八村塁選手が米プロバスケットボールNBAのドラフト会議で、日本人初となる一巡目でワシントン・ウィザーズから指名された。スポーツ界だけでなく、日本の地方も活性化する契機にしたい。
八村選手は米バスケットボールの名門ゴンザガ大でエースとして活躍。NBAドラフトでの一巡目指名は、予想されたことだった。
それでも、いざ現実となると、感慨が湧き起こってくる。
米国や欧州の強豪国に身長などで大きく劣る日本にとって、バスケットボールは「世界」から最も遠いスポーツの一つだった。それが世界最高峰のプロリーグで三十人しかいない一巡目指名を勝ち取った。まさに快挙だ。
富山県出身の八村選手は、西アフリカのベナン出身の父と日本人の母を持つ。十二歳の時にバスケットボールが盛んなニューヨークを家族で訪れ、その魅力に取りつかれてゴンザガ大から誘われるまでになった。
ただ米国の大学は、学業の成績が下がれば試合に出られなくなることは珍しくない。入学当初は英語がほとんど話せなかったという八村選手にとって、学業との両立は苦難の連続だったことだろう。それらを努力で克服したことに、頭が下がる。
八村選手のNBA入りで日本のバスケ人気に火が付き、新たな風が吹くことも予感させる。
国内プロバスケットボールのBリーグは二〇一八~一九年シーズンが先月終了し、トップのB1に所属するチームの平均観客動員数が、創設三シーズン目で初めて三千人を超えた。特に栃木や北海道、沖縄、新潟、秋田、富山などを本拠地とする地方のチームが、順調にファンを増やしている。
そのためバスケットボールが地方活性化につながるという声も多い。野球やサッカーのように大規模なスタジアムを必要とせず、登録選手も少なくて済むため人件費を抑えられる。屋内競技場のアリーナも、コンサートなど多様なイベントに利用できるからだ。一方でアリーナの高額な維持費などが地方財政悪化の一因とされ、批判対象となっていることも事実だ。
人気が高まり、試合に観客が詰め掛ければ、そのような懸念もなくなる。それどころか、過疎化の波が覆う地方の核ともなる。
もともと体育の授業などでなじみがあり、日本でも競技人口は多い。八村選手の快挙を契機に、新たな時代の到来を期待したい。
この記事を印刷する