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【社説】

男性の育休 職場の意識を変えたい

 国連児童基金(ユニセフ)が日本の育児休業制度の問題点を指摘した。制度は整っているのに男性の取得者が少ない。取りづらい職場の雰囲気が依然としてある。働く人も企業も意識を変えたい。

 男性の育休取得率は二〇一八年度で6・16%。徐々に増えているものの八割を超える女性に比べ低いままだ。取得日数も短い。政府は二〇年までに13%とする目標を掲げるが、達成はおぼつかない。

 ユニセフは六月、四十一カ国の政府による一六年時点の子育て支援策に関する報告書を公表した。日本の制度は男性で一位評価だったが、「実際に取得する父親は非常に少ない」と指摘した。

 制度はこれまで両親が取得すると休業期間が延長される改正や、給付金の増額などが整備されてきた。だが、取得は広がらない。

 背景には変わらない職場の意識がある。十八日に閣議決定された少子化対策白書の意識調査がそれを浮き彫りにした。

 取得したい男性は六割を超えるのに、取得率が低い理由(複数回答)を二十~五十代の男女に聞くと「周囲が忙しすぎて、休暇を言い出せる雰囲気ではない」が49・4%と高かった。休むことで職場に迷惑がかかると考えてしまう。

 「取得することによって、その後のキャリアに悪影響が出るおそれがある」も35・5%いた。

 最近も、育休明けの夫が転勤を命じられて退職したとのインターネット上の投稿が波紋を広げた。該当する企業は否定したが、もちろん取得を理由とした不利益な配置の変更は育児・介護休業法で禁止されている。

 「育休取得は迷惑」「人事評価が下がる」「育児は女性の役割」といった意識が職場を覆っていると取得は広がらない。働く女性は仕事と育児の過重な負担がなくならないし、女性の活躍の場が狭まることは企業にも損失だろう。

 通勤時間帯に保育所へ子どもを送る父親の姿が増えた。共働きが増える今、若者を中心に意識が変わりつつある。子育てで得られた経験は仕事に生かせる。人材を確保する面からも取得しやすい職場環境の整備は不可欠だ。

 そう意識を変え、職場での人手のやりくりや業務の分担、長時間労働の是正や人事評価など知恵を絞ってほしい。

 自民党の有志議員が男性社員の取得を企業に義務付ける提言をまとめた。取得拡大へ関心が高まることは歓迎したい。議論を深めるべきだ。 

 

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