「サポステ」で若者の自立を応援
公明新聞:2017年3月4日(土)付
ニートやひきこもりなど、さまざまな理由から働くことに不安を抱える若者の就労を支援する「地域若者サポートステーション」(サポステ)。現在、全国160カ所に設置され、職業的自立に向けた支援を実施している。政府の2017年度予算案では、サポステの事業として、高校中退者に対するアウトリーチ(訪問支援)が新たに盛り込まれている。学校と連携するサポステの現場を紹介する。
中退者「相談先分からず」 早期訪問し情報提供なども
東京都調布市の「ちょうふ若者サポートステーション」を利用したAさん(21)は、高校中退後、コンビニや飲食店でのアルバイトをするものの、長続きしなかった。「高校を中退すると『働く』情報が手に入りにくくなる。どう働けばいいのか教えてほしかったが、誰にも相談できなかった」と振り返る。
ある日、ハローワークで、サポステの存在を知り、訪問。スタッフは自分の将来のことを親身になって考えてくれ、働く上でのマナーや履歴書の書き方などを教えてもらった。
Aさんは現在、定時制高校に通いながら、昼間はアルバイトを行う毎日。「高卒資格をめざし、長く働ける職を見つけたい」と意気込む。
17年度予算案で、サポステの新規事業として盛り込まれた中退者支援は、高校やハローワークなど関係機関との定期的な会議を通じ、中退して就労を希望している生徒を早期に掌握。サポステの職員が高校を訪問して、支援内容の情報提供を行う。中退後は、自宅などに訪問するアウトリーチ型の相談など、きめ細かい支援を実施する。
同サポステを運営するNPO法人「育て上げネット」では、都立高校から独自に委託を受け、キャリア教育の授業や相談支援を行っている。
同ネット若年支援事業部の古賀和香子担当課長は、在学中だけでなく卒業・就職後の支援の重要性も指摘し「心が折れて離職しそうになった時、辞める前に連絡してもらえるよう呼び掛けている」と語った。
自治体主導で学校とNPOの連携強化 横浜市
自治体独自の支援事業を通じて、学校とNPOの連携を強化する地域もある。
横浜市では、06年12月に「よこはま若者サポートステーション」を開設するとともに、市青少年相談センターが担っている若者の自立支援体制を強化。翌07年、ひきこもりから回復期にある若者の居場所づくりの場として「地域ユースプラザ」を開設した。現在、市内4カ所に拡大し、毎年延べ2万人が利用している。市青少年育成課の村上謙介課長は「サポステの就労支援につながるまで、段階的で切れ目なくサポートしていきたい」と語る。
また、同市は、生活困窮の状態にある若者の自立に向け、サポステ運営団体のスタッフが市内の高校などを訪問して相談支援を行う事業も展開。支援を受けている県立田奈高校の進路指導担当・金沢信之教諭は「生徒が抱える悩みは医療、家庭、経済面の問題などさまざま。生徒の在学中から、サポステで働く専門知識を持ったスタッフが関わることで支援の輪は広がる」と好評だ。
よこはま若者サポステを運営するNPO法人「ユースポート横濱」の綿引幸代理事長は、在学中にサポステを周知することによって「高校卒業後にサポステを訪れ、就労支援につながった人もいる」と、手応えを感じている。
公明、設置・拡充を推進
厚労省 認知度アップへ動画制作
公明党は、青年局(当時)を中心にサポステの設置・拡充を強力に推進。06年に全国で25カ所が設置されて以来、年々拡充してきた。また、15年9月に成立した若者雇用促進法では、サポステが法的に位置付けられ、安定的な運営が可能になった。
厚労省では、より多くの若い世代にサポステを知ってもらおうと、特設サイト(http://saposute.mhlw.go.jp/)とともに、短編動画「サポステ」を制作した。カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した河瀬直美さんを監督に、女優の前田敦子さんを主演に迎え、一人の若者がサポステのスタッフに心を開いていく様子を描いた。
2月9日からウェブで公開。ユーチューブでも視聴可能で、ウェブ公開から約1カ月で視聴回数は3万2000回を超えた。
厚労省では、今後も認知度アップを図っていく考えだ。
サポステ
15~39歳を対象に、若者の自立や就労を促すための施設。運営は民間非営利団体(NPO)などに委託している。一般的な支援の流れは、キャリアコンサルタントが相談を受け、個別に支援プログラムを作成。パソコン講座など各種セミナーや職業体験など就労支援を行う。06年の事業開始以来、サポステを利用して就職や進学など進路を決めた人は、15年までで累計9万9942人に上る。公明新聞のお申し込み
公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。