ずいぶん昔のことだが、ある野球人の思い出話が耳にこびりついている。
「2軍にいる投手が、どんなことを思いながら1軍の試合を見ているかわかるかい? 10-9で勝て! そう念じるんだよ。なぜって? オレたちリリーフはチームが勝たなきゃ報われない。でも、仲間が打たれなくちゃお呼びがかからない。だからだよ」。聞いたときはひねくれ者の言葉かとも思ったが、何度考えてもこの理屈にスキは無い。
福、祖父江、ロドリゲスで3イニング2/3。西武はマーティン、平井、増田で4イニング。同じようにリリーフ投手はゼロでつないだが、報われたのは西武の方だ。チームは勝ち、自分にもホールドやセーブがついた。
「(リリーフは)よく頑張ったね。今日は(長いイニングを投げられない)ニールだから、投手をつぎ込むと決めていた。普通ならマーティンは1イニングだけど、ニールだったからね」
辻監督のねぎらいの言葉も勝ってこそ。山賊打線を擁しながら、思うように勝ち星が伸びていないのは12球団最弱の投手陣だからだ。40ホールド、268与四球、32暴投はすべて12球団ワースト。ところがこの3試合、中日はのべ8人の救援投手に計9イニングを“完封”された。
「2、2、1点か。1試合でいつも(足した5点を)取られるのにね。投手も一生懸命やってきた。増田もマーティンも状態はいいから締まった試合になる」と辻監督の会見もますます滑らかになる。3戦5得点。その原因はわかっている。何度も書いてきたアレだ。
「今日はゼロ? あら珍しい」。辻監督が笑ったのは無四球。3戦でも2つだけ(他に2死球)。当て込んでいた制球難がもらえないと、こんな結末になる。
西武のリリーフは3戦で1勝2セーブ2ホールドを名古屋土産に持ち帰った。中日はゼロ。人はねぎらいの言葉と数字で報われる。1-2の惜敗より、どうか10-9でも辛勝を-。