞ!?
職人とヨシカズは、こんなガイジンに自分のペースを乱されて明らかにイライラしているようです。
自分=アメリカ人代表、と思え
みなさんは、「アンタちょっと緊張しすぎなんじゃないの?」と思っているかもしれません。
でも言わせてください、私はあの「次郎」のまな板の目の前に座ってるんです。
自分の行い一つで「結局アメリカ人はただネットフリックスで見たから~という半端な気持ちで店に来て、店を出たら「やっぱポテチのほうが美味いわw」とか言うだけの野蛮人だな」と思われるかもしれないのです。
ええい、ままよ!私は、鉛のようなアカガイをついに飲み込みました。
大きい方を妻に?
お次は車海老です。
それはあまりにもプリプリで大きかったので、2つに分けられていました。
最初、私と妻それぞれのために分けられているのかと思い、紳士的に「大きい方を妻にやってください(キリッ)」と言おうとしましたが言わなくて本当によかった。
なにしろ、2つの海老はどちらも私の皿に乗せられたのですから。
そうやって私は、いまだに車海老を口の中に入れっぱなしです。毎晩歯を磨く前に取り出し、また口の中に入れておくのです。
この調子では、私は5月には完全にツバメになっていることでしょう。チュンチュン。
ヨシカズに追い出される外人
私はいよいよ自分の敗北を認めざるを得ない事態に陥っていました。
ヨシカズはそんな私を憐れんだのでしょう、通訳として見習いを通してこう言いました。
「食べ終わりましたか?」私には、彼が切腹用の短刀を持ってきたように見えました。
「…はい」私はそれを受け入れ、カウンターに自分の臓物を撒き散らしました。切腹!!!
「すみませんが、お待ちのお客様がいるので席を空けていただけますか?」ヨシカズがそう言ったとき、次郎を含むその場にいた全ての日本人が、笑い出しました。
私は日本語がわかりませんが、雰囲気で理解しました。
「ああ、みんなオレのことを笑ってるんだ」、と。妻でさえ、私を同情の目で見ました。ブルータス、お前もか。
メロンは美味しかったけど…
私と妻は出入り口横の小さなブースで、美味しいメロンと温かい緑茶をいただきました。
しかし同時に、次郎は「あのアメリカ人、オレの鮨は食えないくせにメロンは別腹ってか」なんて思うだろうな、と思うと心臓がキュっとなりました。
次郎での経験を振り返って…
私は食事を食べ終えることはできませんでしたが、職人の仕事を間近で見ることができました。
次郎から湧き出る倫理的で芸術的な職人技を見るために、ランチ代を払ったといってもいいでしょう。
その微妙なニュアンスが、世界一かそうでないかを分けているのです。
私は自分の「スシ審美眼」が優れているとは全く思わないので、このニュアンスを言葉にすることは出来ません。
しかし、自分がとんでもないものを食べたことは確かです。
そして悟ったのです。「お前のようなブタに、次郎の鮨は早すぎる」、と。
海外の反応
・グルメじゃないオレからしたら、わざわざ高い金払って日本のジーサンにジロジロ見られながら食うなんて、考えられないね
↑まーでもこのライターの気持ちはわかるよ。カウンターってやっぱ緊張するよね
↑オレもバーテンの目線が気になるから、バーでもカウンターには座らないわ
・サスペンスに満ちたレポートだね…私も「こう思われてるんだろうなー」とか思いながら食べたくないわー
↑行って、次郎の目の前で吐いてみてから反応をレポートしてよw
・みんな落ち着け。次郎はそんな悪い人じゃないよ。「おまかせ」だって本来は客の好みを考慮してくれるはずだし。オレが思うに、ちょうどたちの悪い観光客でもいて、そいつらにイライラしてたってとこじゃないかな
・そんなに心配すんな。日本人はゲロには慣れてる(父ブッシュ大統領が日本の総理にゲロを吐いたことを受けて)
・私なんてスシ大好きだから、見られてようがなんだろうが出されたそばからパクパク食べちゃうと思う
・いい寿司なのかもしれんが、サービスは最悪だな。なんでシェフのご機嫌とりながら急いで食べなきゃいかんのだ
↑「そういう雰囲気の店」なんだよ。ペースについていけないなら、行っちゃいかん。アンタ、「風俗嬢がキスさせてくれなかった~」とかクレームつけるタイプの客だろ?
↑えー別に自分が残そうが、他の客には関係なくない?空気読め、ってなんなんだよ
・やっぱスシにはタルタルソースとカクテルソースだよねーw
↑あとケチャップな
・一分に一個って普通にペース早すぎじゃね?友達と話す暇もないわ
・あー読んでたら寿司食べたくなってきた
・新婚旅行における正しいお金の使い方だと思うよ
世界で公開されたドキュメンタリー映画、「二郎は鮨の夢を見る」の日本語版がありました
あー、色々な自分の初めてを思い出させてくれるレポートだなあ、面白い
その後の経験を積むためにかいた恥の一つ一つまで思い出してしまうわ、まあ、若い頃にかいておいて良かったと思うべきかもしれんが